福島県楢葉町除染等工事#2

前田×復興 福島県楢葉町除染等工事 東日本大震災復興支援 2014

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「攻め」の安全管理

 

 前田が取り組んだもうひとつの課題が、作業員の安全教育だった。数千人規模にのぼる作業員の中には、土木作業をはじめて経験する者もいる。最低限の法律を遵守する以前に、危険を危険と認識するレベルにばらつきが大きく、しかも作業範囲は広い。
 この課題に挑んだ安全副所長、杉江は現場を回りながら考えた。
「作業所ルールをつくることで、すべての工区で同じレベルの安全管理を実現しようと図りました」重機と作業員の作業空間をコーンで明確に分ける。車には輪留めを欠かさない。一見、当たり前に思えることからはじまり、除染作業ならではのヒヤリハットも踏まえた、独自ルールを明文化していった。
 しかし、そのルールがノウハウの結晶だと思ったら誤りだ。
「これを一人ひとりに染み込ませる」ことこそ大切で、しかもはるかに難しい。
 恒例となった安全教育は、その2工事の2000人を受講させるのに十日かかる。自ら頻繁にパトロールに回り、ルールを遵守できない作業員を見つけたら、出勤停止も辞さない態度で挑んだ。
 災害が起きたら作業が止まる、という話ではない。安全を担保されてこそ人も重機もフルに力を発揮できる。そのための杉江の粘りだった。

 

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「想定外」を想定する

 

 クレーンやバックホウなどの一般的な建設機械から、草刈機やチェーンソーなどの農機具、サーベイメータや個人線量計などの放射能測定器。さらには、耐候性大型土嚢や地力回復材などの資材。機電課長の宮田はそれらすべての資機材の調達と維持管理を一手に担う。
 「とにかくどれも数が多い上に建設現場では使わない特殊な物ばかり。除染区域であるため調達は容易ではありません。何か一つでも不足したら何千人という作業員が遊んでしまいます。この仕事にはそんな緊張感がある」
 なにせ郵便や小包のやりとりにも苦労する現場。何事も、先々を読んで発注をかけることが必要だ。気は抜けないが、資材の動きを通じて工事の進捗を把握し、支える手ごたえは大きい。
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平成26年3月、前田は計画どおりに除染「その2工事」を完了した。
 前田が築いた仮置場を、町民たちが定期的に訪れる。自分で線量を測り、その数値に驚いて、安堵の声をもらす場面もある。町は平成27年春以降を帰町の目安に掲げ、準備に取りかかった。
 その日に向けて、前田はさらに念入りにフォローアップ除染と仮置場の維持管理に力を注いでいる。

 

 

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