新名神高速道路切畑トンネル工事#2

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施工全景

道なきエリアの土運搬にベルトコンベアを

 NEXCO西日本・新名神兵庫事務所が管轄する約20㎞区間のうち、最大の工事規模(総延長4.384m)となる『新名神高速道路切畑トンネル工事』が、当社と、東洋建設(株)、西武建設(株)の3社のJVにより進捗しています。
 この工事には、切畑トンネル(上り線1,975m、下り線2,007m)の2車線施工と、上下線一体型の宝塚サービスエリアの造成、トンネル坑口からサービスエリアまでの2つの橋梁下部工などが含まれます。
 工事数量が最も大きいのはサービスエリアで、商業施設だけで約11ヘクタール。
それに付随する高さ70mの盛土やランプ、本線を含めると約20㌶。これらをおよそ400万㎥もの土砂で埋めたてます。使用する土砂は、トンネル掘削や切土区間からの発生土、さらに近隣工事の発生土です。しかし、この莫大な量の土運搬には「ルートの確保」という想定外の障壁がありました。
 トンネルの坑口からサービスエリアまでは、高低差の激しい山間が続きます。本来はここにダンプが通れる7m道路が完成しているはずでしたが、本工事直前になってもその道路が未完成のまま。苦肉の策として、隣接した橋梁工事で設置される予定の仮設橋を、ダンプによる土運搬に利用することを当社が提案。加えて、トンネル坑口からサービスエリアの中心部まで、延長約2㎞のベルトコンベアを設置することで、土運搬の実現とその効率化を図りました。
 このベルトコンベアは、1分間で10tダンプ1台分の土運搬能力を備えており、結果的には、現場におけるダンプの渋滞緩和と、ダンプの台数を減らすことで大幅なCO2の削減というメリットも生みました。

鉄鋼スラグ吹付けコンクリート

鉄鋼スラグ吹付けコンクリート

従来はトンネル材料として使用されていない鉄鋼スラグに着目し、吹付材料として使用、天然資源節約と高品質吹付を両立することができました。

坑内集塵機

坑内集塵機

大容量フィルター式の坑内集塵機は、ダストセンサーを取付けて、自動制御することで電力消費を大幅に削減。これによりCO2削減にも大幅に貢献しています。

 

中流動コンクリート打設状況

覆工に、吹付けにコンクリートの新しい試みを

 切畑トンネルの施工には、フライアッシュを使用した中流動覆工コンクリートを使用しています。この中流動覆工コンクリートは従来に比べて流動性や充填性が高く、施工性や堅牢性、仕上がりの美観に優れています。
 その一方、流動性が高いゆえの管理方法の難しさとコストの観点から、一般的に使用されたことが少なかったのですが、セントルの設計や側圧の計測管理手法を確立させたことで実用化しています。
 さらに、瀬戸内海の海砂の採取規制により天然の骨材が枯渇していたことから、掘削時の吹付けコンクリートには、製鋼所から排出された鉄鋼スラグを細骨材に使用。これは国内のトンネル施工で初の事例となります。 コンクリートの材質的には一般的な細骨材を使用した場合と変わらぬ品質を保ちつつ、吹付け時のリバウンド減も実現。結果的には天然資源を節約すると同時にコストの削減、環境負荷低減も実現しました。

坑内・坑外ベルトコンベア

坑内・坑外ベルトコンベア

現在はベルトコンベアが上り線トンネルを貫通し、東坑口からの土を運んでいますが、元来はトンネルのずり出しを目的として30m毎に伸長しました。

坑内LED照明

坑内LED照明

トンネル坑内の照明は台湾企業に特別発注したトンネル専用のLED照明を使用。十分な明るさを確保しつつ、消費電力も5分の1に抑えられ、CO2削減にも貢献しています

 

