前田建設ファンタジー営業部

PROJECT 08 前田建設ファンタジー営業部 「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編 PROJECT 08  前田建設ファンタジー営業部  「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編

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第4回:激突! 角ブーメランに格納庫は耐えられるか!?

JSOL山口さん
それでは私たちの検証も最後になりますが、格納庫自体の評価もしたいと思います。ここは土木、建築の話なので、本来であれば前田さんの方が詳しいとは思いますが、私たちでも出来る範囲でやってみました。
よっ! JSOLファンタジー営業部!
(B主任に耳打ち)前回から引き続きウチの助っ人部隊が到着してないから必死だな。
JSOL山口さん
やり方はこんな感じです。

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JSOL山口さん
4本の柱の上に格納庫と土が載っており、そこに角ブーメランの衝撃が加わる想定です。ちなみに、格納庫上部の「土」はケース2を、格納庫のモデルについては、以前の「地下格納庫編」を参考にして作っています。
自分たちで決めておいて何だけど、相変わらずエレベーターの油圧ジャッキは細くて長いよね(笑)
JSOL山口さん
まず「FEM」による片側連成で柱に加わる縦軸方向の応力を求めます。
さっきの床面応力から導いて、格納庫の柱にかかる縦方向の力を求めたわけですね。
JSOL山口さん
そうです。そして次に想定した2種類の断面の柱・・・今回、皆さんの想定と少し違うかも知れませんが・・・に対し、「長期荷重」(土の重量+柱の自重≒長期的にかかり続ける力)と、角ブーメランの衝撃による「短期荷重」を合わせて解析していきます。そして、これがその結果です。

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専門外なのに、ここまでありがとうございます。
JSOL山口さん
「許容応力度設計法」で柱の断面を計算しました。土の積載荷重:4,000kN、柱1本あたりの軸力:N=1,000kNとなります。
断面は僕らの書いた図面に基づいた計算というわけですね。
JSOL山口さん
そうですね。そしてコンクリートはFc50としましたので、「長期許容応力度」はルールにより16N/mm2となります。ちなみに「短期許容応力度」は長期の2倍で33N/mm2となります。
ルール・・・つまり「こういう計算で考えなさいよ!」って偉い先生方などが基準として決めてる訳ですな。ついてきてくれてますか?
急に誰に向かって話してるんですか?
読者やがな。大事な、この映画の未来の顧客候補の皆さんや。宇宙に行ってしまわんように・・・。
・・・宇宙については、映画をご覧いただくと、その意味が解ります・・・。
あー、C主任まで・・・僕も読者に話しかけてみたかったんですよね。あとでやってみようっと。

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一度はやってみたい、読者への挨拶。挨拶されたい方はDVDをどうぞ
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOL山口さん
許容応力度設計法では「長期荷重」(今回の場合はほぼ土の重さとイコール)により柱に加わる応力度が長期許容応力度を上回っている必要があります。ここから計算した結果、柱の断面積は250mm2であり・・・。
はいっ!そして僕らが図面に引いた柱の断面=300mm2よりこの値は小さいので、OKと算出されます!
JSOL山口さん
はい、そういうことです!
(あらぬ方向を向きながら)お分かりになりましたか皆さん!・・・と言いつつ今更ですが、許容応力度というのは、どこまで柱が堪えられるかということですか?
このくらいは説明できないと、また部長にどやされるぞ。実際にコンクリートが持っている強度(≒許容応力度)に対し、強度の限界まで力がかかる設計にすると壊れてしまうので、余裕をみて強度の1/3ぐらいの力しか掛からないようにする設計法が「許容応力度設計法」だ。ただ、昔は一般的に使われていたけど、現在は「限界状態設計法」の方が主流だな。
JSOL山口さん
あ、我々ちょっと古いのでやっちゃたんですね。専門外なので許してください(笑)。
「許容応力度設計法」は少し古い設計の印象やけど、マジンガーの時代に合っていて、むしろいいんやないですか。

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古き?良きマジンガーの時代。Infinityもありますがね!
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOL山口さん
では結果オーライということで(笑)。次に柱で「長期荷重」だけでなく「短期荷重」でも試してみました。

