日比谷共同溝工事#1

未来型スポーツアリーナ構想を実現する

 建設省(現国土交通省)が路面の下に共同溝を建設する計画に着手したのは1963年のこと。上水道、下水道、電気、電話といったライフラインを1本の共同溝にまとめて収納することにより、個別の工事を減らし、ライフラインの安全性を高めることが目的である。電線や電話線を地下に埋設することで景観も向上するというメリットもある。
 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所副所長の石塚廣史氏は「三田から日比谷までの麻布・日比谷共同溝の着工は1989年。以来17年にわたり施工しています。ここには、電気、電話、上水道、下水道を納めます。日比谷共同溝は、下水道も収容することとなっており、その流下勾配を確保するために深度が深くなりました。
 施工では、シールドマシンで掘削したあと、地山を支えるセグメントの施工法に、前田JVの提案による『スライドコッターセグメント』を採用しました。その結果、漏水もなく、美しい仕上がりになっています。

 また、約7カ月間かけて設計を見直し、トンネル内に組み込まれる電線の配置を変えるなど工夫して、トンネルの外径を当初の計画より40cm小さくしました。これにより、労力と材料費を大幅に縮減して、約18億円のコスト削減ができました。 日比谷共同溝では共同溝法制定40周年を記念した事業として一般の方々に共同溝事業の必要性を理解していただくことを目的に『東京ジオサイト』というイベントを開催し、現在まで約6000人の見学者が現場を訪れました。
 前田JVには、事故を起こすことなく安全に工事を進めていただきたい」と語った。

国土交通省
関東地方整備局
東京国道事務所

副所長 石塚廣史

大都市東京の中心に出現した地下ヤード

 日比谷共同溝は、官庁庁舎が林立する港区虎ノ門1丁目から千代田区日比谷公園まで、極めて交通量の多い国道1号の地下約40mを走るライフラインである。
 虎ノ門立坑を発進し、桜田門立坑を経て、日比谷立坑へ。延長1424m、セグメント内径6700mmを、泥水式シールド工法で掘進している。
 機電課長の高橋裕之は、いち早く現場に乗り込み、機電担当の飯田真啓とともに、設備計画に着手した。
 シールドマシンの発進地、虎ノ門立坑には810m2の三角形の地上ヤードと、1230m2の五角形の地下ヤードがある。いずれも狭い変形のヤードである。
 地上ヤードには、残土搬出の機械、セグメント供給設備の門型クレーン、電気設備を設置。地下ヤードには、泥水処理設備、裏込めプラント、中央管理室などを設置。泥水処理設備の一次分離機のまわりには防音ハウスを設けた。

 飯田は「非常に狭く限られた作業ヤードに効率よく設備を設置できました。工夫したことがすべてうまくいって、工事がスムーズに進んでいます」と語る。 トンネル内への機材や建設資材の搬入には、虎ノ門立坑の地上ヤードと地下ヤードの開口部を使う。ところが、この2つの開口部は向きが違う。そのうえ、セグメントを運搬する台車の向きも違う。そのため、セグメントの向きを2回変えなければ搬入できないという問題にぶつかった。
 高橋は「クレーンに建築現場で使われているジャイロを取り付けて、リモートコントロールでセグメントの向きを変えながら、スムーズに搬入しています」と工夫の成功を語った。

   
 

日比谷共同溝作業所

機電担当 飯田真啓

 

日比谷共同溝作業所

機電課長 高橋裕之

 

←ジャイロを使用してダクタイルセグメントの方向を正確に変えながら地下に搬入する

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