大槌町町方地区
震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務#2

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■悲願だった町方地区の一刻も早い復旧

 平成23年から岩手県大槌町で始まった町方地区震災復興事業に、前田建設を主体とする大槌町町方地区震災復興事業共同企業体が設計施工CMR(コンストラクションマネージャー)として参入しています。
町方地区における整地工事や区画整理事業、防災集団移転促進事業や災害公営住宅整備事業さらに、津波復興拠点整備事業、そして大ケ口源水大橋整備工事や道路付替え工事(一部橋梁含む)も八割方は工事を終え、平成29年12月末にはその全てが完了する見通しです。
 大槌町の行政機能を司る町役場やJR山田線大槌駅などの主要公共施設が所在する中心地町方地区の、いち早い復旧と再興は、住民の方々の悲願ともなっていました。

 

■軟弱地盤をプレロード工法で安定させる

 町方地区の土地区画整理事業については、一次造成の「整地工事」と二次造成の「宅地整備工事」の2つに分かれ、一次造成で整地を行い、二次造成でその上に宅地を整備します。
ただしこの地区は、軟弱地盤であることからプレロード工法を用いて沈下対策と基礎地盤の支持力不足に対する安定を図りました。
もう1つの特徴は、周辺の造成地から搬入したまさ土とトンネル工事等で出た岩ズリとをブレンドした混合土の使用です。
粒度調整を行い、安定した盛土施工を実現しています。これはフィルダムなどでも用いられる手法です。こうして整地された地盤に道路や宅地の区画を整備して、下水、水道、側溝を入れて舗装を行う。これが町方地区での整備工事となります。
 寺野地区の防災集団移転促進事業も基本的には町方地区で行っている宅地整備工事とほぼ同様の手順です。ただし寺野地区は軟弱地盤ではないためプレロード工法を行う必要がありません。ただこの地区は非常に地下水が多く、下水道の施工時時にはより慎重な施工が求められました。

 

寺野地区進捗状況

寺野地区進捗状況

寺野地区で行われている宅地整備工事は、一工区、二工区が完了し災害公営住宅が建ち並び、現在は三工区工事が進捗しており、今年の12月末までには整備が完了予定です。

まちびらき式

まちびらき式

大槌町の各地区や橋梁の開通など、その竣工を祝い、それぞれで式典が開かれます。町の古くからの虎舞や獅子踊りなども演じられます。これも町の復興が着々と進む喜ばしい風景です。

 

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■新しい道路と新しい橋で町と町を結ぶ

 大ケ口地区では道路の付替え工事を行っています。ここにはもともと町道が山裾を通っていましたが、道幅も狭く、日中ほとんど日の照らない場所にあったため、冬になると凍結して事故が起きやすい町道でした。それを解消するためまっすぐな道路を整備しています。
 さらにこの地区では源水大橋を施工。この地区は大槌川を挟んで町方地区と源水地区に分かれており、近くに橋がなかったため住民の方々は両地区の行き来に不便を感じていたといいます。

 

■すべての職員が一体となって復興を支援する

 調査、測量、設計といった段階から、CMRとしての役割を担う我々共同企業体がお手伝いをする。ここがこの事業の最大の特徴です。
それと共に、この現場は復興支援事業という性質上、可及的速やかに動かなくてはならない。そこで採用されたのが「ファストトラック方式」です。これは、設計後、直ちに施工に移るというスピードを重視した方法で、調査、測量、設計、施工すべてを一体的に行わなくてはなりません。
当然そこには、住民の方々との合意形成が前提となり、あくまでも「住民主体」の事業運営であることも忘れてはなりません。
 これを実現するためには、職員一人ひとりが主体的に仕事に取組むことが必要です。
 あらゆることがレアケースともいえる状況の中で、CMRとしての役割を全うしてきた前田の職員たち。その役割も間もなく終わります。

 

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混合盛土の品質管理

混合盛土の品質管理

盛土は盛った状態で必要な強度を確保することを目的として下記基準にて管理。●締め固め度=87%以上●地盤支持力=30kN/m2以上●材料管理=最大粒径・粒度・分布●土質試験結果からブレンド比率は、 岩ズリ:まさ土=5:5(現在は6:4に変更)

オープンブック

オープンブック

CM方式の導入により、工事費の透明性を図る上でオープンブック方式を採用。請求書・領収書など、費用の動きが分かるあらゆる文書を全て収め、ひと月で2冊のファイルにも及びます。

感謝状

感謝状

沢山地区と源水地区を隔てていた大槌川による不便さを解消するために、震災復興整備事業の一環として源水大橋を架橋。UR都市整備機構より共同企業体に感謝状が贈られました。

 

 

大槌町町方地区震災復興事業共同企業体原価開示グループ 岡市拓人

大槌町町方地区震災復興事業共同企業体 原価開示グループ
岡市拓人

震災当時、私は海外に留学していました。海外で震災の様子をニュースで見て、被災地のために何かできることはないかと考えました。そこで震災復興に携わっている会社を探して前田建設に入社しました。今の仕事は入社前に考えていたことなので責任感もやりがいも感じています。被災地の方々のためにも、一日でも早い復興に貢献していきたいです。

大槌町町方地区震災復興事業共同企業体 原価開示グループ チームリーダー 赤﨑 博行

大槌町町方地区震災復興事業共同企業体 原価開示グループ チームリーダー
赤﨑 博行

工事の執行予算決め、専門業者さんを決める時の入札業務などが主な仕事になります。今回はオープンブックが導入されており、予算決めをする場合は慎重にならざるを得ません。具体的な形に現れにくい作業を、どう計上すれば予算化できるかがポイントです。

 

権限と責任をキーワードとして

福田 健人

大槌町町方地区震災復興事業共同企業体
統括所長

信田 潤一

 ここにいる前田職員は、全国から集まってきた人たちです。当然ながらそれまでの経験も違えばバックグラウンドも違います。そんな職員をひとつにまとめていくためには、まず、トップが明確な方針を打ちたてて、その軸をぶらさないこと。そして何より肝心なのは、一人ひとりが主体的に仕事に取り組む意識を持てる環境づくりが肝心です。
 そのため私がやったのは「権限と責任」を与えることです。大槌町の復興支援業務は多種にわたる大きな現場です。そのためには一人ひとりが主体性を持って仕事に取り組まなくてはなりません。だからこそモチベーションを持てるような環境づくりが不可欠なのです。
ひいてはそれが「信頼される企業体」ともなり、この復興支援業務を速やかにかつ安全に遂行し、優れた品質の提供にもつながるはずです。
 住民の皆さんの思いをかなえ、心から喜んでいただけるまちづくりができるよう、最後まで気を引き締めて臨みたいと思います。   

 

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