徳島県立中央病院
改築工事のうち建築工事#2

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切梁なしオープンカット工法とPC杭を提案

 2009年9月に着工。建物の構造設計は前田建設本店構造設計部が担当し、基礎杭、躯体、PCに基幹災害医療センターに必要な強度を確保している。
 基礎工事は、当初「山留切梁工法」で計画されていたが、前田JVが提案した「切梁なしオープンカット工法」が採用された。これにより大空間を確保し、作業性を高めて、工期を短縮し、鋼材運搬車両を削減することもできた。
 また、基礎杭を当初の計画の「現場打ち杭」から「高強度PC杭」に変更し、PC杭254本を打ち込んだ。杭のPC化により、建設汚泥、生コン・車両、産業廃棄物を削減し、余盛コンクリート撤去時の騒音を防ぐことができた。
 ここは地下水位が高いため、地下工事期間にディープウェル工法を用いて、約6カ月間排水を続けて地下水位を下げた。
 地下には「積層ゴム」と「オイルダンパー」を設置し、免震構造で地震の揺れを抑えて、人命と医療機器を守る。

免震基礎施工状況 2010/10

オープンカット工法

切梁なしの山留で、高品質な地下構造体を建設できる。山留工事、杭工事が同時にできるため、工種を削減し、工期短縮、コスト低減につながる。

水路清掃

ディープウェル工法で地下水を放流する前に、JV職員と作業員が協力して、佐古川と水路のボランティア清掃を実施した。

柱・梁・床版にPC工法を採用

 10階建ての躯体には、柱・梁・床版にPCを採用。その一部に高強度コンクリートを使用して、強度を確保している。PC工法の利点は大規模な建物でなければ発揮できないため、徳島県内ではあまり施工実績がなく、PC生産拠点も、建設作業員も徳島県内だけで確保することは困難だった。そこで、柱と梁のPC製造は兵庫県を中心として一部を徳島県でも製作し、床版PCは三重県や九州で製作して船で輸送した。
 現場には、PCを搬入する大型トレーラーが1日に20台も出入りするため、タワークレーン2基を建物のエレベーターシャフト内に設置して、ヤードを確保。同時に建物の外に自走式クレーン2基を配置し、計4基のクレーンで、建物のすべての位置にPCなどの建材を揚重できるよう工夫した。9月には大型台風が徳島県を通過したが、作業の遅れはなく、9月上旬にタワークレーン2基の解体を完了した。

高層階施工状況 2011/4

免震装置

写真右の「積層ゴム」はゴムと鋼板が交互に重なっており、ゴムで地震の力を建物に伝わりにくくし、鋼板で建物を支える。積層ゴムは元の位置に戻りにくいので、写真左の「オイルダンパー」のオイルの流れによる減衰力で揺れを抑える。

PC梁の揚重

柱・梁・床版にPC工法を採用し、現場での作業を極力削減している。そのため、クレーンを使用して、重いPCを安全に揚重することが主な課題となった。PCを運搬するときは、クレーンのオペレーターと、PCを受け取って設置する作業員が無線で連絡を取り合って、安全かつ確実な作業を心がけた。

救命救急に対応し、療養環境を追求

 躯体工事が完了した下階から内外装の仕上げ工事が本格化した。この現場では、設備工事は別途発注なので、設備JVと連携して作業を進めている。
 一般病室にはすべてのベッドに窓から陽が差し込むように設計されているため、26カ所の凹みを設けて窓を設置していることも、この建物の特徴である。また、エントランスと2階の外来診療エリアを結ぶ大空間にはエスカレーターを設置。診療をスムーズにするために、エレベーター14基を設置する。ICU、HCU、精神救急病棟、感染症病棟など、それぞれの役割を十分に理解したうえで施工している。
 受注時点では基幹災害医療センターとしての役割を担う総合病院という位置づけだったが、その後、ドクターヘリが常駐することが決定したため、設計変更が生じた。屋上ヘリポートの照明設備が強化され、管理部門にはドクターヘリのスタッフが常駐する部屋を作っている。
 2011年9月下旬からは、エントランスにガラスカーテンウォールが設置され、建物が少しずつ姿を現している。

施工が進む屋上ヘリポート 2011/9

4床病室の施工

通常の多床病室の場合は、窓際のベッドにしか陽が当たらない。ところがこの病院では、すべてのベッドに陽が当たるよう、外壁に26カ所の凹みを設けて窓を設置している。

防音対策

現場は住宅地に位置するため、近隣に配慮して、仮囲い上部と建物低層部分の外部足場に防音シートを設置した。

徳島中央病院作業所

佐野 太一郎

2006年入社 岡山県出身

大学院で地域の実情に即した公共施設の計画について研究し、建物の建設に携わりたいと思い入社しました。総合建設業の現場での業務は、細かい部分までは描かれていない設計図を読み説いて施工図に落とし込み、お客様と設計者の思いを形にする仕事です。入社後は本店設計部でマンションや社員寮などの設計を経て、2010年2月に病院の施工を学ぶためにこの現場に赴任し、施工管理業務を担当しています。これまでに、免震装置取付工事や外壁の断熱工事のような品質の根幹に関わる部分や、放射線療法のリニアックなどの医療機器を設置する部屋の遮蔽工事など、病院ならではの特殊な工事を経験。これから、治療室や手術室などの内装工事が最盛期を迎えます。工事完了後は本店設計部に戻り、現場での経験を高齢者施設や医療施設の建設に生かし、お客様の思いを形にしたいと思います。

徳島中央病院作業所
課長

徳舛 浩二

1994年入社 奈良県出身

入社以来、オフィスビル、超高層マンション、老人ホーム、工場、店舗などの建物を施工し、これまでの経験を免振階の施工に生かすことができました。現在は足場関係と内装一式の管理を担当。内装工事は、内装と家具は各4社、クロスと床張りは各3社というように、地元徳島の50社以上の小規模な協力会社に発注し、私1人で15社以上を管理しています。設備は別のJVが施工していますが、病院の水周りや空調関係の工事は、マンションやオフィスビルの3倍ぐらいの規模があります。そこで、全フロアを4分割して内装業者を割り振り、あるフロアの壁を施工したあと、設備工事が完了するまでの間にほかのフロアを施工できるよう工夫し、作業量を平滑化して効率よく施工し、品質を確保しています。建物は私より長生きするので、施工した建物を残すことにやりがいを感じています。

徳島中央病院作業所
課長

柴田 剛

1990年入社 愛媛県出身

これまでに個人病院、老人ホーム、マンション、宿泊施設、店舗、小中学校、文化ホール、火力発電所、工場などを施工しましたが、大規模な病院を建設するのは初めてです。現場では、資材搬入と施工スケジュールの管理をメインとし、鉄骨やアルミサッシ、カーテンウォールなどの外部建具の施工も担当。資材搬入では、限られた台数のクレーンを効率よく使って資材を施工場所までスムーズに搬入できるよう、各担当者と打ち合わせをして資材搬入計画を立てています。搬入の際は重量のあるPCを優先し、その合間に外壁などを搬入できるよう作業員を配置し、クレーンのブームが接触しないよう注意して、4台のクレーンの設置の仕方を考え、クレーン災害の防止に努めています。4台のクレーンを使うのも、免震構造もPCも、この現場が初めてなので、この経験を今後に活かしたいと思います。

徳島中央病院作業所
工務課長

浅田 充宏

1987年入社 大阪府出身

関西支店のCADの部署を経て、10年以上前から現場に出て工務担当として図面を作成しています。これまでに再開発ビル、研究所のクリーンルーム、当社大阪支店、大阪入国管理局などの現場を経験し、この現場でも図面作成を担当。図面を起こす前に病院のスタッフの方々と打ち合わせを重ね、精神科病棟や感染症病棟、周産期病棟のような病院ならではの特別な配慮を把握し、ベッドの位置や家具などの細かい点まで使い勝手を考えて施工図を作成しています。また、この建物が4~5年前に設計されたあと医療機器が進歩したので、その変化にも対応した調整も必要です。このようなことから、計画から施工までにかなりの時間をかけて、慎重かつ丁寧に図面作成に取り組みました。時間をかけていい建物を建てるほど竣工したときの喜びが大きいので、よりよい建物を完成させるよう努めています。

徳島中央病院作業所
副所長

西岡 誠治

1993年入社 広島県出身

私は、マンション、店舗、学生寮、倉庫、入国管理局などを施工しましたが、病院の建設は初めてです。この現場では主に揚重などの工事計画を担当。PCを揚重するための作業や解体の計画を立て、クレーンの機種と配置を決めました。特にPC床はFR版(※1)・KH版(※2)の2種類を使ったので、当社の構造部門ともうまく連携をとることができ施工計画、納まりを見直しました。現場ヤードが狭いので、PCを搬入する大型トレーラーの出入りを考慮して、建物の外にクローラークレーン2台、建物内のエレベーターシャフト等にタワークレーン2台の計4台を設置。外に設置したクレーンは扇状に動かし、建物内のクレーンは円形に動かして、4台のクレーンで現場全域をカバーし、効率的かつ安全に資材を揚重搬入しています。この現場でのやりがいは、見えないところを探って調整し、着実に施工を進めることです。

※1:FR版は、鋼線でプレストレストしたPC版。サイズが大きいので、小梁をなくしてスパンを飛ばすことができ、施工性が向上します。
※2:KH版は、型枠は不要ですが、現場でのコンクリート打設が必要です。

徳島中央病院作業所

所 長

栗本 浩

2つの技術提案が採用されました。

 現場職員は、医療用語の勉強からスタートし、病院建設に必要な要素を理解しました。また、技術提案が認められたので、「切梁なしオープンカット工法」や「高強度PC杭」を提案し、工期短縮につなげることができました。
 この現場は、設計・建築・設備が別途発注されているので、設備JVの工程を把握することが重要です。定例会議以外にも打ち合わせの場を設けて、細部にわたり綿密に調整して施工し、工期厳守に努めています。

徳島中央病院作業所

統括所長

日高 和仁

病院建設の経験を活かしています。

 460床という大規模な病院を建設する機会は多くないので、職員にはこの機会に病院建設のノウハウを学んでほしいと考えています。患者様には、多少の段差も影響があるため、基本的なバリアフリー以上の精密さで床を仕上げるなど、私が病院建設で学んだことを職員に伝えています。
 また、免震構造やPC工法に関しては、本店と連携して工事をスムーズに進めることができました。
  当面の目標は2012年3月の竣工です。安全で高性能の建物を完成させて、お引き渡ししたいと思います。

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