ストーンカッターズ斜張橋工事#3

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中央径間1,018m。空中に鋼桁を伸ばし、主塔からケーブルを張って行く
鋼桁セグメント

 斜張橋は、やじろべえのように左右のバランスをとりながら、主塔から伸びるケーブルで橋桁を吊る構造である。「ストーンカッターズ橋」は主塔の左右がアンバランスで、台風などの風の影響を受けやすいことから、側径間の橋桁を先に造り、中央径間に桁を張り出す工法が採用された。
 主桁は、片側3車線、幅53.3mの道路用の平行な桁を主塔の両側に配置する。軽量化を図るために、上り車線と下り車線との間を空けている。
 中央径間と側径間の一部をなす鋼桁は、中国本土の工場で、65ブロックのセグメントに分けて製作される。現場に届いたセグメントは、全体の形状と計算値とを照合し、ケーブルが正しく入るかどうかなどを詳細にチェックする。さらに、測量データを確認し、問題があればJVのコンサルタント会社に提出する。
 鋼桁セグメントは、前田JVと発注者側コンサルタントとの相方が厳しく確認し、品質を確保したうえで施工している。
 鋼側径間部の施工には「ヘビーリフト工法」を採用した。この工法は、まず主塔の両側の地上で、7つのセグメントを溶接して結合し、長さ88m、重量2,000tのセグメントデッキを2基造る。主塔の高さ100mの位置に16基の330tストランドジャッキと4基の220tストランドジャッキを設置し、セグメントデッキ2基を同時に吊り上げて設置するというものである。
 「ヘビーリフト工法」は、セグメントを支保工の上で結合する工法と比べ、大幅に仮設鋼材を削減し、高所作業を削減できる、経済性・安全性に富んだ工法である。
 中央径間の鋼桁セグメントは、1基の重量約600t。これを「鋼桁搬送バージ船」に載せて所定の位置まで海上輸送し、鋼桁の上に設置された「鋼桁吊り上げ架台」で吊り上げ、バランスをとりながら所定の位置に固定し、主塔から伸ばしたケーブルで吊り、既設のセグメントとの接合部を溶接する。この一連の作業が手際よく進んでいる。
 この現場では、溶接工の養成期間を、通常の2倍にあたる6カ月間確保した。この準備期間が鋼桁の品質確保と工期厳守のために有効であることは、順調な工事が証明している。

〈 ヘビーリフト工法のメリット 〉
1.セグメントを支保工の上で結合する工法に比べ、大幅に仮設鋼材を削減できる
2.高所作業を削減し、安全を確保できる
3.作業効率が高く、経済性が高い

ケーブル

 斜材ケーブルは、1面28本、合計224本を主塔上部からファン型に張る。1本のケーブルは7mmの素線を最大499本束ねてつくられ、最大断面は直径192mm、最長ケーブルは540mに及ぶ。
 ケーブルには、PWS工法を採用した。この工法は、ケーブルを工場で製造し、現場で架設するというものだ。上海の工場で、あらかじめワイヤー素線を束ねたストランドをつくり、リールに巻いて現場に輸送し、鋼桁上で引き出し架設する。PWS工法には、ケーブルの品質を安定させ、架設工期を短縮するという利点がある。

主塔の手前で繋がる
コンクリート桁と鋼桁

ストーンカッターズ橋作業所
Head of Construction
(工事部門統括責任者)

K.L.Leung

この現場の特徴は4つあります。まず、電気、機械、設備など幅広い分野の人材を集めました。次に「高さ」対策としては安全を第一に考え、高い場所でも地上と同じように作業ができるよう、しっかりとした足場をつくり、手すりを付け、ネットを張って、安心して作業に専念してもらえるよう工夫しました。世界中から資材を調達するという、購買の難しさもありました。また、初めて香港で仕事をする日本人にはインターナショナル・スタンダードを理解してもらえるよう働きかけ、中国の鋼桁を造る工場や現場の作業員には溶接技術を教えて習得してもらいました。

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