一般国道231号石狩市新雄冬岬
トンネル工事#2

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工事の7割は完了
最後の山場は
分岐部の最終施工

 前田建設は、一般国道231号の北海道防災計画事業の対象とされる、延長11.6㎞区間のうち、既設のガマタトンネルと雄冬岬トンネルを接続する延長1555mのバイパストンネル・新雄冬岬トンネル(仮称)の新設および、既設トンネル内3か所の拡幅工事を進めている。
 新設トンネルの施工は、両既設トンネルに挟まれたタンパケ覆道脇より作業坑を延ばし、約88m地点からNATM工法を用いて左右に本坑を掘り進めていくというもので、現時点(2014年5月末)では、雄冬岬トンネル側の分岐部まで本坑掘削が完了。工事全工程の進捗は約7割ほどに達している。
 しかしながら、両既設トンネルの分岐部には、トンネル内を一般車両が通行しており最終的な施工が行えないため、新設トンネルの舗装や設備、照明設置などの工事を完了させ、一般車両を新設トンネルに誘導した上で分岐部の最終施工(覆工・防水工)を行わなければならないという課題が残されている。

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アクア-フィルターシステム

小型、低コスト、省メンテナンスを可能にした濁水処理装置。安全性と凝集効果が高く、作業ヤードの確保が難しいこの現場でも高度な処理が可能。

 

 

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鋼製プロテクター組立状況

既設トンネルと新設トンネルの分岐部で、一般車両の安全通行を支えるプロテクターは、日中に千代志別トンネル先の組立ヤードにて組み立て、22時以降にトンネル内の通行止めが行われ、夜を徹して設置作業がおこなわれる。

 

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RH-10J投入と
プロテクター設置で
速さと安全を確保堤体を築造

 トンネルの掘削は、海岸線にそそり立つ急峻な岩壁が発破の振動で変状を起こさぬよう、硬岩地山を機械掘削で掘り進めることを選択。そのために、日本でも有数の出力を誇る自由断面掘削機「RH-10J」を2つそれぞれの切羽に投入してスピーディーな掘削を実現させた。
 さらに今工事の大きな特徴として挙げられるのは、地域の方々の生活道路としてある現道(既設トンネル内)で、一般車両の安全通行を確保しながら2つの分岐部を施工すること。この課題については、鋼製のプロテクターを現道に15基設置することで解決。また、プロテクターを設置することで、昼夜を問わず24時間工事を行うことが可能となり、工期短縮を実現した。
 こうした特殊な条件が重なる中で「安全」を担保して順調に施工を行えている背景には、前田建設が以前手掛けた日本初の分岐トンネル「豊浜トンネル工事」の経験が活きている。

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現場に導入される大型自由断面掘削機(RH-10J)

日本有数の出力を誇る大型自由断面掘削機「RH-10J」を2つの切羽に投入。これにより、スピーディーな掘削を実現させた。

 

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FILM工法と
入念な養生で
高品質施工を実現

 本坑の施工については、掘削後のコンクリートの吹付け面に防水シートを設置する際、当社が開発したFILM工法(背面平滑型トンネルライニング工法)を用いて施工している。
 この技術の特徴は、凹凸が生じる吹付けコンクリート面と、型枠に設置した防水シートとの空隙に、裏込め充填材を充填することによって空隙をなくし漏水を防ぐというもの。さらに、シートの敷設作業が機械化施工で行えることから、5m~6mのロングスパンシートを採用して溶着作業が大きく軽減できるメリットが生まれる。
 また、覆工コンクリートのひび割れに配慮し1カ月間の養生期間を確保。当社独自の自在変形型トンネル覆工システム(フリードーム)を採用して、断面が変化するトンネル全延長をレールによってスライド移動しながら養生し、高品質な施工を実現している。

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自在変形型トンネル覆工システム

高品質の覆工コンクリート施工のため、コンクリートを冷却、加温して、ひび割れ発生率を従来工法の1/10以下に低減。また、フリードームは、トンネルの断面変化に自在に適合すると同時に、部材が軽量で組み立ても容易なため、過大な機材を用いずに設置・移動が可能。

 

