北海道新幹線飯田高架橋工事#2

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405本の杭を打ち、高架を支える

 前田JVは、北海道新幹線新青森起点145km454m~147km360m間、延長1906mの飯田高架橋工区を、2009年に受注し、2010年3月に着工。新函館(仮称)方を西工区、新青森方を東工区とし、2工区に分けて施工している。
 工事に先駆けて、東工区には工事用道路とクレーン用工事用道路(農地を一時転用)を、西工区には工事用道路を配置。ダンプトラックでの資材などの搬入・搬出と、クレーンでの揚重やコンクリートの打設を同時に進めて、工期短縮を目指した。
 基礎杭は、深さ約14mの場所打ちコンクリート杭405本を打設し、地盤の支持力で高架橋を支えている。軟弱地盤層など通常の床掘が困難な箇所は、土留工を設置したあと、その中の土を掘削して、ラーメン高架橋の基礎には地中梁を、PC桁橋には橋脚基礎を施工した。
 基礎工事中は濁水処理プラントを設置し、汚濁水を処理して河川に放流。またダンプトラックのタイヤ洗浄装置を設置するなど、環境に配慮して施工した。

ラーメン高架橋の柱342本、橋脚8基を構築

 ラーメン高架橋の柱342本の施工には、10~25回の転用が可能な高性能合板を使用したユニット式型枠システムを採用し、省力化・効率化を実現。また、施工の際はアクリル板の型枠を使用して、コンクリートの変化を観察し、混和剤と打設の際に使用するバイブレーターの種類とそのかけ方に工夫をして、高品質を確保した。
 一方、橋脚8基は在来工法で施工した。
 下部工の柱の施工のあと、上部工スラブを施工するために、1つの問題を解決しなければならなかった。それは、地下水位が高く軟弱地盤なので、上部工のスラブ1カ所に400~450m3のコンクリートを打設すると、型枠支保工が沈下して不具合が生じる可能性があることだ。この問題を解決するために発注者様と協議した結果、柱と橋脚を施工した後の埋め戻しに、隣接する車両基地工事で使用された良質土を流用。これにより、不具合を回避した。

ラーメン高架橋29連、PC桁橋1連、調整桁36連で構成

 29連のラーメン高架橋それぞれの長さは、高架橋下の道路や水路の状況に応じて30~60mあり、ここでは柱を施工し、埋め戻したあと、支保工を建て込み、上部工スラブの型枠、鉄筋、コンクリート打設の順で施工している。
 また、工区のほぼ中央に位置する町道本町16号線を跨ぐ箇所には、スパンを飛ばすためにPC(プレストレスト・コンクリート)下路桁橋を施工。コンクリート桁を現場で打設したあと、PC鋼線を緊張し、施工した。そして、ラーメン高架橋やPC桁の隙間を、長さ10~15m の調整桁36連でつなぎ、連続した1本のスラブを構築している。
 このあと、路盤と防音壁の施工、高架橋の雨水排水路の構築、工事用道路の復旧までを、2012年12月に完了させる予定だ。工期は2013年2月ですが、雪が降ると検査ができないので完成を早めている。
 本工事には高さ5~8mの高所作業を伴うので、作業床の整備や安全帯の完全使用などの墜落防止を徹底し、作業員一人ひとりの安全意識を高めている。
 北海道新幹線に求められている100年の耐久性を満たし、次世代に誇れる構造物を完成させるために、着実に工事を進めている。

場所打ち杭工事

場所打ち杭は、構造物を地盤の支持力によって安全に支えるためのもの。ハンマーグラブで土砂を掘削し、そこに鉄筋かごを設置して、コンクリートを流し込む。

地中梁コンクリート打設完了

この梁は地中に隠れて見えなくなるが、100年にわたり新幹線をしっかり支えるために、強度を確保している。このあとの埋め戻しには隣接する車両基地工事の良質土を流用した。

柱型枠設置

柱の太さは0.9m・1m・1.1mの3種類、高さは約7~10m。大型の柱342本を施工するために、ユニット式の型枠を採用。強度確保のために型枠内部に使用するセパレータが不要で、施工性が高く、仕上がりも美しく、10~25回の転用が可能。

冬期の施工状況

冬の気温は氷点下になるが、工事を続けなければ工期を守れない。そこで、コンクリートを打設したあと、エアキャップシートを巻いてブルーシートで覆い、ヒーターを焚いて保温し、コンクリート内部を15℃に保って養生した。

