調達に関する取り組み

調達に関する取り組み

  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 15 陸の豊かさを守ろう

方針・考え方とマネジメント

建設事業で調達する製品は大量かつ多種多様であり、グローバル化により原料の採取地や加工場所も国内外の多岐にわたります。そこで調達分野の方針として「公正で自由な競争と適正な取引に努める」を掲げています。これは、地球環境や地域に与える影響の大きさを勘案し、価格や品質だけでなく、環境課題や社会からの要請への取り組みも選定の項目とすることにより、バリューチェーンでの環境や社会に関する課題解決に向けた価値創出の取り組みを行うためです。調達に関する段階としては下図のようなものがあります。株主や社員はもちろん、建設物のユーザー、原料採取や工場、建設現場で働かれている方、近隣地域の方などに加え、温暖化や生物多様性、循環・サーキュラーエコノミーなどに関連する地球や、未来もステークホルダーととらえているのが当社の特徴です。展開地域は売上高のセグメント別内訳をご確認ください。

特に当社が重要と考える製品、サービスは、「供用・維持管理」での貢献から再生可能エネルギー製品、「原料の採取と輸送」での影響の大きさから木材製品、同じく「原料の採取と輸送」「工場」「流通・運搬」の影響の大きさから第三者認証製品があげられます。当社が年間に調達している製品やサービスは3,043億円(2022年度)あり、この分野で取り組むことにより、市場のシフトチェンジに貢献していきます。また当社は建設現場の施工に協力いただく、協力会社のうち、主要な約600社と「前友会」を組織しています。前友会では、総会の他、定期的に安全環境部会を開催し、安全活動に関する活動方針の策定などを行っています。さらに全国12支部でも支部総会、安全大会等の開催、安全環境部会の運営など自主的な安全管理を行うとともに、当社との意見交換を行うことによりS(安全)だけでなく、Q(品質)、D(工程)、M(モラル)、E(環境)の向上に努めています。

2022年度は約500社から1,065億円の製品やサービスを調達しました。

MAEDAのバリューチェーンと課題

調達規程に基づくサプライヤー管理の体制やしくみ

企業行動憲章の宣言のもと、調達業務に関する具体的な内容やマネジメント体制を「調達規程」として2008年に定め活動を行っています。公正な取引先選定の確認のため、一定金額以上の取り引きは、事業本部から独立した調達部を設立し、配置された20名がチェックを行った後、経営層の決裁を受けています。また、取り引き内容を記載するデータベースを構築し、調達部が管理を行い、とりまとめた後、経営層へ報告しています。既存の取引先には、取引終了時に土木外注査定データベースを使用し、「品質」や「工程」「安全」だけでなく、「環境への取り組み」についても評価を行っています。新規の取引先には、新規取引時に提出していただく「取引参加申込書」の評価事項に、「人権・労働・競争への取り組み」「社会貢献への取り組み」「環境への取り組み」「情報安全への取り組み」などを組み込み、各プロセスにおける課題解決に向け、活動を推進しています。

同様に取引先継続評価にも「人権・労働・競争への取り組み」「社会貢献への取り組み」「環境への取り組み」「情報安全への取り組み」を組み込んでおり、2022年度は170社のサプライヤーに対して継続評価を実施しました。

調達部員が主要サプライヤーの工場検査に赴き、品質や人権、労働、社会貢献、環境などへの取り組みの現地、現物を確認しています。またその際には、工場長などサプライヤーの現場責任者の方に直接、グリーン調達の方針(EPD認証製品の推進等)を伝えています。

サプライヤー工場モニタリングの様子
サプライヤー工場モニタリングの様子

また、建設業界では、現在、就労者の高齢化と入職者の減少、事業継承の困難さといった要因から、著しい担い手不足という課題を抱えています。
この解決に向け、当社は建設技能者の処遇改善に努めています。
当社は(一社)日本建設業連合会の「労務費見積り尊重宣言」に基づき、令和2年1月16日より見積書の提出依頼にあたり労務費を明示することを要請し、これをもとに建設技能者への適正賃金の支払いが行われるように指導・推進しています。

労働費見積もり尊重宣言

※EPD認証製品:Environmental Product Declaration の略で、環境製品宣言と訳します。
製品がライフサイクルで与える環境影響を情報開示し、第三者認証を受けたものを指します。

MAEDAグリーン調達規則に基づく目標設定と実績

2012年に「MAEDAグリーン調達規則」に定め、抜粋版を「MAEDAグリーン調達ガイドライン」として社外に公表し、取引先に「環境数値データの収集」「環境管理規格等取得の推奨」「優良業者の社内表彰制度への推薦」を要請しています。グリーン調達集計品目をEPD認証製品など30品目選定し、採用を推進して実績を集計しています(マテリアルフロー)。

MAEDAグリーン調達ガイドライン

実績

再生可能エネルギーは事業の上流や下流にも関わる事業者としても取り組んでいます。建材はサプライヤーを通じて購入しており、当社が原材料の採取に直接関わることはありませんが、木材等の製品では原材料の抽出地情報の収集や、環境に配慮した土地の利用の有無の確認などをサプライヤーに行っています。また「原材料の採取」や「加工」「流通・運搬」の環境負荷低減に関しては、第三者認証製品の取り組みを通じて、ライフサイクルでの環境負荷の把握に努めています。

