国道45号 新鍬台トンネル工事#1

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復興道路が培う地元雇用の促進と産業の活性化。吉浜ICから釜石JCTまでを結ぶ約14㎞の吉浜釜石道路で、総延長3,300mの新鍬台トンネルの施工が進んでいます。

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■復興道路にトンネルを通す

 現在、大船渡~釜石間を車で往来するには現国道45号の「鍬台トンネル」を抜けるルートが主流です。しかし、トンネルまでの峠が急峻であることから冬場の道路凍結事故などにつながりやすく、兼ねてより問題視されてきました。
 現在施工中の「新鍬台トンネル」は、急峻な鍬台峠を昇ることなく大船渡と釜石をまたぐ山の裾野を通します。延長も3,330mと三陸沿岸道路(復興道路)の中でも最長で、このトンネルが完成すれば、ほぼフラットな状況で峠を抜けることが可能になり、安全にしかも所要時間を大幅に短縮することも可能になります。
 この新鍬台トンネルは、吉浜ICから釜石JCTまでを結ぶ約14㎞の復興道路「吉浜釜石道路」整備事業の一環に位置づけられ、物流の動き方がガラリと変わると想定されています。
 すでに吉浜釜石道路の開通を前提として流通系の企業が進出してきています。そうした好循環の中、難所と言われる峠越えを容易にする新鍬台トンネルの完成は大きな意味があり、雇用の促進や地域産業の活性化などの側面から復興を後押しするものと考えられます。

 

■品質と施工スピードの両立を

 将来、トンネルの覆工コンクリートが劣化して剥落することがあれば第三者被害の原因にもなります。したがって、コンクリートの品質をしっかり担保していただき、丁寧な仕事をしていただくことが発注にあたっての大前提でした。
 そうした中、この新鍬台トンネルは独自の公共生コンプラントを新設し、トンネル工事で使用するコンクリートを自前で製造する方式を採用したので、想定される劣化に耐え得るコンクリートを製造していていただけるようあらゆる品質試験をしていただきました。
 一方で、トンネル施工に時間がかかり過ぎれば、復興道路全体の完成が遅れることにもなります。そのため、前田建設さんには様々なスピード施工技術を投入して施工を進めていただいていますが「、早かろう悪かろう」になっては意味がありません。これからも、品質を絶対条件としたスピード施工をお願いしたいと思います。先ほどの生コンプラントもスピード施工と品質の両立を支えていますが、様々な技術・工夫を施工面、管理面を含めて確実に実行していただいている前田建設さんには感謝しています。

 

■看板トンネルを前田に託す

 本坑と避難坑4つの切羽(掘削面)を同時に進め、1日に行う発破の回数も多いので、安全第一でこれからも作業を進めていただきたいと思います。
 一度事故が起きてしまえばその時点で作業は止まってしまいます。まずは何より安全を担保した上で、これまでと変わりない施工品質を保っていただくことを望みます。
 畑所長には常々「新鍬台トンネルは、復興道路の看板トンネルなので事故を起こさないようにしてくださいね」と申し上げているので大丈夫でしょう。信じています(笑)。

佐藤 和徳氏

国土交通省東北地方整備局
南三陸国道事務所
事務所長

佐藤 和徳氏

※役職は2016年3月時点、現在は
 国土交通省 東北地方整備局
 地方事業評価管理官に就任
 されています。

 

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復興道路・復興支援道路の整備効果

復興道路・復興支援道路の整備効果

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■走行時間の短縮

走行速度の向上や走行経路の短縮により、定時性の確保や走行経費の削減が図られ、 信頼性の高い物流経路・生活基盤が確保されます。

■交通事故の減少

線形不良・隘路区間となっている峠部や、慢性的に混雑する市街地を回避することで、 交通事故の減少や冬期交通の改善が図られます。

■地域間の連携・交流機会の向上

三陸沿岸地域の連携が強化されるとともに、内陸部との交流が促進され、産業、経済、観光等様々な 分野において地域発展への貢献が期待されています。

■津波浸水地域を回避し、災害に強い道路ネットワークの形成

■救急医療施設への搬送時間の短縮

 

本坑構造断面図

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