キヤノン電子浜松町ビル改修工事#2

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405本の杭を打ち、高架を支える

 2012年10月15日に養生・解体を開始。1階のタリーズコーヒーが営業しながら、2カ月の短工期で施工するため、夜間工事限定作業エリア・工種を選別し、工程を立案して、昼夜作業と複数階での同時作業を実施。
 解体資材は、エントランスの階段に板で仮設スロープを造り、台車で解体資材を排出し、分別してリサイクル。周辺環境に配慮しつつ、急ピッチで解体積込・搬出に取り組んだ。
 通常リニューアル現場の所長は複数の現場を兼務しますが、この現場に専念。実測図を作成し、経験をもとに納まりを予測し、多少の誤差は調整できるよう製作物の寸法を決めて、製作・施工した。
 外壁はクリーニングのうえ、西側のビルに接していた部分を石調吹付仕上げに変更し、玄関の集合ポストを撤去。屋上は既存のウレタン防水の更新工法と、塩害防止仕様の空調機への更新。床スラブも本店リニューアルエンジニアリングにて構造検討し補強して、建物の耐久性を確保した。

天井仕上げ施工状況

デザインを活かす施工に徹し、豊かな空間を実現

 配管を点検できるよう開閉式カバーで隠すことで、1階のボイラー室をホールに用途変更した。
 着工後の10月に、エントランス、ホール、エレベーターのデザインが、キヤノン電子株式会社酒巻久社長から水戸岡鋭治氏に発注された。11月にデザインが決定すると、すぐに水戸岡氏と打ち合わせを開始。デザインの再現を考慮した施工に取り組んだ。
 エントランスは、白い床と壁に、水戸岡氏のモザイクアートを配置。既存のエレベーターに水戸岡氏のデザインが印刷された壁紙を貼った。
 ホールは、水戸岡氏がデザインした壁紙とベンチのコーディネートで、癒しの空間に。水戸岡氏主催のドーンデザイン研究所がコンピュータでおこした壁と天井の展開図をもとに、漆喰シートにインクジェット印刷した特注壁紙を丁寧に貼った。壁面を鮮やかに演出する照明計画も功を奏し、見違えるような豊かな空間を生み出すことができた。

夜間に行われた屋上階へのキュービクル設置作業状況

耐震天井、OA床、トイレなど、随所に工夫

 防災面では、東日本大震災のとき都内で天井の崩落事故が発生したことを教訓として、耐震天井協会の落ちない天井を採用。施工の際は、ステージ式の可動式足場を採用し、作業性の向上と効率化を図った。また照明はLEDを採用。空調はより効率的な新型に変更。換気による室温変化を防止する全熱交換機も採用して省エネルギー化を図った。
 床はOAフロア化して配線を床に収納。仕様を大理石から紺とグレーのタイルカーペットに変更してイメージを一新。
 トイレは各階に男子用・女子用があった、しかし男子社員が多かったので、男子トイレを2・4・7階に、女子トイレは3・6階に変更。男子用・女子用とも洋式便器を2つ設置し、使い勝手を向上させた。
 また、洗面台を洗面化粧台に変更し、石張りから白を基調にしたシンプルなインテリアに変更した。
 こうして奥行き8.7m、長さが21m、1フロア180㎡ほどのビルが、その規模以上の付加価値を持って蘇り、当初の予定通り完成。お引き渡しを完了した。

外観

天井下地耐震ブレース

一般的な吊り天井は、地震のときブランコのように揺れて壁にぶつかり崩落することも。一方耐震天井は、ブレース(筋交い)で揺れを抑え、天井の崩落を防ぎ、安全を保つ。

事務所施工完了状況

事務室は耐震天井の施工を先行し、耐震天井の両サイドの下がり天井の仕上げ工事が終わり次第、OA床の施工に移った。

キュービクル設置状況

ここは海に近く塩害を受けやすいため、屋上のキュービクルを塩害防止仕様の塗装を施したタイプに更新。

エントランス天井施工状況

天井はシンプルな仕上げになることが多いが、ここでは水戸岡氏のデザインにより、楢材を使った贅沢なデザインに。丁寧に施工して上質な仕上がりを目指した。

点検も可能にした施工

ボイラー室だったので片隅には配管が。それを可動式カバーで隠し、壁面の一部として壁紙を張り、違和感のないよう納めた。

エントランス

グレーの大理石の狭く暗いエントランスから、白を基調にした明るく広がりのある空間に。天井の楢材がグレードを高めて、ビルのイメージを一新。

改修前

改修後

キヤノン電子RN作業所

所長

植村 将

お客様の企業理念を理解し、関係者と協力して、厳しい工期を厳守

 2001年に東京支店リニューアル部が発足して以来、私は10年以上リニューアル工事に携わってきました。この現場は工期も内容も最も難しい現場だと言えます。
 着工前にキヤノン電子株式会社酒巻社長の著書を読み、お客様の企業理念を意識することで、ご要望にお応えできるご提案をするよう努めました。
 わずか2カ月という厳しい工期を守り、快適な空間を生み出すために、水戸岡先生やドーンデザイン研究所のみなさま、現場作業員と協力して工事を進めることに専念。特に夜間工事では作業員の疲労に配慮したローテーションを組み、短い工期を克服し、予定通りお引き渡しできました。皆様のご協力に感謝しています。

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