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雄冬岬トンネル側分岐点貫通

雄冬岬トンネル側の分岐点の貫通直後にトンネル作業員と職員での記念撮影。それぞれが主体性を持ち仕事に取組み、ようやく片方の切羽が貫通した。

 

海岸の清掃

浜益海岸の清掃なども、職員が率先して行い、地域の皆さまに対する貢献も怠らない。

 

「現場を創る」精神を。

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新雄冬岬トンネル作業所
所長

椙山 孝司


この現場は、冬になればマイナス15℃以下という厳しい自然環境に晒されます。しかも狭い作業ヤードの中で、周辺環境に配慮しながら、2か所の切羽を同時に掘り進めたり、車線規制をしながら分岐部の施工や既設トンネルの補強工事を行うなど、あらゆる条件をクリアして工事を行っています。
それらを万事滞りなく進めるためには、作業員一人ひとりの当事者意識が欠かせません。いわば、トンネルを「造る」という発想ではなく、現場そのものを自ら「創る」という考え方が必要です。こうした現場を経験した若手は、それが財産となることでしょう。それはまた、今後の前田建設のトンネルづくりに活かされていってほしいと思います。

 

口地英樹

新雄冬トンネル作業所
機電担当

山本 昂輝

私はまだ入社2年目ですので、機電課長の下で仮設備の段取りをしたり、重機トラブルの事前対処であったり、基本的な現場での機電業務をOJTとして勉強させていただいています。

 

実は私は土木建築科の学科出身ではなく、大学では機会工学の方を専攻していたため土木の知識には疎く、その上初めて配属されたのがこの現場でしたので最初のうちは多々戸惑いもありました。まだまだ経験も浅く、自分が何かを動かしていくという年代でもないので、自分自身で工事を推し進めているんだという気持ちにはなれませんが、少しずつではありますが経験も積んでこれましたし、協力会社の作業員さんたちにも徐々に必要とされるようになってきているという自覚があり、それが大きなやりがいになっています。
前田建設での仕事は、メーカーの仕事などとは違って、デスクの上で図面を書いたり計算書をつくることに多くの時間を費やすのではなく、常に人が入り乱れている現場に出て、さまざまな業種の人と会えるというのが一番大きな面白みだと思います。

 

もちろん機械業界でも電気業界でもそうしたことはあるとは思いますが、その数は圧倒的に違います。結局のところ、自分が学んできたことをどう活かすかも大事ですが、座学では学び得ない多くのことがものづくりの現場にはある。そこがこの仕事の最大の醍醐味だと思います。

高山 久

新雄冬トンネル作業所
工事担当

山内 彰寬

入社7年目になりますが、これまではトンネルだけでなく、ダム、風力発電所、新幹線の高架橋などさまざまな土木現場で仕事をしてきました。

 

トンネルは大きく分けて掘削とその後の覆工工事に分けられ、私は前者の掘削の最前線で仕事をしています。トンネルを掘るにあたっては、まず設計で決められた通りに掘り進めることを基本としながらも、実際の現場では、設計の通りの断面が保てないこともあり、それを加味した上で測量し直し、改めて「どこをどう掘る」ということを決めていきます。いわば掘削前の設計図と、実際の現場状況を擦り合わせて、最も効率的で安全性の高い掘削ルートを探すことが重要な仕事となります。

 

またこの現場には、日本でも有数の出力を持つ自由断面掘削機「RH-10J」というマシンを2つの切羽に同時投入しており、最初の頃は私自身扱ったことのない掘削機だったため戸惑ったことも少なくありませんでした。

通常、これくらい硬い山であれば発破を使用するのが普通ですが、この現場は発破は使わず掘り進めていくことが前提条件であったため、10Jを投入しながらも、なかなか前に進まないということもありました。特に工事着工当初は切羽が2つあったため、両方の切羽がある程度足並みを揃えて掘り進めていかなくてはならず、常に進捗状況の確認を行いながら仕事を進めていくことが求められました。そうした中で救われているのは、明るい現場の雰囲気と作業員さんたちとの良好なチームワークです。

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新雄冬岬トンネル作業所
監理技術者

宮内 俊彦

私の仕事は工事の全体的な工程管理と、のべ11社の協力会社さんの調整が主な業務となります。入社して13年目ですが、この現場のように多くの業者さんの業務調整を行うことはほとんどありませんし、私自身、監理技術者として携わるのが初めての現場になりますので働きながら学ぶ部分も少なくありません。

