国道45号 新鍬台トンネル工事#2

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ジャンボによる起点側穿孔状況

高速施工への取り組みで早期復興を後押し

 岩手県大船渡市三陸町から釜石市甲子町にかけた三陸地域復興のリーディングプロジェクト「吉浜釜石道路」の整備。その基幹工事となる『新鍬台トンネル』の施工を前田建設が単独コントラクトで進めています。
 トンネルの延長は3,330m、掘削断面積115㎡、内空断面積95㎡という三陸沿岸道最長の長大トンネルに加えて、3,362mの避難坑も併設。これを、本坑・避難坑ともに起点(大船渡)と終点(釜石)の両側から4つの切羽を同時に掘り進めます。
 吉浜釜石道路の開通により三陸地域の復興は大きく加速することが期待されています。その前提となるのが大船渡から釜石に抜ける新鍬台トンネルの早期完成です。前田建設はこの課題を遂行するため、さまざまな技術と仕組みを投入してNATM発破工法による高速施工と長期耐久性の両立に取り組んでいます。
 掘進ルートは強固な花崗岩層にあり、穿孔、発破、坑内換気、ずり出し、吹付けコンクリート、ロックボルトの各段階で、効率アップが必要となります。それに対し、当社はコンピューター制御の新型ジャンボによる穿孔をはじめ、バルーンを利用した換気、電子雷管・機械装填等による発破、複数の吹付機の同時利用など、スピード施工につながる技術や工夫を惜しみなくつぎ込み、その過程において、月進232.5mという掘進記録を達成しました(2016年2月)。
 また、発破後に発生した残土も、大型ホイルローダーなどを駆使した効率の良い搬出作業により、ずり出し量が倍増。こちらも月間26,736m³という記録を達成しています。これら二つの記録は、国内の大断面山岳トンネル工事において前例のない数字であり、これまで当社が取り組んできたトンネル技術向上の成果と言えるでしょう。もちろん、それを支えたのは金子組をはじめとする協力会社の施工力であることは言うまでもありません。

※トンネルの掘削面

効率の高い発破技術

効率の高い発破技術

硬い花崗岩をより効率的に破砕するため、導火管付電管や電子雷管・機械装填を採用しています。施工のスピードアップとともに、機械装填により手作業の工程が減り、安全にも寄与しています。

 

発破バルーン

発破バルーン

バルーンによる発破退避時間の短縮と換気効率アップ。発破時の飛び石対策と換気の高速化のために採用しています。

 

ホイルローダーでのずり搬出状況

覆工マルチ工法の採用で高品質のトンネル施工を

 高速施工への取り組みのみならず、前田の独自技術を反映させた「覆工マルチ工法」を軸としてトンネルの施工品質向上を図っています。
 覆工マルチ工法は、コンクリートの締固め不足に起因する品質の低下(空洞・ひび割れ・出来映え不良等)を防いで、覆工コンクリートの耐久性の向上(長寿命化)を図るもの。
 その技術ラインナップの中から、新鍬台トンネルでは、センサー付バイブレーターやクラウン部引き抜きバイブレーターからなる高品質覆工締固めシステム、水平打設工法による充填状況の見える化、コンクリート充填圧管理による覆工背面の空隙発生防止と覆工コンクリートの密度アップなどを採用し品質を担保しています。
 さらに、コンクリートのひび割れを防ぐために、打設したコンクリートに風を与えないよう表面封函を施す「フリードーム」を設置して全延長を養生。仕上り面の出来にもこだわっています。

<写真>

<写真>

 

フリードーム

打設したコンクリートのひび割れを起こすメカニズムは表面部分の乾燥が第一の要因として挙げられます。これを回避しコンクリートが持っている水分を逃さぬようフリードームを設置して表面封函養生を行います。

 

終点切羽掘削

掘削データをスウェーデン製ジャンボに入力することで完全自動の掘削施工を行っています。安全かつ省人化を見据えた最新技術です。

 

 

高品質トンネル覆工天端部締固めシステムシステム

安定供給と品質を担保する生コンプラント

 施工スピードと品質を担保するための創意工夫は、自前でのコンクリート生産にまで及んでいます。
 復興に向けた工事が複数箇所で行われている三陸地域では、構造物を施工する上で必要不可欠なコンクリートの安定的な確保が非常に困難な状況にあります。また、塩害や凍害の影響を受けやすいといった地域特性を加味した上で、それらに耐えうる品質(堅牢性)の確保も欠かすことができません。
 こうした課題に対応すべくこの現場では、独自の「公共生コンクリートプラント」を建設。1日最大500m³の生コンが生産可能で、新鍬台トンネルの施工では、およそ50,000m³の使用を見込んでいます。
 また、コンクリートの品質を見極めるために、①アル骨対策、②暫定配合による耐久性、③現場環境の確認、④ひび割れなどの4項目を繰り返し試験して最適な骨材と混和剤を選定。近隣の復興事業で必要となるコンクリートの受給バランスを阻害することなく、安定的な高品質コンクリートの供給を可能にしています。

安定供給と品質を担保する生コンプラント

前方地質探査技術(TSP)

掘削前に事前に地質変化面の広がりや位置を3Dで把握できる前方地質探査技術(TSP)を駆使して適正な掘削パターンを選定。効率的な施工を実現させています

公共生コンクリートプラント

公共生コンクリートプラント

安定供給に向け当社が新設し、製造・出荷等の運営を担っています。稼働式には多くの地域住民のみなさんに参加いただきました。

 

地元の祭り「スネカ」参加

地元の祭り「スネカ」参加

古くから大船渡市三陸町吉浜で行われる慣例祭りの行事「スネカ」の運営を、地元の保存会の皆さまと共にお手伝いさせていただきました。

 

協力会社と足並みを揃えて

畑 宏幸

新鍬台トンネル作業所
所長
畑 宏幸

 高品質のトンネルを、安全に高速施工で完成させることが我々前田建設に課せられた使命です。それを実現させるためには協力会社の力が欠かせません。当工事の施工にあたっては、金子組をはじめとする協力会社各社の全面的なバックアップを得ています。もちろんトンネル掘削の月進距離やずり出しの月間量記録も彼らの力あっての賜物と言えるでしょう。
 これだけ大きなプロジェクトで細部にまで目を行き届かせた管理をするには、協力会社の皆さんと我々が高いレベルで足並みを揃えて作業に臨むことがとても重要になります。それが「前田クオリティ」を創出する源になるのです。彼らとともに「あたりまえのことを、あたりまえのようにやる」なかで、安全を前提とした高品質・高速施工の両立を実現し、東北の復興に寄与するこのトンネルを一日も早く完成させたいと望んでいます。

賀川 昌純

新鍬台トンネル作業所
副所長
賀川 昌純

 

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