肝属中部(一期)農業水利事業
荒瀬ダム第四期建設工事#1

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鹿児島県における畑作地帯活性化計画の一環として、
肝付町・鹿屋市に広がる1537haのシラス台地に農業用水を供給し、
豊かな畑地・樹園地帯を実現します。

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■肝属中部の地質の問題点

 肝属中部の上層土のシラスは層厚30~100mに及び、保水性が低く生産性が低い地層です。平野部は砂岩・泥岩やシラスが風化した土壌で、シラス崖からの湧水などを活用した水田もありますが、台地は水分が乏しいため、天水期待の畑作や桑の栽培などに頼っていました。
 年間降水量は2500㎜ありますが、降雨がある時期が6月から9月までの一時期に偏っています。この水資源を「平準化」できれば、さまざまな農業用水需要に応えられます。

 

■農業用水不足解消をめざして

 戦後の食糧増産の中で、農林水産省は、笠野原地区の高隈ダム、南薩地区の池田湖の用水源化、曽於東部地区の中岳ダム、曽於北部地区の谷川内ダム、曽於南部地区の輝北ダムなど、多くの取水施設を築造しました。
 本事業は鹿児島県内での畑作地帯活性化計画の最終ランナーとして、肝属川右岸の肝付町・鹿屋市に広がる1537haの畑・樹園地帯に農業用水を供給します。具体的には、荒瀬川に荒瀬ダムを築造し、送水路1.7㎞、パイプライン42㎞、ファームポンド5カ所を建設し、鹿児島県の畑地帯総合整備事業で施工するパイプラインに接続します。

 

■荒瀬ダムについて

 本事業のうち、荒瀬ダム建設工事を前田建設工業・清水建設JVに発注しました。荒瀬ダムは花崗岩を基礎とした堤体積1716千?の中央遮水ゾーン型ロックフィルダムで
す。特徴は、受益の畑より高い標高にダムがあるので、畑でのスプリンクラーかんがいに必要な水圧が標高差(自然圧)で得られ、一部を除きポンプ加圧が不要なことです。加えて、河川維持流量など義務放流量を中心に小水力発電所を備え、ポンプ加圧に必要な電力を十二分にまかない得るので、極めて合理的です。ダム上流は森林なので、湖水の富栄養化の心配もありません。
 施工においては、遮水ゾーン材は志布志市から運搬しましたが、ロック材はダム敷地内から100%得られ、採取跡地は湛水池の一部となるのでこれも合理的です。地域の土壌、水、有機肥料などを絶妙に組み合わせるのが理想の農業。同様に、地域の土木材料を絶妙に組み合わせるロックフィルダムは理想の土木工法です。

 

■前田JVの仕事ぶりについて

 四半世紀前に沖縄県石垣島で、前田建設工業・清水建設JVによる底原ダム建設工事を見ており、その頃のダム現場は、作業員を含めて「プロ」と呼ばれるような人が沢山おり、私も前田建設の仕事ぶりに感心したものです。この荒瀬ダムの建設現場においても、作業所幹部の意思が末端まで届いており、工事用道路入口のガードマンの的確な交通整理ぶりが地元の南日本新聞に取り上げられました。また、ここ荒瀬ダムの直下流には「轟の滝」という川遊びポイントがあるので、水質保全にも神経を使っていただいています。
 このまま無事に、かつ見事に、工事完成を迎えられることを期待しております。

 

 

提体標準断面図
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肝属中部農業利水事業

山口 一哉氏

農林水産省
九州農政局
肝属中部業水農利事業所
所長

川端 正一氏

 

 

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原石積込状況

 

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定礎式

 

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畑地状況

 

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ファームポンド

 

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荒瀬川清掃

 

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轟の滝

波見地区荒瀬川上流にある轟(とどろ)の滝は3段からなり、涼を求めて夏には大勢の家族連れで賑わいます。毎年夏のシーズン前に行われる河川の清掃には現場事務所職員も参加している。

一般計画平面図

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