平成26年度債務負担行為工事
ダム整備事業
最上小国川流水型ダム堤体工事#2

TOP Report#1 Report#2 Construction REPORT 59

<写真>

5.1㎞のシールドを1日平均7mのピッチで掘り進む

 国交省系のダムで日本で5例目となる治水専用の流水型ダム『最上小国川流水型ダム』が前田JVにより建設されています。堤体積は約40,000㎥、堤高41m、堤頂長143m、重力式コンクリートダムとして2019年6月30日の竣工を目指します。
 流水型ダムは、洪水対策として被害の軽減のみを目的としたもので、利水ダムのように、発電、農業用水や灌漑用水に用いる機能は有しません。
 また、最上小国川の下流域に生息する鮎の成育・生態に対して、影響の小さいダムとなっています。
 ダムの堤体建設に先立つ転流工では、従来の川の流れを迂回させるトンネルを設け、水を下流に導くことでドライエリアを確保。現在はダム本体の施工が行われています。
 構造面での特徴は、常用洪水吐(幅1.7m×高さ1.6m)を河川の流水部分に2つ設け、構造物を全て河床に設けるよう設計されています。ただし、この現場の地形がV字であることから、建設効率の良いダムサイトである一方、狭い河床域に構造物が集中するため、コンクリートの高品質化が要求されます。

県道迂回路工事

県道迂回路工事

堤体建設における端部処理工事のための工事用道路の造成を行うとともに、近くの県道は付替工事を行い迂回路を設置することで、一般車両のスムーズな交通を確保しています。

転流工

転流工

ダム堤体建設のために必要な転流は2016/4月に開始。その後、河川の転流を維持しながら、順調に堤体建設が進んでいます。

 

<写真>

効率と現場環境2つの課題を技術と知恵で解消

 ダム建設に相応しい高品質のコンクリートを製造するには、骨材の選定とその管理が重要です。この現場で使用するのは購入骨材ですが、購入先の協力会社が骨材を採掘している地山に出向き、原石の選定を行うなど、業者任せにはせず、原料の段階から厳密な管理を行っています。
 厳選されて運び込まれた骨材の貯蔵庫では、夏場には遮光ネットを用いて空間温度の上昇を抑え、更に、スプリンクラーで7℃の水を散水。かたや、外気温が下がる冬場には、温水を散布して骨材の温度管理を徹底しています。
 また、高品質化を実現させるためには、練り上がったコンクリートを滞りなくダムの打設場所に安定供給できることが前提となります。それを実現させているのが、コンクリートバケットの改良です。改良型の3㎥水平バケットを用いることで、使用ダンプをハイダンプに改良しなくても、一般的な10tダンプでコンクリートの運搬が行えます。仮にダンプにトラブルがあったとしても新たなダンプを調達すれば、時を置かずして安定的なコンクリート供給を行うことが可能。コスト削減にもつながります。 常用洪水吐の蓋となる部分(天井部)には、当社開発の高耐久性理設型枠「SEEDフォーム」を採用し、施工性・安全性の向上と構造物の高耐久性を確保。当初設計には謳われていない技術の改良や選択を行い、より堅牢で高品質のダム施工を目指しています。

骨材貯蔵庫

骨材貯蔵庫

高品質保持のためにスプリンクラーや遮光ネットを設置している骨材貯蔵庫。骨材はその大きさに分類して貯蔵。ダムサイトに近く、スムーズな施工を可能にしています。

高施工性バケットの採用

高施工性バケットの採用

昼夜を問わず、コンクリート打設が進む現場では、打設施工性を高めるために、改良型3m3コンクリートバケットを採用し、ダンプから直接コンクリートを投入しています。

 

<写真>

積載荷重30t注目を集める大型インクライン

 この現場では、地域の方々に対し、環境配慮型ダムの施工であるとご理解いただくための取り組みにも注力しています。
 例えば、前田建設独自の環境技術である「アクアフィルターシステム」を導入しています。
 ダム建設では濁水処理施設が必ず併設されますが、一般的な濁水処理設備では大型になるため作業現場を圧迫してしまいます。それをコンパクト化し、更に処理水質の向上が期待できるのがこの技術です。
 水中に分散している懸濁物質や浮遊物質の単位はSS数値で表され、山形県が示すSS数値は25mg/L以下となっていますが、アクアフィルターシステムで処理することでその数値を20mg/L以下にでき、さらに下回ることが可能となります。このような環境貢献数値も対外的に公表することにより、漁協・地域の方々からも工事の安全性に対する信頼を頂いています。
 また、前田JVは最上町および舟形町と災害協定を結んでいます。
 この災害協定は前田JVからの提案の1つで、両町での災害時には速やかに災害支援を行うというもの。このような地道な地域貢献こそが、ここでの工事をスムーズに進める上で非常に大きな要因になっていることは間違いありません。

<写真>

仮設盛土への環境配慮

仮設盛土への環境配慮

仮設盛土への環境配慮

施工途中に発生する仮設盛土の法面には、土砂流出防止や粉じん抑制、また雨水濁水抑制対策として、中性改質材(フライネットR)を添加した仮吹付工を採用しました。

近隣住民との積極的な交流

近隣住民との積極的な交流

近隣住民との積極的な交流

近隣住民との積極的な交流

地元の祭事や現場見学会など、様々な交流会を通して、環境配慮型ダム建設への理解を進めています。

 

最上小国川流水型ダム作業所 土木係 鈴木 創太

最上小国川流水型ダム作業所 土木係
鈴木 創太

大学の土木工学科を卒業して入社2年目です。測量と施工の進捗管理を行っています。1年目は分からないことも多かったですが、今は資材の搬入計画を立てたり、自分が直接手を動かすのではなく、作業員へ指示を出す立場になりました。責任感がより一層強くなり、難しいなりに手応えも感じています。

最上小国川流水型ダム作業所 工事課長中野 孝威

最上小国川流水型ダム作業所 工事課長
中野 孝威

私は学生の頃から日本全国のダムをめぐる、いわゆる“ダムマニア”でしたので、就職時の面接もダム現場を志望したほどです。ダムの建設技術には、構造や水理、地質、環境など幅広い知識が必要で、土木技術の最たるものと思えます。また、ダムにはトンネルや道路、橋梁などの建設技術の要素もあり、そこにもやり甲斐と誇りを感じています。

 

ダム技術を学んで欲しい

桑野 陵一

最上小国川流水型ダム作業所
所長

桑野 陵一

 私自身、ダム現場はここで8箇所目になります。
 近年はダム建設自体が減少傾向にあり、若い人たちにダムならではの施工技術を伝承する機会も減りつつあります。この現場に携わっている前田職員及び関連会社の皆さんには、基本的なダムづくり技術をしっかりと学んでいただき、次の現場で活かし、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。
 工事の進捗自体は、私の中では大きな山は越えていると思っています。
 これからも品質を堅持しつつ、なおかつ、事故なく工事を終えられるよう心配りと目配りを心がけます。

 

line

 

■前のページへ