切畑トンネル東坑口

WIPAS導入で効率的かつ高速なネットワークを

 施工エリアは人里離れた広大な山間部ゆえ、通信状況も整っていない状況で、施工当初は、やむなく工事専用の光ケーブルを設置してこれに無線LAN接続をしていましたが、頻繁に通信トラブルが発生していました。
 そうした中、以前より当社と技術的な交流があったNTTAT様が開発した新しい拠点間高速無線装置、WIPAS(ワイパス)の導入を決定。それ以降は通信トラブルが発生せず、各現場の業務効率は劇的に改善され、多岐にわたるITネットワークが実現できました。
 例えば、サービスエリア造成の70m高盛土のリアルタイム品質管理やトンネル坑内WEB監視カメラの画像を共有。坑内入坑管理システムや車輌運行管理システムの一元管理など施工への迅速な対応や安全管理が可能になりました。
 また、広範囲にわたる施工現場に携わるJV職員の数は限られていますが、この拠点間高速通信ネットワークが構築されたことで、明かり工事範囲も含め、JV職員の情報のやり取りがリアルタイムに行えるようになりました。さらにタブレット使用によリ現場管理が簡素化され、迅速な書類作成が可能となり、現場情報の一元管理による生産性向上へと繋がりました。

振動ローラにGNSSとαシステムを利用した締め固め管理の向上

振動ローラにGNSSとαシステムを利用した締め固め管理の向上

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2つの盛土
工品質管理システム

高さ70mとなる盛土部はマシンガイダンス機能のブルドーザと、GNSSとαシステムを搭載した振動ローラを活用し情報化施工により管理。また事務所と現場間に拠点間高速通信ネットワークを構築し、データのリアルタイム管理を行いました。

現場でのタブレット使用状況

現場でのタブレット使用状況

タブレット、電子黒板による現場管理

タブレット、電子黒板による
現場管理

タイムラグが生じていた現場試験と試験データの整理・確認作業を、タブレットとクラウドで、またスマートフォンと電子黒板アプリを導入し、坑内にて書類を完成することで、職員の残業時間削減が実現できました。

坑内入坑管理システム

坑内入坑管理システム

スマートフォンやICカードにより入坑管理を行うことで、職員がどこにいても位置管理が可能。また各自が所有する端末からも、入坑者の位置情報が把握でき施工中の安全を確保します。中央制御室でリアルタイムに確認されます。

 

切畑作業所 工事係 田中 ひかる

切畑作業所 工事係
田中 ひかる

土木の仕事は向き不向きがあると思います。それは女性、男性に関わりなく、言うべきことをしっかり言えるか否かです。新人時代も同じで、分からないことがあれば遠慮せずにしつこいくらいに聞く。そして仕事を任されるようになったら、相手の顔色を窺って言葉を仕舞い込まず、言葉を選びつつもはっきり言う。それが大事です。

切畑作業所 工事係 難波 辰弥

切畑作業所 工事係
難波 辰弥

多くの人が知恵と力を合わせてひとつのものを造り上げる。そこに仕事の醍醐味を感じています。この現場の1年目、下部工の一員として携わり、足場が取れて徐々に橋が完成していくのを見て感動しましたが、その気持ちは今も変わりません。私たちが造っているはこの先何十年先まで残っていくもの。それが土木の魅力です。

 

IT施工の先駆けとして

森 英治

切畑作業所
統括所長
森 英治

 ITをはじめとした異なる業界の人たちとのネットワーク。土木の現場に身を置く若い人たちは、それが新しいチャレンジをしようと思った時に手助けしてくれる財産になります。
 またこれからは、広域の土木現場においては「高度情報化施工」が欠かせないものとなっていくと私は思っています。
 様々なIT技術を上手に活用して現場を可視化できるような仕組みをつくれば、若い職員が多い現場でも、業務の効率化や安全面の担保は行えるはず。この現場がその先駆けとなればと思っています。多岐にわたるITネットワークが実現できました。

 

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