2022年度は調達部員が国内外にあるサプライヤーの工場18箇所のモニタリングを行いました。品質や生産量などはもちろん、環境や人権、労働などへの取り組みの視点で実施しています。

グリーン調達率

グリーン調達集計30品目のうち、11品目について、数値目標を掲げています。目標値55%以上に対して2022年度のグリーン調達率は54%でした。

温室効果ガス(スコープ3)

バリューチェーンでの温室効果ガス排出量を算定・報告するために、スコープ3の算出を行っています(下図参照)。調達に関するものとしては「カテゴリー1:購入した製品・サービス」、「カテゴリー4:輸送、配送(上流)」があります。2022年度の「購入した製品・サービス」の排出量は586千t-CO2、「輸送、配送(上流)」は4.5千t-CO2となりました。

建設サービス事業におけるライフサイクルとスコープ3の対比

再生可能エネルギー製品

低炭素(脱炭素)社会に向け、再生可能エネルギーのコストダウンが課題になっています。そこで、全国展開している建設会社としての強みと、事業主として再生可能エネルギー事業を手掛けているノウハウを活用し、太陽光発電や風力発電の集中購買と海外製品を含めた適正な競争を促進しています。価格だけでなく、完成後の発電効率など、事業全体の視点で取り組んでいます。2022年度は17KW分の製品を調達し、再生可能エネルギーの増加に貢献しました。

石巻シールド作業所太陽光
石巻シールド作業所太陽光

木材製品(国産、間伐材、リサイクル製品)

自然共生社会に向け、森林を適切に利用しながら維持することが求められており、木材の建設材料としての拡大が望まれています。当社では国産材、間伐材採用を推進しています。合法性の確認のために、輸入木材の原料採取地や、法令の解釈や遵守への取り組みのヒアリングを行いました。また、発注者からの合法性木材に対するヒアリングにも対応しております。2022年度は452㎥の国産木材を調達しました。

循環型社会に向け、集合住宅などの床材などに使われるパーティクルボード(木質系廃棄物などをリサイクルした製品)の調達先と木材廃棄物の委託処理先を関東地域では1社に集約しています。2022年度パーチクルボード約200t購入に対し調達した原料の380%にあたる762tをこの取引先と行いました。つまり、自社で調達した製品の主原料の全てを自社から排出した廃棄物のリサイクルでまかなったことになります。

第三者認証製品(EPD、Cradle to Cradle)

EPD(Environmental Product Declaration);環境製品宣言とは、製品の一生涯の環境影響がどうなっているかを算定し、第三者が認証した製品を言います。2022年度はEPD認証を取得した製品を全体で20億円分調達しました。

Cradle to Cradle認証製品は、製品の安全性はもとより、材料・水・エネルギー資源を無駄なく効率よく使用し、生産・使用・使用後にゴミが生み出されない、自然の循環にそった持続的で再生可能な循環生産社会の実現を目指す国際認証システムです。

ICIラボエクスチェンジ棟でのLEED認証への取り組み

特集でご報告しているICIラボで調達の取り組みを行いました。
「ICIラボ」を構成する4つの施設のうちのひとつ「エクスチェンジ棟」は、BELS認証制度(建築物省エネルギー性能表示制度)の「☆☆☆☆☆」、かつ『 ZEB 』という最高ランクの第三者認証(2018年3月)や、CASBEE(建築環境総合性能システム)においても最高となるSランクの評価認証(2018年9月)を取得、さらに国際的な建築の環境性能評価システム「LEED V4 BD+C New Construction」の最高評価となるプラチナ認証を、設計、施工、調達および技術研究所(現・ICI総合センター)のメンバーが連携し、国内第一号で取得しました。
調達に関連するLEED V4のクレジットとしては、「Building Product Disclosure and Optimization - Environmental Product Declarations:建材の情報開示と最適化-製品の環境情報の明示」があります。ライフサイクルでの環境情報を開示している製品を推奨する意図があります。EPD認証製品を5社20製品以上、建築物に採用するとクレジットが取得できるというものです。EPD認証製品を調査した結果、日本で購入できる製品は20製品に満たず、クレジットの取得が難しいことが分かりました。そこで、当社はEPD認証製品を自社のグリーン調達品に選定し、取引のある建材メーカー50社以上と協議を重ね、EPDの新規取得を依頼しました。その結果、11社が協力を表明し、19製品が新たにEPD認証を取得しました(下図赤枠製品参照)。既存で取得していた7社10製品を加え、18社29製品(コストベースでは、採用製品額の18%)のEPD認証製品をICIラボエクスチェンジ棟では採用しています。

参考リンク:ICI総合センター

※ICI:Incubation(孵化)×Cultivation(育成)×Innovation(革新)

製品分野をクリックすると詳細がご覧いただけます。

今後の展開

ウクライナ情勢などによる物価高騰の対応課題も抱えておりますが、2022年度も引き続き、2020年4月1日に改定された当社の企業行動憲章にある「脱炭素社会とサーキュラーエコノミーの実現に貢献します」を受け、またISOの規格化も検討されており、社内外からの要請であるサーキュラーエコノミーの実現に向け、廃材と資源の境を超える可能性をサプライヤーと共に探っていきます。

また、総合インフラサービス企業として、単に技術の実装だけでなく、プラットフォームリーダーとしての貢献の可能性も探っていきます。