■音楽教育の土台を木で築く
1964年、旧桐朋学園仙川キャンパスができた当時は、先進的な建築物として話題になり、キャンパスのみならず、小澤征爾氏を初めとしてさまざまな音楽家が学ぶ、最高の環境が整っていました。
■最先端の木造キャンパスを
桐朋学園はいま、これまでの伝統を見直して、新しい価値を見いだせる『来るべき音』の創出を教育理念に掲げています。この理念の実現に向けて「ハードにおける具現化」を、木造建築を前提としてお考えいただきたい。これが新キャンパス建設における私どもからの包括的な要望でした。
■前田とならやって行ける 今回の新キャンパス建築は、デザインと仕様を含めて、コンペティションの審査にあたった教職員の全員一致で前田建設さんにお願いすることに決まりました。要因となったのは、提案自体に先進性と説得力があったことはもちろんのこと、プレゼンテーションをされた時に熱意と誠意が感じられたことです。「この人たちだったら一緒にやって行けるだろう」と確信できましたし、その思いは今も変わりません。さらに今後のことを言えば、メンテナンスをきちんとすれば、この新キャンパスはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートホール同様100年以上経っても美しい音色が響いているはず。ぜひ前田建設さんには、そこまでお付き合い頂きたいものです(笑)。 |
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隈研吾建築都市設計事務所 草ヶ谷 友則氏
前田建設工業 建築事業本部 綱川 隆司 |
造建築とBIMの親和性 綱川
今、世の中にある耐火木造建築というのは、意外に木の印象が際立ちません。というのも、耐火を実現させるために木を別の材料でくるむことから、木の建物らしくない見栄えになりがちです。 草ケ谷
耐火建築ゆえに木があまり感じられない。この問題は我々も念頭に置いていまして、ファサードの印象表現は木を全面に押し出したいということがスタートラインとしてありました。また、敷地の周辺が住宅地であるため、突出し過ぎたものではなく、住宅地との調和を実現させることも大切な検討要素のひとつでした。 綱川
この大庇は、木造ならではの自由度の高い表現手法を駆使した隈事務所さんらしいデザインでした。ただ、それゆえ、かなり複雑な多面体の構造でしたので、設計上それを具現化させるにあたっては、隈事務所さんの方で作成したモデルのデータを我々に頂いてBIMのシステムデータとして落とし込み、逆追いでトラスや下地の形状、雨水の処理方法などを決めて行くという我々にとっても初めての試みでした。設計段階でのBIMのメリットは、大庇だけでなくあらゆる設計プランを検証する上で、関係者(意匠設計・構造設計)の意志統一を3次元データの中で図ることだと認識しています。 草ケ谷
私も大変スムーズに仕事ができたと感じています。大庇の形状がつくりにくいとか、立体的に理解しにくいとか。そうした部分を一瞬にして共通認識として確立できるのでとても助かりました。 人の息吹を感じるデザイン 草ケ谷
古い建物を壊して新しいものに建替える場合、すべてを新しくするのではなく、それまで流れていたものを伝統として残していくことも設計の大事な役割です。 綱川
当初から私が隈事務所さんのデザインに感銘を受けたのは、そこに人がいることを意識してデザインされていたことです。 草ケ谷
そこにいるのは、学ぶ人なのか、働く人なのか、暮らす人なのかなど、それは建物の性質によって異なるはずです。 |
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設計時に作成したBIMをデジタルモックアップとして施工時に用いることにより、デザインや納まり等を関係者全員で共有しながら施工を進めていくことができます。木造特有の接合部取り合いや金物の検討を3次元で行うことで高品質な施工を実現します。 |
BIMデータを利用し、従来は竣工しなければわからなかった光や熱や空気の流れを事前に予測し視覚化。お客様の必要な室内外環境を最も効率よく実現します。また災害時の避難シミュレーションを行い安全性の確認も行えます。 |