前田建設ファンタジー営業部

PROJECT 06 前田建設ファンタジー営業部 宇宙戦艦ヤマト2199 建造準備および発進準備工事 PROJECT 06 前田建設ファンタジー営業部 宇宙戦艦ヤマト2199 建造準備および発進準備工事

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第1回 SOS地球!! 甦れ宇宙戦艦ヤマト構築編

時に西暦2199年。人類は滅亡の淵に立たされていた。外宇宙から襲来した謎の星間国家<ガミラス>によって、遊星爆弾の無差別攻撃を受けていたのだ。

人類は地下都市を築き、抵抗を続けた。それゆえ世界中の建設会社のミッションも、ガミラスの攻撃以降は完全に変質した。建設会社にとっての生命線と言っていい、事前調査や設計、そして施工計画が不十分なままに地下都市を構築するという、遊星爆弾との熾烈な競争に突入したのである。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

希望も終わりも見えない工事に技術者たちは疲弊し、彼らの意志は何度も壊れそうになった。しかし、遊星爆弾とのスピード競争に負けることは、人類の終焉を意味する。世界中の建設技術者が、頭上の厚い土層全てを自分が支えるかのごときプレッシャーの中で、人類史上、最も長く大きなトンネルを掘削し続けていた。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

そのような中、人類はひそかに恒星間宇宙船の建造を決意する。宇宙戦艦ヤマトである。その艦には異星人の技術までが投入されているという噂であった。その建造はガミラスの監視網を欺くため、20世紀という遥か昔の戦艦「大和」に偽装されつつ地表面、つまりかつての海底にあたる場所で行われるという。新たに一つ、人類の未来を左右する、失敗の許されない建設工事が必要となったわけだが、戦艦が建造できるほどの地下大空間を地表面近くに、しかも地下(都市側)からのみのアプローチで構築する困難さは、世界中の建設技術者誰もが認めるものであった。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

そして国連宇宙軍より、その恒星間宇宙船プロジェクトのうち「建造準備および発進準備工事」が、日本のある建設会社に極秘裏に発注されることになった。前田建設工業株式会社である。
戦艦「大和」建造と同じ20世紀の創業という老舗であり、22世紀の今日まで総合建設業を続けてきた前田建設は、その時、日本および東南アジア諸国の地下深くで地下都市の新設と拡充、そして管理業務に従事していた。彼らは極端に限られた工期の中でも地下都市を単なる生命維持装置として終わらせず、人工農場の緑や上下水道の水を上手に配して良好な景観を創出し、また気候調整で四季を演出するなどの工夫により高い住民満足度を獲得していた。そのため、彼らの手がける地下都市の視察は絶えることがなかった。
さらに同社は21世紀初頭より、空想上の構造物について真面目に実現検討を行ない、それを社会へ公表し続ける手法を通じて社の課題解決力向上を継続しており、その点でも人気の高い会社の一つであった。

やがて発注者である国連宇宙軍から同社あてに、極秘印入りの記録媒体が届けられた。社内会議が招集され、緊張の面持ちで集まる職員の前でファイルが開かれる・・・と、そこには拍子抜けするほど、シンプルな文字が並んでいた。

工事名
宇宙戦艦ヤマト 建造準備および発進準備工事
設計・施工条件
(1)沈没した戦艦に偽装した宇宙戦艦ヤマト建造のため、地下都市側に艦底中央より艦尾を露出させた、ヤマト建造用の大空間を確保すること。

1)その際、ガミラスから上空より建造を検知されないよう、施工は全て地下都市側から行うこと。

(2)ヤマト発進の対策に万全を期すこと。

1)ヤマトが艦体上部や周辺の土を見事押しのけ、スムーズに発進できるよう、土質・岩質を把握し、必要があれば置換・改良工事を実施すること。

2)また、発進時のメイン/補助エンジン、その他補助推進装置の強力な推進力を受け止め、地下都市に悪影響を及ぼさないよう、必要な土質改良、反力受けなどを確保すること。

3)メインエンジンは真後方向に推力を及ぼす構造のため、艦首持上げを補助する工夫を含むこと。

職員たちは文章の少なさに一瞬油断したものの、逆に本プロジェクトが究極の性能発注1であることを悟った。次に竣工時の姿を示すCIM2 データを一目し、彼ら・・・前田建設の土木事業本部 土木設計・技術部のメンバー・・・はその工事の困難さを確信した。なお土木設計・技術部は、前田建設において土木構造物の設計や施工計画の立案、さらには技術開発までを担当する部署であり、そのメンバーは日頃より、その瞬発力や応用力が試され続けている。
中でも本工事の担当に選ばれたのが、ガミラス攻撃以前には香港の世界最大級の斜張橋や、台湾の地下鉄建設などの大プロジェクトに携わっていた、林と山内の両名である。二人は、上司である大川の説明をノートに書き写しながら、早くも課題抽出と優先順位付けを始めていた。

今回の極秘工事担当となった前田建設職員、山内 崇寛(左)と林 幹朗(右)(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会/前田建設工業株式会社
今回の極秘工事担当となった前田建設職員、山内 崇寛(左)と林 幹朗(右)
(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会/前田建設工業株式会社

林は竣工まで残された時間を考えた。工期はどこまで許容されるか、である。資機材もエネルギーも、そして習熟した建設作業員も確保が難しい今、どうしても工期は延びがちであった。
山内は、施工場所の土質を心配した。データベースにはガミラス攻撃「以前」の土質データが残っているだろう。しかし遊星爆弾の影響により、工事対象範囲の土や岩が変質している可能性があった。大規模地下空間の構築に適したままの性状であることを祈った。

しかし、それら以上に困難な、本プロジェクト最大の課題は・・・それは二人とも全く同じ答えになったが・・・ヤマト建造用部材の搬入と掘削土砂の搬出を、如何に両立するか、であった。
これまでの地下都市建設でも、大量の土砂搬出が常に課題となっていた。今回はそれに、ヤマト建造用の大型部材を運び入れる作業が加わる。掘削自体がどんなに早くとも、切羽3から掘削土砂が排除されない限り、次は掘れない。とすれば地下都市からヤマト建造空間に向けてのトンネルを、土砂搬出と部材搬入が同時に行なえる超大断面にするほかないのだが、ガミラス攻撃後、極度のエネルギー不足に陥っている今の地球を考えれば、必要最小限の掘削にとどめたいのが本音だった。果たして最適解は何なのか。

この時、考え続ける二人は気づいていなかった。宇宙戦艦ヤマトが16万8000光年を航海するための貴重な時間を、自分達も創り出していることに。

  • 1 性能発注:構造物などの仕様を指定するのでなく、目的となる性能を明示して、それを満たすような品質を求めて発注する方式。性能を示す文章が少ないということは自由度が高く、受注者(=前田)の課題解決力が試されることを称して、究極の性能発注と表現しています
  • 2 CIM:製造業においてICT技術を活用し、製造に関する情報はもちろん、販売や開発の情報も含め、社内的に情報を共有し管理する手法であるComputer Integrated Manufacturingの略を思い浮かべる方が多いと思います。が、ここでは最近建設業界において言及されるようになった、建築におけるBIM(Building Information Modeling)同様、土木構造物における3Dデータの設計・施工・維持管理などライフサイクル全般における活用手法、Construction Information Modelingを意味しています
  • 3 切羽:トンネル工事現場における最先端箇所、掘削面ないしその周囲のことです
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