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JSOL山口さん
軸方向に対する「長期荷重」の検証は既に説明したので飛ばしつつ・・・柱は800×800mmと300×300mmの二つと想定(なぜ800mmが出てきたかはあとのお楽しみ)した2種類の柱に対して、前者にかかる力は2.60N/mm2、後者は15.24N/mm2。いずれも「長期許容応力度」16N/mm2にどちらも達していないため安全です。
良かった。まずは図面を引いた我々の面目も保たれましたね。
JSOL山口さん
ちなみに、柱の色はかかる力を表現していますが、両方とも青から濃緑の範囲であり、あまり負荷がかからず安定していますね。

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JSOL山口さん
次に「短期荷重」です。800×800mmの柱では2.92N/mm2、300×300mmの柱では18.92N/mm2。「短期許容応力度」33N/mm2にどちらも達していないため、 同じく安全です。
細くて心配でしたが、ポッキリいかなくて良かったです。
お、それ鋭い指摘!
????
でもよく見ると、ちゃんと角ブーメランの影響で、柱の一部にきちんと荷重がかかっているね。ただ問題なのは、水平方向にかかる力じゃないか? 角ブーメランは真上から垂直に落ちてくるわけではないし。
確かに、これだけ長く細い柱だと、少しの力が加わってもグラグラしそうですね。
JSOL山口さん
では水平方向の「短期荷重」の結果を見てみましょう。ちなみに、水平方向は角ブーメランがぶつかった瞬間のみになりますので、「長期荷重」の計算は当然無しです。

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JSOL山口さん
図を見ていただくと分かる通り、両方とも下のほうにいくほど赤くなっています。それでも800×800mmの柱は耐えていますが、細いほうの300×300mmの柱は厳しいですね。断面が小さいため曲げ変形に弱いです。そこで、断面を大きくする、ブレースを入れる、耐力壁を入れる、など何らかの対策が必須となります。
・・・だからやね山口さん。先程クイズで出てきたように柱のサイズ、ここでOKになるような柱が800mmやったから・・・。
JSOL山口さん
800mmに決めた・・・そういうことです。
確かにここまで細いと、普通は「座屈※1」を検討しなければいけないだろうし、「座屈」を考えれば完全にアウト。ポッキリな設計だな。
・・・ポッキリ・・・「座屈」を考えろということですね!
そこは前田側でも、今度考えてみましょうか。
JSOL山口さん
以上が今回の検証の結果となります。最後にまとめてみました。

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JSOL山口さん
格納庫への衝撃吸収は、具体的な数値は出していませんが、粒子径が大きい(空隙が多い)「土」を堆積させることで・・・。
粒子半径100mmやから、もはや「礫」やね!
JSOL山口さん
・・・「礫」を敷き詰めることが効果的だと考えられます!
どこまでこの「礫」の正体を突き詰められるかが、次回のハイライトだな。
JSOL山口さん
格納庫の柱に関しては、何と言っても山田さんが「水」を「土」に変えたことで、圧倒的に重くなりましたから、その「土」の重さに日常的に耐えられる強度が当然必要になります。それに加え、角ブーメランの衝撃は水平力が生じるので、曲げ変形への対策も必須となりそうです。
素晴らしい! すっきりしました。
本来なら前田側でもっと事前にお手伝いしなければいけかったですね。本当にお手間をかけました。
JSOLさんの本社はどの方角にありますやろ? ほんまに足を向けて眠られへんわ。
土質屋部隊
(このタイミングで颯爽と)遅くなりました!
あ「土質屋部隊」が今、到着ですね。
・・・まさか、面倒だから終わるまで待機してたんやないやろな?
土質屋部隊
いやいや、今到着したところですよ。でも、ただ遅れてきたわけではありません。事前にJSOLさんの資料を頂いていたので、こちらでも検討をさせていただきました。
まさか・・・。
土質屋部隊
・・・ええ、JSOLさんの結論に対し、こうすればもっと良くなるという、前田版の「土」、いや「礫」を考えてあるんです。それでちょっと遅れてしまいました。
おおっ、いつにない前向きかつ迅速なご対応!
土質屋部隊
ふふっ、今回の映画で我々、土質屋のイメージが劇的に上がりますからね!
こんなことは今までなかったですから。
みな、町田啓太さんのような容姿だと思ってもらえると良いですね。

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映画『前田建設ファンタジー営業部』で土質屋の山田さんを演じられた町田啓太さん

土質屋部隊
気分だけは既にそうです。
盛り上がってるとこすまんけど時間や。次回に続く、や!

※1 ある荷重で急に大きなたわみが発生する現象

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