耳川水系総合土砂管理における
関係工事#2

TOP Report#1 Report#2 Construction REPORT 40

山須原発電所調整池内崩壊斜面災害復旧工事

モノレールを敷設して下流アンカーを設置

 山須原発電所調整池内崩壊斜面復旧に先駆けて、前田建設は2006年に崩壊斜面法尻部に大型土嚢を設置する応急復旧工事を行った。
 2008年11月、山須原発電所調整池内崩壊斜面災害復旧工事に着工。施工に必要な仮設設備から着手した。
 まず、下流側斜面を施工するために、斜面上部の町道と作業場所を最短距離で結ぶモノレールを敷設し、作業効率を高めた。
 また、崩壊斜面の掘削工事と護岸工事をするために、左岸と右岸を結ぶ仮橋を構築。左岸に急速施工で乗込口を設け、そこから仮橋を架設し、右岸に作業構台を設置。25mスパンのPG橋(桁橋)を架けて、仮橋を撤去した。PG橋を架けたのは、川に流木などが流れてきたときスパンが短いと危険だからである。
 下流側斜面には地割線があったので、長さ17mのPCアンカーを岩盤に打ち込み、斜面を緊張して安定させた。

工事用モノレール

斜面上部の町道と下流側のアンカー設置箇所を最短距離で結び、作業効率を上げた。

ロッククライミングマシン

斜面上部の急斜面で土砂を掘削する際、上部の町道から吊り下げて作業した。

工事用道路の施工

急斜面で大型重機や不整地運搬車を使って作業をするために、土嚢を積むなど工夫して、工事用道路を造った。

上流部斜面高低差100mの掘削と法面保護

 上流部の高低差100mでの急勾配には、作業構台から工事用道路を造成。大型土嚢を積んで道幅を確保するなど工夫し、索道を設置して施工箇所に小型重機を吊り上げ、大型重機を組み合わせて作業した。
 上流部斜面は上部から下部へ向けて施工。上部の掘削法面整形は、ロッククライミングマシンと作業員を町道から吊って作業をした。まず地山を高さ3mずつ掘削法面整形して不整地運搬車で土砂を搬出。さらに法面整形完了ごとにフリーフレームを設置し、法面を安定させた後に次の工程施工をした。また、斜面中腹に暗渠を設け湧水処理を行い、各小段では上下流方向に雨水を処理して掘削土の含水調整を行った。
 下部アンカー設置の際は、下地処理として長繊維混入補強土工()を行った。さらにアンカーを1日2本のペースで削孔定着し、下2段はPCフレームのアンカー、3段目以上は鋼製フレームのアンカーを採用した。

※長繊維混入補強土工とは、繊維と砂を混ぜて厚さ20㎝ほど吹き付けて、もたれ擁壁を造る工法。

高層階施工状況 2011/4

自動追尾計測器

掘削中は地山の変動を、掘削後は表層の状況を観測するために、斜面に面した山に自動追尾計測器を設置。

アンカー設置

不揃いな地山の整形後、アンカーの角度調整用の下地処理(モルタル吹付)を施し、アンカーを造成し、緊張した。

斜面完成予想図

護岸工は61本のRC隣接杭で地滑り・侵食防止

 護岸の侵食防止を目的として、φ2000㎜の場所打ち杭61本を施工し、長さ122mの護岸工を完成。杭を施工する際は、掘削に使用する全周回転機が動かないよう、鋼製の定規を作業構台にしっかり固定し、精度を追求。夜間に掘削、日中にコンクリートを打設して、1日に1本のペースで、隙間なく連続させて施工。隣接して打設したことを目視点検し、品質を確保した。
 こうして崩壊した土砂の除去と法面保護で、安定した斜面を実現。斜面復旧工事の完了後、再び急速施工で仮橋を構築し、PG橋を撤去した。
 2011年10月からは山須原発電所ダム通砂対策工事が始まり、着実に作業を進めている。2016年12月の竣工を目指して、これからも安全第一に作業に取り組んでいく。

施工が進む屋上ヘリポート 2011/9

濁水処理設備

土砂掘削やコンクリート打設の際など、現場から出る水は濁水処理とph管理を行い、水環境を守っている。

地元のお祭りへの参加

耳川流域で行われている神楽などのお祭りには積極的に参加し、地域の方々との交流を深めている。

現場見学会

地元の小学生などを招いて、見学会を開催。工事説明のあと、現場を案内した。

前田建設工業株式会社
宮崎地区担当
事務課長

伊藤 竜司

1992年入社 福岡県出身

入社以来20年間九州支店に勤務し、宮崎、沖縄、鹿児島、長崎の現場事務などを担当。事務職員は複数の現場を兼務することが多く、私は現在、耳川水系の2現場を含めて5現場を担当しています。私の一番重要な仕事は現場での地元対応、次に本社や支店とのパイプ役です。この現場では、九州電力様との打ち合わせに参加して、地元対応の窓口を務めています。地区のミニバレーボールチームに入って、練習の合間にお茶を飲みながら工事の説明をしたり、地元の情報をいただいたりして交流を深めています。このように地道にコミュニケーションをとり、地元の方々の思いを発注者様に伝えることは重要な仕事であり、前田建設のよさだと思います。地元対応をしているうちに「私も工事を動かしている」ことを実感し、たくさんの人々と出会うことでその土地が大好きになります。

耳川作業所
副所長

澤江 征生

1991年入社 島根県出身

この現場には2009年に応援に来て、2010年4月に正式に赴任し、全体の工程管理、品質管理、安全管理などを全体的に見ています。赴任したときは下流側のアンカーの工事が終わったところだったので、最初の掘削作業(切り出し作業)から始めました。急斜面の下はダム貯水池なので、工事にはさまざまな工夫が必要でした。まず、重機を入れて斜面の土を掘削するために、土嚢を使って工事用道路を造成。重機を効果的に組み合わせ、作業効率を高めました。また、地山からの湧水が2ヶ所ありましたので、導水して適切に処理しました。環境面では、掘削した土を搬出する際は、土を乾かし、ダンプトラックのタイヤ洗浄を徹底して、道路を汚さないようにしました。現場では精度の高い施工すると同時に、環境への配慮も大切です。耳川総合土砂管理というビッグプロジェクトの施工に携われたことに、やりがいを感じています。

 

耳川作業所

統括所長

東 猛

耳川水系での実績をもとに地元との関係を築きながらよりよいものを造ります。

 前田建設は1998年の山須原ダム洪水吐ゲート取替工事から耳川水系のダムや発電所の工事に携わってきました。
 2005年9月の台風により被災したときは、塚原ダム洪水吐ゲート取替2期工事を実施中であり、九州電力様から被災箇所応急工事のご相談をいただき、当社本・支店とともに検討会を立ち上げたことが、本工事のスタート地点になりました。上椎葉進入路復旧工事、山須原ダム上流斜面崩壊箇所河川対策工事を経て、山須原発電所調整池内崩壊斜面復旧工事、山須原発電所ダム通砂対策工事を受注し、着実に工事を進めています。
 九州電力様には当社の施工技術・実績を評価していただいているので、やりがいがあります。今後も地元のみなさまとのコミュニケーションを大切にし、現場の状況を的確に判断して、よいものを造るよう努めます。

■前のページへ