 

これだけ多種多様な業者さんが同じ現場に入ると、ちょっとした行き違いがトラブルのもとにもなり兼ねないため、そうしたことがないように目と心を配ることが大事です。とはいえ、私一人で全ての現場に目を行き届かせるわけにはいきませんので、各々で主体的に考えて工事を進めていただけるよう導くことが鍵となります。

 

今後の課題としては、トンネル掘削については目処がたっていますが、その周辺の細かいところの施工を、これまで通り安全に進めていくことが最も大事なポイントになると思います。また、新設トンネルの舗装や、照明、防災設備の業者さんがこれから入ってきますので、何をいつまでに仕上げていかなくてはならないのか、その順番をどのようにすれば全体的な工事が上手くいくのかということを、こまめに連携をとりながら進めていかなくてはなりません。ただしそれらの業者さんは前田の下請けとして入るわけではないため、前田の都合だけで動くわけにはいきません。

 

そうした方々と気持ちよく協働しながら、なおかつリーダーシップを発揮して工事を仕上げていくかが、今後の最大の課題となるでしょう。

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新雄冬トンネル作業所
機電課長

藤本 祐樹

機械と電気、設備関係の計画から保守管理、あとは全体的な機械の入れ替えや土木業者さんとの工程調整などまで行います。

 

この現場は2つの切羽があり、機械類も多く山も硬いため、特に重機のトラブル防止には細心の注意が必要です。私はこれまで、トンネルばかりでなく風力発電の風車なども手掛けてきましたがさほど大きな違いを感じることはありませんでした。

 

ところがこの現場の場合、他では経験したことのないような特殊な機械や大型機械が多いため、機電の責任者としては今まで以上に神経を使っています。重機がトラブルを起こせば、そこで工事も中断しなくてはならなくなります。したがって、トラブルを起こす前に機械の不具合を察知して、リスクを最小限に抑えることが我々機電担当の最も重要な仕事になります。

 

もちろん毎日1つ1つの機械をチェックして回ることはできませんので、重機のオペレーターとコミュニケーションを密にして状態を把握することが大切です。つまり、日頃からどれだけコミュニケーションが取れているかが自分たちの仕事をスムーズにすることにもなりますし、結果それが工事全体の進捗にも影響します。そうした意味ではこの現場は、雰囲気が明るくて、作業員さん同士も気軽に話し合える雰囲気があるので、現場の人たちが「ちょっとおかしいな?」と感じたら、トラブルを起こす前に情報がどんどん入ってくるため、重機が原因で現場を止めてしまうようなこともなくここまでは順調に進捗しています。

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新雄冬トンネル作業所
工事課長

岩本 泰

現場の工程管理、品質管理、出来高管理をトータル的に見ています。この現場は通常のトンネルと違って外回りの工事が多いため、工事の進捗状況次第では昼勤、夜勤を問わず現場に立つこともあります。特にこの現場ではプロテクターを設置して一般車両の通行を確保しながら工事を行わなくてはなりません。私自身入社14年目になり、ほとんどの現場がトンネル工事ですが、通常の山岳トンネルとはまったく違った手続きで工事を進めていかなくてはならない難しい現場です。

 

現場では、協力会社さんと一緒になって作業を進めるわけですが、建築と違って複数の業者さんが長い期間同じ場所で作業をしますので、それぞれの作業員さんの個性を掴みつつ、みんなが同じベクトルで1つのものを創りあげるよう導いていくことが肝心です。もちろん技術も大事ですが、これだけ大掛かりなトンネル工事になると、やはり人と人の連携が何より大事なことになってきます。そのためにはまず、私が作業員さんを信頼しなくてはなりませんし、また作業員さんたちからも私が信頼に値する人間でなくてはならないと思っています。工事課長という立場上、必然的に現場を管理し目を配る役回りとなりますが、それはあくまでも名目上の役職であって、私の仕事を正しく説明するなら作業員さんたちのパイプ役ということになるでしょう。これは私の自負になりますが、チームワークの良さが安全につながるわけで、この現場は非常にチームワークの良い現場であるということがいえると思います。

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