浜松篠原海岸津波対策施設等
整備事業(海岸)工事
(総合管理及びCSG製造工)#1

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南海トラフ大地震クラスの津波に備え、浜松市沿岸全域に約17.5㎞におよぶCSG防潮堤の整備が進んでいます。

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■浜松市沿岸全域にCSG防潮堤を

 現在静岡県では浜松市との共同事業としてレベル1の地震発生時における津波高を上回る「レベル1※2プラスα」の津波高を想定した『浜松市沿岸域防潮堤整備事業』を進めています。この事業は地元企業や市民の浄財により成り立っていることも特徴です。
 概要は、浜松市沿岸の全域、浜名湖から天竜川河口までの約17.5㎞全てにおいて、標高約13mの防潮堤整備を行うというもの。防潮堤の中心部にCSG材を用いることで、津波によって周りの土砂がある程度けずられてもCSGがしっかり残って津波を緩衝する粘り強い構造体となります。また覆土により海岸防災林の再生も可能なため環境・景観面も効果的です。
 CSG工法自体はダム建設で実績を積み重ねている技術で工学的にも性能が実証されています。しかし、ダムの場合は岩盤の強固な地盤の上に構築しますが、防潮堤は砂の上につくります。そうした技術的課題を検証するため平成25年に試験施工を実施。そこで培った知見に加えて、ダム技術センターの全面的なバックアップを得てCSGに対する信頼性を担保し現在の施工に至っています。

※2 レベル1:南海トラフ、駿河トラフ沿いで100年~150年周期で発生するマグニチュード8クラスの地震動レベル。

 

■CMとしても前田の力を発揮

 今回の事業は「オール浜松」という理念を掲げて、施工は地元の建設会社が担当しています。CSG工法は大型重機を使用せずに汎用的な建設機械で作業が可能なため、地元の企業でも施工できる利点がありますが、一方で、その核となるCSGを我々は扱った経験がありません。そうした意味で日本トップクラスのダム技術を持つ前田建設さんには、篠原工区におけるCSGの製造の他、CM(コンストラクション・マネジメント)として事業の効率化や地元の施工会社の技術指導、品質管理などにアドバイスをいただいています。
 実際の作業自体は、CSGをブルドーザーで敷きならして30㎝高のピッチに振動ローラーで転圧するもので複雑ではありませんが、転圧の回数や振動ローラースピードなど、細かな部分に前田建設さんから助言いただいているお蔭もあって、現在先行して施工を進めている篠原工区の5㎞区間は計画通りの品質が確保できています。

 

■「M- Yミキサ」によるCSG製造

 また、CSG製造においては、プラントに「M-Yミキサ」という前田建設さん独自の技術を導入して連続的にCSGを製造し、一日あたり最大約2800m³のCSGを供給可能としたことが合理化につながっています。
 これは、元々の設計に対してオーバースペックを見込んだプラント設計かもしれませんが、工事の進捗に支障をきたさぬ配慮であり、CM効果の一つの側面とも言えるでしょう。
 2016年春に迎える篠原工区の工期終了とともに前田建設さんのCMとしての役割は一区切りとなりますが、過日新たに発注された舞阪地区のCSG製造においても、これまで同様に存在感を発揮して欲しいと期待しています。

吉澤 雄介氏

静岡県浜松土木事務所
前 沿岸整備課 課長

吉澤 雄介氏

 

伊東 信幸氏

静岡県浜松土木事務所
沿岸整備課 課長

伊東 信幸氏

 

袴田 充哉氏

静岡県浜松土木事務所
前 沿岸整備課 沿岸整備班 主任

袴田 充哉氏

 

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CSG防潮堤の基本構造

CSG防潮堤の基本構造

 

CSG防潮堤の特徴

・ 津波が越流しても、築堤材料が洗掘されない粘り強い構造。
・ 覆土により海岸防災林の再生が可能。
・ 汎用的な建設機械の使用による合理化が可能。

※1 CSG(Cemented Sand and Gravel)とは…

「CSG」とは、近傍で容易に入手できる岩石質材料にセメント、水を添加し、簡易な混合装置により製造される材料。
CSGは、永久構造物として強度設定手法や品質管理手法が確立されている日本で生まれた高度な技術です。

 

防潮堤整備ルート

防潮堤整備ルート

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CSG製造プラント概要

CSG製造プラント概要

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