耳川水系総合土砂管理における
関係工事#1

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徳島県唯一の基幹災害医療センターとして強い構造を確保し、
理想的な療養環境を備え、ドクターヘリを常駐させて、徳島県民の「安全・安心」を実現します。

 工事の経緯について、九州電力株式会社 朝崎勝之氏は次のように語った。
 「2005年9月の台風14号で、総雨量1300㎜を超える記録的な大雨が降り、耳川流域では、多くの住宅の浸水や約500カ所の土砂崩れが発生。当社の発電所でも上椎葉・塚原・山須原・西郷の4カ所が発電不能となるなどの被害を受けました。
 これは、未曾有の出水に加え、斜面崩壊に伴う520万m3の土砂の貯水池内への流入が浸水被害を助長したものでした。今後も1000万m3を超える不安定な土砂が斜面に残っており、年平均45万m3の土砂が貯水池内に流入するものと予測されました。
 これらの土砂問題に対応するため、当社は、河川管理者である宮崎県が中心となった技術検討会にダム設置者として参画し、『耳川水系総合土砂管理計画』の一部を担うこととなりました。
 当社の計画は、山須原・西郷の2つのダムのゲートの一部を付け替え、出水時にダムに流入する土砂を下流に流下させるダム運用(通砂)に変更するもので、ダムで遮断されていた河川本来の土砂の流れを取り戻すものです。ダム通砂対策工事は、2016年度中に完了し、通砂運用を開始する予定です。
 このように古いダムを大きく切りかいて運用を変更することも、河川の再生を基本方針に掲げた土砂管理計画も、おそらく日本でも初めてのケースです。本工事の難しさは、ダムに水を貯め発電しながら施工すること、狭いヤードでの高所作業が多いこと、非出水期の7カ月で所定の工事を完了させなければならないこと。したがって、通常のダム工事以上に安全面への配慮が必要です」。
 同篠原芳朗氏は、崩壊斜面災害復旧工事について「貯水池内での大規模な斜面崩壊は4カ所で発生しました。その中でも特に再崩壊により発電への支障となる、あるいは第三者被害を起こす可能性のある2カ所を工事しておりまして、その1カ所がこの現場です。工事にあたっては、宮崎県や自治体、地権者の方々と交渉を重ね、当社が土地を買収。2006年に水際の土砂流出・洗掘防止のために大型土嚢を積んで応急復旧をしたうえで、本格的な災害復旧工事に着手しました」と語った。
 朝崎氏は「災害発生時に、塚原ダムのゲート取替工事中だった前田建設に、応急復旧対策への協力をお願いし、迅速な対応で我々の信頼と期待に応えていただきました。今後も当社のパートナーとして、地元とともにという気持ちで、安全に施工し、品質を確保していただきたいと思います」と締めくくった。
 2011年9月の大雨により、和歌山・福島・新潟で被害が発生。災害復旧工事はもとより、河川管理者や地元との調整を含めて、耳川水系での取り組みが注目されている。

九州電力株式会社 
耳川水力整備事務所
副所長 兼
防災・環境グループ長

朝崎 勝之氏

九州電力株式会社 
耳川水力整備事務所
土木建築グループ長

篠原 芳朗氏

 

山須原発電所調整池内
崩壊斜面災害復旧工事状況

地山法面の崩壊状況(2008/8)

仮橋設置状況(2009/4)

仮橋の施工には急速施工技術「LIBRA工法」を採用。

PG橋(桁橋)設置及び左岸構台設置状況(2009/6)

仮橋では橋脚間に漂流物が影響する可能性があるため、3径間PG橋を架けた。

崩壊斜面復旧工事現場上部より下流の山須原発電所ダム工事現場を望む(2012/2)

耳川水系総合土砂管理

■工事概要

工事場所/宮崎県東臼杵郡美郷町西郷区山三ヶ字鳥ノ巣1746番の2

発 注 者/九州電力株式会社 耳川水力整備事務所

施工形態/前田建設・青木あすなろ建設・松本建設共同企業体

工 期/2011年9月16日~2016年12月20日

協働の管理サイクル図

計画立案、対策実施、モニタリング、評価改善を繰り返し『地域の安全と安心の確保』と『人と多様な生物が共生できる耳川の再生』を目指している。

環境モニタリング計画

ダム通砂運用により、これまで流れにくかった土砂が本来の河川に近い形で流れるようになる。そこで、宮崎県と協力して水質・河床材料・魚類・植物などのモニタリング調査を行い、環境変化を定期的に把握している。このような調査は今後も継続される。

2005年台風14号の被害

最も大きな被害を受けた諸塚商店街と塚原発電所。耳川流域全体で浸水家屋424戸、斜面崩壊491カ所に及んだ。

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