施設整備事業の内導水施設
国庫補助事業
豊平川水道水源水質保全
導水路新設工事その1#2

TOP Report#1 Report#2 Construction REPORT 58

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5.1㎞のシールドを1日平均7mのピッチで掘り進む

 札幌市の中心地から南に約18㎞の札幌市南区白川地区では、札幌市水道局による「豊平川水道水源水質保全事業」の一環として、全長約5.1㎞のシールドトンネル(導水管トンネル)の施工が進んでいます。
 シールドトンネルの施工区間は概ね山岳地帯で、最大土被が約350m。豊平川下流域から掘り進め、上流域から掘進してきたシールドトンネルと地中接合させる正確かつ高度な技術が要求される工事です。
 今回採用しているシールドマシンは「開放型(岩盤対応機)」で、ズリをシールド坑内へ取り込み、ズリ鋼車に乗せて坑口ヤードまで運搬。1m前進する毎に、エレクターによって1m幅のセグメントを組み立てます。
 セグメントは5つのピースを接合して1つのリングをつくり、それをつなぎ合わせて構築。リング同士はクイックジョイント。ピース同士はスライドコッタージョイントでの工法を用いてセグメントを構築しています。
 単純計算で、この作業を5000回以上繰り返すわけですが、1日の進捗は平均で7、8m。最も進んだ時では、昼夜施工で17、18m。現在の延長は約2.1㎞と、間もなく中間点に達します。

発進坑口ヤード屋内

発進坑口ヤード屋内

インクラインで上昇した発進坑口ヤードの屋内では、施工前のセグメント保管やズリ処理設備、バッテリー機関車などシールド施工用設備が効率的に配置されている。

カーテンウォール ガラス取付状況

 

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効率と現場環境2つの課題を技術と知恵で解消

 シールドマシンの基本性能は、岩盤を削るカッタービットが15個、ズリを取り込むスクレーパービットが32個。ただし、今回は地山が硬いということもあり、ビットを大きなものに付け替えて掘進能力を向上させました。これにより、当初は、全工程で13、14回ビット交換が必要だったところを4回に削減。また、ビットを回転させるモーターの性能を上げるなどして、効率的に工事が進められるよう改良しています。
 シールドマシン後方には、集塵機やマシンの運転台、油圧電気のオイルタンク、それを稼働させるパワーユニット、冷却設備、さらにはシールドマシンとセグメントの間にできる隙間を埋める裏込剤注入設備など、18もの後続台車(約100m)が一列に続きます。
 また、同じ台車レールの上を、1m分のズリを乗せた7輌編成のバッテリー機関車を走らせて坑口まで運搬するなど、2.2m径という人一人が立つのがやっとのスペースであることに加えて、5.1㎞という長距離トンネルであるという現場環境内で、大規模トンネルと変わらぬ設備を稼働させるための技術と知恵が集約されています。

掘削土砂(ズリ)運搬

掘削土砂(ズリ)運搬

切羽からのズリ運搬は、掘削が1m進むごとに7輌(1輌あたり1.5m3)のズリ鋼車に乗せ、バッテリー機関車によって運搬。坑口まで運び出されたズリは、坑口ヤード内に設けられた土砂ピットに収められ、そこから10tダンプに積載。インクラインによって地上に下ろされます。

掘削土砂の検査

掘削土砂の検査

掘削土砂の土質・岩質検査は第三者機関によって行われます。法律的には400㎥\m3ごとの検査義務であるところ、80m3ごとに検査を行い、有害物質の値が超えればセメントリサイクルに、検査をクリアすれば通常残土として処分されます。

 

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積載荷重30t注目を集める大型インクライン

 今回の工事の特長は、5m×11m(実際には手すりを倒して11mプラスαの横幅を有する仕様に改良)の広さを持つ大型インクラインです。
 インクラインは、山を伐採した斜面に階段状のコンクリート基礎を設け設置。上部の基礎は斜面傾斜の都合上フラットな基礎をつくることができなかったため、右と左とで基礎の位置や高さが異なっています。
 この巨大なインクラインは、最大積載荷重が30t、走行速度が1分間で約40m、坑口までの約120mを片道3分半ほどで昇降します。このようなインクラインを利用したシールド工事は日本国内でも珍しく、注目を集めています。
 最大積載荷重30tを確保した背景には、発進ヤードで最も使い勝手が良い25tラフタークレーンの運搬が可能か否かによるもの。実際は、ラフタークレーンを運搬するにあたって、数値上では積載荷重をクリアしているものの、重機スケールの問題等があり分解して運搬することとなりました。
 また、施工の要であるシールドマシンは3分割にして運搬し、坑口ヤードで組み立てました。 インクライン自体は仮設の構造物ですが、前田建設の施工が終わった後は、浄水場までの継続工事の足掛かりとして、札幌市水道局に引き渡すことになっています。

ITツールを活用し安全な現場を実現

ITツールを活用し安全な現場を実現

ITツールを活用し安全な現場を実現

現場は、掘削が進むにつれ、約5kmという長距離となるため、ITツールを活用し、安全の可視化と作業の効率化を実現させています。

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現場見学会

現場見学会

札幌市で最大規模の工事であるため、多くの現場見学者が訪れます。現在までに1,000人以上の見学者が訪れました。

 

豊平川シールド作業所 土木係武田 圭介

豊平川シールド作業所 土木係
武田 圭介

入社2年目。ここが最初の現場です。仕事は測量と測量をもとにした次の掘進の指示書を作成、水質管理や材料の発注など多岐にわたります。最初の1年間は仕事の内容を理解することだけで精いっぱいで教わることばかりでしたが、最近ようやく主体的に仕事に取り組むことができるようになってきました。

豊平川シールド作業所 副所長川端 章史

豊平川シールド作業所 副所長
川端 章史

十分な通路も確保できない狭いトンネルの中で、いかに効率よく安全に作業するかが、この現場の最大の課題です。特に安全については個々人の意識とルールの厳守を徹底しています。トンネルの中を列車が行き来したり、切羽から土砂を運ぶベルトコンベアがすぐ目の前で回っているという仕事環境においては、慎重になり過ぎるということはありません。

 

工事を進めながら臨機応変に

福田 健人

豊平川シールド作業所
所長

引田 猛年

 規模の大小を問わず、シールドトンネル工事は、設備や施工手段は同じです。したがって、この工事のように人ひとりが立つのが精いっぱいという限られたスペースの中では、それ相応に設備の配置や運搬を工夫しなくてはなりません。
 当然ながら、計画段階である程度の予定は立てられますが、実際には、工事を進めながら実情にあわせて計画変更を行い進めてきました。限られたスペースを最大限に有効利用するために大切になるのが、現場の基本ともいえる整理整頓です。
 また、現在の敷地は振動騒音規制の対象区域外ではありますが、周辺環境を考えて音に対する配慮を行いました。こうした大規模工事は、地域住民の理解なしにはスムーズに進みません。またこの先、前田建設の工事が終わった後も、引き続き同じ場所で工事が続くため、最初の段階で配慮を怠らず、次の工事に上手に橋渡しができるよう心がけています。

 

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