日比谷共同溝工事#2

地下40mを航行する潜水艦シールドマシン

 虎ノ門立坑は、1日に8万台の自動車と3万人の歩行者が通過する交差点に位置する。
 工事区間はすべて、地下鉄千代田線・日比谷線・丸の内線・有楽町線のほか、NTT洞道、東京都水道局管渠の直下を通過する。これら構造物に影響を及ぼさないよう細心の注意が必要だ。
 シールド掘進部の土質は全般的に洪積世砂質土。日比谷立坑の手前約100mからは断面上部に洪積世粘性土が現れる。この条件から、泥水式シールド工法が採用された。
 2004年1月、シールドマシンを60分割して虎ノ門立坑に搬入して、組み立てた。シールドマシンの先端には、地山を掘削するために、超合金のタングステン製ビットを取り付け、2000m掘進可能な強度を確保した。また、トンネルに2カ所あるR60mのカーブを掘削するために、中折れ装置を装備した。
 シールドマシンは中央管理室でコンピュータ制御し、毎日、朝夕の2回測量を続けている。その結果、誤差3cm以下という極めて高い精度で掘削している。
 作業所長の安田茂人は「シールド工法は1818年に考案された工法です。中でも、この現場のような密閉型シールド工法は、地山の状況の厳しい日本の技術が世界最高水準だと言われています」と語った。
 このトンネルにかかる圧力は0.22メガパスカル。

地中に出現した空間を支える

 シールドマシンでの掘進と同時に、外壁となるセグメントを組み立て、地山を支える。
 荷重条件から、日比谷共同溝には、RCセグメント、ダクタイルセグメント、スチールセグメントの3種類が採用された。 RCセグメントには前田建設が開発した「スライドコッターセグメント」が採用され、この現場で初めて使われることとなった。
 スライドコッターセグメントは、幅120cm・厚さ30cmのRCセグメントに、平滑性・耐久性・安全性に優れた継ぎ手金物「スライドコッター」を内蔵したもの。スライドコッターをトンネルの軸方向に挿入し、スライドさせるだけでセグメントを締結し、施工スピードをアップする。施工後は、継ぎ手金物がトンネルの内面に露出しないので、仕上がりが美しく、継ぎ手金物の腐食を防ぐこともできる。さらに、製作誤差や施工誤差を自動的に吸収する機構も組み込んで、施工性を向上させた。
 虎ノ門立坑からの直進部分には、スライドコッターセグメントを使用。桜田門立坑へ向かうR60mのカーブは、幅60cmと120cm鋳鉄製のダクタイルセグメントとスチールセグメントをボルトで接合し、力強く支えている。
 桜田門立坑を粘土質の土で埋め戻して、シールドマシンを貫通させ、さらにR60mのカーブを描いて、日比谷立坑に到達させる。
 主任の菊池崇は「この現場はカーブや立坑の通過という難しさがあるので、最後まで緊張感を持続させて到達させたいと思っています」と語った。

 
 

日比谷共同溝作業所

主任 菊池 崇

日比谷共同溝作業所

所長 安田茂人

日比谷共同溝は、私にとって6本目のシールド現場です。完成後は、この共同溝を二度と見ることができません。それだけに、シールドトンネルを経験した優秀なスタッフが集まって、美しいトンネルを造ることができてよかったと思っています。

日比谷共同溝作業所

統括所長 前田 真

基本は率先垂範。現場では整理整頓を徹底し、作業環境を整え、作業前に必ず綿密な打ち合わせをして、一人ひとりが自分の役割を把握するよう働きかけています。私の要望の90%以上が実践され、問題なく施工してきました。竣工まで安全第一に施工します。

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