上層梁鉄筋組立状況

上部工のスラブに大量の鉄筋を配して強度を確保している。このあと、床版鉄筋型枠組立、床版コンクリート打設という手順で施工する。

調整桁(T桁)橋の施工状況

ラーメン高架橋の連と連との隙間には、調整桁(T桁)橋を在来工法で施工して、1本の高架橋に仕上げている。

太陽光発電定点カメラ

足場上部に新函館(仮称)方面に向けてカメラを設置。パソコンや携帯電話で、いつでも施工状況を確認できるシステムを構築した。

濁水処理プラント

基礎工事の際、現場に濁水処理プラントを設置し、工事で発生した水をすべて処理して周辺の環境を守った。

現場見学会

地元の小学生のための見学会を開催。工事の説明に熱心に耳を傾ける姿から、期待の高さが伝わってきた。

新幹線飯田作業所
土木係

松野 淳也

2009年入社 神奈川県出身

大きなものを造りたいと思い入社し、東北支店で2カ月間の研修を受けたあと、占冠トンネル工事を経てこの現場に赴任。先輩から指導を受けながら測量や出来高検査などに取り組んでいます。今の課題はスムーズに立会いをまわすこと。そのために、まず鉄筋の被りに狂いがないようチェックし、コンクリート打設の際は継ぎ目が目立たないよう気をつけています。気候の変化に対応し、特に氷点下の場合は地元の作業員からの情報を参考にして、注意深くコンクリートを養生しました。また、しっかり図面をチェックして、作業員からの質問に的確に答えるようにしています。安全面では、高所作業が多いので足場の安全確保などに注意することも私の仕事です。トンネル工事では外からは坑口しか見えませんが、高架橋は毎日の進捗状況を見ることができるので楽しみです。実際に現場に出て、学生時代に思っていたより細かい作業が多いことに驚きましたが、ものができたときは想像以上にうれしいですよ。

新幹線飯田作業所

山内 章寛

2008年入社 岐阜県出身

子どものころから土木工事を見て「ああいう仕事をしたい」と思い、土木を専攻。入社後、NATMトンネル工事で発破と機械を担当し、坑口付けから始まり、工事が進み切羽がどんどん遠くなることにやりがいを感じました。この現場ではコンクリート打設や高架橋・調整桁・PC橋を担当。現在はこの工区で唯一のPC橋梁を施工中です。私はPC橋の施工は初めてなので、協力会社とともに管理の仕方を研究しています。PC鋼材の緊張と伸びを測定したグラフを見て正常か異常かを判断することが難しいのですが、文献から得た知識を実務に活かし判断力を高めたことで、上手く施工ができました。コンクリート打設とPC鋼材の緊張が終わり、支保工を解体してPC橋が姿を現したとき、隣接工区の方から「うまくできたね」と声をかけてもらいました。この工区は進捗が一番早いので、工事のスタンダードを作っていることを実感し、工期にも仕上がりにも自信を持てるものを造りたいと思っています。

新幹線飯田作業所
工事課長

杉本 治暁

1994年入社 北海道出身

山手線大崎駅ホーム改良工事、中央線の高架化工事などの鉄道工事に携わり、2010年4月にこの現場に赴任。監理技術者として工程作成管理や施工管理全般を担当しています。ほぼ一斉に複数の工区が発注されたことにより、作業員や資材の不足が心配されました。しかし、この工区は一番早く工事を進めたため早めに人員や材料を手配できました。北海道の冬は寒さが厳しいのですが、工期を守るために施工しています。外気は氷点下でもコンクリート内部は15℃を保てるよう、コンクリートを打設したあとエアキャップシートとシートで覆い、ヒーターを焚いて保温し養生します。また、橋脚にはL字型ユニット式型枠を採用してスピーディに型枠を組み立て、コンクリート打設の際はL字型ユニット型枠にアクリル板を貼ってコンクリート内部の状況を把握し、技術研究所からのアドバイスも受けて施工に工夫をし、高品質を確保しました。私は北海道出身なので、このビッグプロジェクトに携われたことを家族も喜んでいます。

新幹線飯田作業所
副所長

三橋秀世

1990年入社 北海道出身

入社以来、山岳土木を主として八汐ダム、新東名高速道路、占冠トンネル等の工事を経て、この現場に赴任。副所長として工事全般を統括し、発注者との折衝や設計変更業務、渉外業務を主として行っています。関係機関でもある、七飯町、北斗市には毎月工事進捗状況の説明を行い円滑に工事が進むよう努めています。工事着手前に地権者と交渉し約2万m2の農地一時転用申請を行い借用し、工事用道路や施工ヤードに使用出来た事が工期短縮に繋がったと思います。地元の方への対応としては、田植えや収穫などの農繁期には、農作業を妨げずに車両が通行できるように工程を調整。施工面では原価低減、効率よく施工する為に資材の流用計画を作業所全体で考えています。安全面に関しても5~8mの高所作業を伴うので作業員の安全意識の高揚に努めています。子供の頃からの夢である、北海道新幹線の工事に従事する事ができ、地元が活性化し、多くの皆様に喜んで頂ける事が最高の喜びです。

新幹線飯田高架橋作業所

所長

向地 浩一

チームワークを大切にして、100年使える高架橋を建設しています。

 現場で一番大事にしていることはチームワークです。職員も作業員も一人ひとりを認め合い、全員が同じ気持ちで協力し、同じ歩みをすることを大切にしています。
 また、仕事の流れを把握して整理整頓を心がけ、作業効率の向上から品質管理まで、すべてに良い結果を残すよう指導しています。
 北海道新幹線というビッグプロジェクトに参加していることに喜びを感じながら、高い意識を持って明るく仕事に取り組み、誇りの持てる高架橋を造り上げるよう努めています。

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