本件は、2025年1月27日のNHK総合テレビ「おはよう日本」内のコーナー「おはBiz」にて、建設現場における最先端技術の活用事例として取り上げられました。
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■NHK総合テレビ『おはBiz』~老朽化する水力発電所 対策は?~
https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/articles/2025_0127.html
前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:前田操治、以下「前田建設」)と株式会社前田製作所(本社:長野県長野市、代表取締役社長:塩入正章、以下「前田製作所」)は、水力発電所施設の狭小な導水路トンネルリニューアル工事における補修工事を対象に、ポリマーセメントモルタル(以下「PCM」)の自動吹付けおよび均し仕上げ(=左官作業)まで可能な「吹付け・左官自動施工台車(以下、「本機械」、特許出願中)」を開発しました(写真-1)。
また、前田建設の研究施設であるICI総合センター(茨城県取手市、以下「ICI」)にて、実大規模の模擬トンネル実証試験により本機械の実用性を確認しました。
写真-1 吹付け・左官自動施工台車 全景
再生可能エネルギー普及拡大が求められる中、わが国の水力発電所は、半数近くが運転開始から50 年以上経過しており、設備の老朽化による発電量の低下が懸念されています。そのため、水力発電設備のリニューアルが急務となっており、それに伴う導水路トンネルのリニューアル工事が多数計画されています。しかしながら、これらの工事は、狭小な空間での作業になるため大型機械の適用が難しく、人力作業の割合が多くなり(写真-2)、安全性の低下や工事規模に対して生産性が劣るといった問題があります。さらに近年は技能労働者不足の問題も深刻化してきています。
そのような背景から、導水路トンネルリニューアル工事における労働投入量削減に寄与する省人化や自動化技術が求められており、当社は本機械の開発をいたしました。
写真-2 従来作業状況
本機械は,PCMの吹付けと均し作業を自動化するための「自動吹付け機構」(以下「吹付け機構」)と、左官作業のように吹付け面を平滑に均す「自動均し機構」(以下「均し機構」)を搭載した台車であり、前後進の走行機能、および高さ調節機能が備わっています。
写真-3 各調整機構説明
●吹付け機構(写真-3,4)
吹付け機構は、トンネルのアーチ形状に合わせて加工されたレール上を移動する「①横行機構」と、トンネル壁面に対して左右に移動する「②往復機構」の組み合わせで構成されています。 各機構の速度制御により、トンネル壁面に所定の厚さで均一な吹付けを実現します。
●均し機構(写真-3,5)
均し機構は、「①横行機構」に取り付けたブレードにより壁面を平滑に均すことが可能となります。ブレードを微動させながら吹付け面に押し当てることで、セメントペースト分を浮き上がらせながら余剰分を削ぎ落し、吹付け面を最終仕上げに近い状態まで均すことを実現します(写真-5)。また、トンネル壁面に対して「③前後移動機構」、および左右に首振り可能な「④ヨーイング調整機構」によりブレードの位置合わせを実現しました。
(左)写真-4 吹付け機構拡大 (右)写真-5 均し機構拡大
前田建設のICIにて、模擬トンネル空間内でPCMの吹付けと均しの実証試験を実施し、導水路トンネルのリニューアル工事を対象とした本機械の実用性を確認しました。なお、本機械は施工中の安全通路、および資機材の運搬経路を確保する観点からトンネル中央の空間を有効活用できる門型構造とています(写真-6)。
写真-6 ICI模擬トンネル
吹付けの実証試験では、設定した吹付け厚(10mm~25mm)を確保しながらも、1スパン(3.64㎡)あたり約10分での吹付けを実現しました(写真-7)。均し試験によるトンネル内面の仕上がりでは、最終仕上げに近い状態まで均一に均すことを実現しました(写真-8)。
また、試験中は吹付け機構、および均し機構それぞれ1名で作業を行い、従来の施工で6人/班かかっていた作業において本機械を導入することで4人/班にし、大幅な作業人員の削減に成功しました。
写真-7 吹付け試験状況 写真-8 均し試験状況
導水路トンネル内の閉鎖された狭小な空間内での作業は、作業者の負担が大きい作業です。当社では、これらの負担作業を削減し、作業環境を改善するとともに、本機械による仕上げ品質の向上と省人化施工による生産性向上の更なる促進により、安全性の確保や労働投入量の低減に引き続き取り組んでまいります。
また、本機械は、導水路トンネルのリニューアル工事だけでなく、多様な小規模断面トンネルや狭小な空間においても活用、応用可能と考えており、今後開発を進めてまいります。
<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp