2024年07月05日LCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価および比較検討を可能に~

 前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治、以下「前田建設」)は、BIM(Building Information Modeling)※1とLCA(Life Cycle Assessment)※2ツールの連携を自動化することで、建築物のライフサイクルを通じた環境負荷を短時間に評価ができるLCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発しました。

 

 2050年カーボンニュートラルの実現と2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)に向け、建築分野では2050年ストック平均ZEB化と2030年度に新築ZEB化が目標とされています。建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の改正・強化によって、建物運用時のCO2(オペレーショナルカーボン、以下「OC」)※3削減の取組は進みつつあります。一方で、建物の新築・解体時などに発生するCO2(エンボディドカーボン、以下「EC」)※4は,OCとECを合わせたホールライフカーボン※5に占める割合が増加しているにもかかわらず取組が遅れているため、EC削減の取組が必要不可欠です。
多くの企業がカーボンニュートラルに関わる様々な国際的枠組み(TCFD※6、SBT※7など)に参画する中、ECの削減はESG投資の観点からの評価も高く、今後ますます必要性が高まるものと考えられます。

 

 ECの削減に向けては、第一にその発生要因の見える化が必要です。評価、見える化に向けては部材を拾い各種情報をツールに入力が必要ですが、従来、建築物の建設には数多くの原材料があり、部材毎のCO2排出原単位(以下「原単位」)※8や部材数量、調達、施工、廃棄等に関連した様々な情報の入力に多くの時間や労力を費やしていました。これまでも、前田建設では、効率的にLCA評価が可能なクラウド型ツールであるOne Click LCA(以下「OCL」)※9を活用することで、温室効果ガスの排出量GHG※10算定を効率的に進めておりましたが、今回開発したLCA評価支援システム「CO2-Scope」により、更なる効率的かつ短期間でのLCA評価が可能となりました。
LCA評価の短期化によりECの早期見える化が可能となり、効率的な削減提案や設計変更時の迅速な環境評価につながり、カーボンニュートラルの実現に寄与できると考えています。

 

 前田建設は、建築物LCA評価に「CO2-Scope」を活用するとともに、昨年開発の「ZEB-Scope※11」によるZEB設計も行うことで、LCA評価の生産性向上と環境性能の設計品質向上を図り、環境性能も含めた総合的な最適設計の実現に引き続き取り組んでまいります。(「CO2-Scope」および「ZEB-Scope」は前田建設工業株式会社にて商標登録されています。)

 

【システムの特徴と効果】
● BIMデータから自動的に部材数量等のOCLに必要なデータを抽出できます。
● 抽出した部材は、原単位と自動的に紐づけおよび単位変換ができます。
● 効果:従来は、各種図面から部材の数量積算、部材の物性値の分別、原単位の割り当てを実施しデータの精度、確認時間により差があるものの、データ作成から算出まで1か月程度の時間を要していました。BIMデータを活用することで、これを最短で1日程度と大幅な時間短縮を実現します。

 

システム概要

 

使用画面イメージ

 

※1 BIM
BIM(Building Information Modeling)はコンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであり、現在主流になりつつあるワークフローです。

 

※2 LCA
LCA(Life Cycle Assessment)は、製品やサービスに必要な原料の採取から、製品が使用され、廃棄されるまでのすべての工程での環境負荷を定量的に表そう、という考え方。建築物のLCAにおいては、GHGのみならず、水質や土壌汚染等の環境影響評価も定量的に実施するが、地球温暖化対策のカーボンニュートラルに向けてはLCAのうちGHGに着目しています。

 

※3~5 オペレーショナルカーボン、エンボディドカーボン、ホールライフカーボン
世界全体で排出されるCO2の38%は建築分野で占められており、建物の運用に際して発生するCO2(オペレーショナルカーボン)と、建物の新築・解体などに際して発生するCO2(エンボディドカーボン)があり、両者を合わせてホールライフカーボンと呼びます。エンボディドカーボンの内、新築時の資材の調達から建設段階までに伴うものをアップフロントカーボンと呼び、最近注目を集めています。

 

※6 TCFD
TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)はG20の金融部門によって設立され、気候変動がもたらす財務的影響の情報開示を促す提言をしており、多くの企業が賛同を表明しています。
関連リリース:2022年6月30日インフロニアホールディングス株式会社「TCFD提言への賛同とTCFD提言に沿った情報開示を開始」(https://www.maeda.co.jp/news/2022/06/30/5316.html

 

※7 SBT
SBT(Science Based Targets)は、パリ協定が求める⽔準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標。

 

※8 CO2排出原単位
「CO2排出係数」とも呼ばれ、経済活動量1単位あたりのCO2排出量のことです。例えば電気1kWh使用あたりのCO2排出量、貨物の輸送量1トンキロあたりのCO2排出量、廃棄物の焼却1tあたりのCO2排出量が該当します。建築資材でいうと、コンクリート1m3当たりのCO2排出量や鉄筋1t当たりのCO2排出量など、材料毎にCO2排出量が該当します。

 

※9 One Click LCA
エンボディドカーボンを効率的に見える化するソフトウェアとして、脱炭素を目指す多くの国際企業・プロジェクトに選ばれています。ISOなど国際規格に準拠し、日本市場に合わせた精緻な算定を効率化できるクラウドソフトです。

 

※10 GHG
GHG(Green House Gas)は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量のことです。地球温暖化の支配的な原因は、人間活動によるこのGHG排出量の増加である可能性が高いと考えられています。二酸化炭素と同様に温室効果をもつGHGは、その種類毎に温暖化への影響の大きさが異なります。それらを統一的に表す尺度として、二酸化炭素の質量に換算する方法が用いられており、このときに用いられる単位が、「t‐CO2e」「t‐CO2eq」です。

 

※11「ZEB-Scope」関連リリース
ZEB設計支援システム「ZEB-Scope」を開発~データベースと各種ツールの自動連携により多様なZEB仕様を迅速かつ高精度に評価~(https://www.maeda.co.jp/news/2023/10/25/5456.html

 

<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp

 

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