No.66

都市計画道路上郷公田線(公田地区)道路建設工事
(仮称)桂町トンネル#2

坑口無導坑掘削開始状況

細心の注意を払う住宅密集地でのトンネル工事

 新設されるのは延長331mの桂町トンネル(仮称)。当社はそのトンネルの工事を請け負っています。形状は、2車線トンネルを並列に構築するいわゆる「めがねトンネル」で、NATM工法で施工しています。
 この工区には、現場周辺に住宅が多い都市部のトンネルであるという特徴があります。トンネル直上は住宅密集地となり、騒音や振動、沈下といった掘削による挙動に細心の注意を払いながら、施工を進めています。
 また、大型重機の搬入や、仮設備の設置が難しいという問題もあります。そのため、掘削した坑内も設備を置く場所として使うなど、ヤードの確保にも工夫を凝らしています。掘削した土砂をストックするずりピットも、通常は外に設置しますが、今回の現場ではトンネル内で対応しています。

坑口施工状況

坑口施工状況

重機コントロール状況

重機コントロール状況

3次元測量とICTマシンコントロール

3次元の写真測量はドローンを使って行います。測量した3次元データはマシンコントロール対応の重機に掘削形状を登録。GPSから位置情報を活用して、正確かつ計画どおりの掘削作業が行えます。

3次元測量盛土施工

3次元測量盛土施工

盛土に関してもドローンで測量したあと現地で確認し、施工形状を決めています。その施工形状を作成した段階で計画断面図にして、トンネルを掘るための解析を実行、盛土の最終調整を行います。

中央導坑方式から無導坑方式へ一部設計を変更

 トンネル工事現場の周辺は、主に3種類の地質から構成されています。1つ目は上総層群の大船層・新鮮部(土丹)。掘りやすく、かつ安定しています。もう1つは上総層群の小柴層・風化岩。上総層群ですが風化岩となっており、柔らかい層です。そして3つ目は洪積世の新期ローム層。最も柔らかく、工事の影響で挙動が大きくなる可能性がある地質です。
 当初は柔らかい地質に対応するため、トンネルはすべて中央導坑方式で掘る予定でした。これはまず小さな中央導坑を掘り、そこに上り線・下り線の中央部分となる支柱を作って、支えながら片側ずつトンネルを掘るという方式です。
 しかし、安定した部分に関しては計画を見直し、無導坑方式に変更しました。つまり、比較的固い地層の部分は無導坑方式(約200mの区間)、柔らかい地層の部分は中央導坑方式を採用するということです。
 一部を無導坑方式に変更した結果、いくつかのメリットが生まれました。まずはコストです。実質的に施工するトンネルが減るので、工事費が下がります。そして工程。途中までは無導坑方式となったため、中央導坑の掘削後、中央支柱の完成を待つ必要がなくなり、約11カ月の工期短縮となりました。さらに、狭い中央導坑での作業が減ったことで、安全面でもメリットが発生しました。また、中央導坑は最終的には撤去するため産業廃棄物も発生しますが、短くなったので産業廃棄物の量も減少します。環境面でもメリットが生まれています。
 なお、住宅地が近いということもあり、柔らかい地層の部分では、補助工法として天端から長尺鋼管を打設後、薬液注入で、天端部の改良をしながら施工を進めています。切羽部分から鏡ボルトを打設し、薬液を注入して亀裂などの空隙をなくすなどの改良も実施しています。

無導坑上り線NATM補助工施工状況

補助工法

地山の地質が柔らかいこの現場では、ドリルジャンボにより天端に長尺鋼管フォアバイリングで約13m先まで薬液を注入。他には切羽に長尺鋼管鏡補強による前方切羽の補強も併用して安全な掘削施工を実施している。

3次元リアルタイム可視化状況

3次元リアルタイム可視化状況

3次元自動計測システム

3次元自動計測システム

CIMによる3次元自動計測管理

地表面、地中、坑内でデータを計測し、3D CGと組み合わせて可視化しています。地表面で約100カ所、坑内は10mピッチで設置しており、1時間ごとに自動計測。地中に関しては傾斜計と層別沈下計を配置し、自動計測しています。

ICTを駆使しトップクラスの運用管理を実現

 この現場の大きな特徴としては、ICT技術を現場に多く取り入れていることが挙げられます。
 まず自動計測とCIMにより、地表面、地中、坑内の挙動を、3次元で把握できるようにしています。計測結果は転送されソフトウェアで解析、色分けした矢印等で挙動を示し、可視化を実現しています。そして数値に異常があった場合は、職員にメールが届きます。こうしたICTデータは、工事中だけでなく、将来にわたってのトンネルの維持管理にも有効活用できるものと期待されています。
 ドローンを使った3次元測量とICTマシンコントロールも採用しました。空中写真測量は丁張をかける必要がなく、効率よく作業できます。ICTマシンコントロールは正確な作業に加え、オペレーションする人員の経験差もカバーします。
 ICTは、自動荷重装置や車両運行システムにも活用されています。車両運行システムは車両にモバイル端末を積むことで、地図上で車がどこにいるかを把握できるシステム。特に、都市部の現場では車両の管理や調整が重要なため、重宝しています。LED照明を大量に導入しているのもこの現場の特徴です。現場が非常に明るくなり、色分けも活用することで各設備の視認性も確保。危険防止や作業効率の向上に役立っています。
 このようなICT導入は、現場だけではなく、発注者との情報共有、そして地域住民への情報発信にも活用されています。収集したデータは、若手教育のための教材としても活かされています。ICTを活用したトンネル工事現場の新しい形が、次代にもつながっていくものと期待されます。

※CIM : Construction Information Modeling

インバート施工状況(早期併合区間)

インバート施工状況(早期併合区間)

特に地質の悪いこの区間は、掘削時にH-250の支保工と高強度吹付コンクリートを用いてトンネルの下側にもアーチを形成します。 (⇒早期併合)その後、後進坑(左側)を掘削する前に先進坑の剛性を高めるためにインバートを施工して、後進坑掘削に備えます。

インバート施工図解
自動荷重測定装置

自動荷重測定装置

主にバックホーに搭載したシステム。土砂の積載量を累積し、重量を確認。過積載などを防止するだけでなく、データを管理することで、これまでの運搬量も把握できます。

 
桂町トンネル作業所 工事課長 矢部淳一

桂町トンネル作業所
工事課長
矢部 淳一

ダンプや重機の運用などを担当しています。都市部での工事ということで、ダンプトラックの出入りのほか、騒音や安全性の確保に気を配りながらの施工となります。また、ヤードが非常に狭く、掘削した土砂をどうやって搬出するか、密に打ち合わせしながら作業を進めています。長期の工事ですが、さまざまな工夫を重ねて進めているので、周囲の皆さんにも知っていただきたい現場です。

桂町トンネル作業所 工事課長 三木 直樹

桂町トンネル作業所
工事課長
三木 直樹

トンネル掘削の担当をしています。トンネル工事は6カ所目になりますが、都市部での施工は初めてです。土被りが極端に少ない上に土質の変異も複雑なので、常に地盤と対話しながら施工を進めています。そんな中で、CIMの運用は有効だと感じています。描いたスケッチや沈下計測したデータが3D CGにすぐ反映され、リアルタイムで判断できる現場は、パイロットモデルとしての役割も大きいと思います。

桂町トンネル作業所 機電課長 古田 哲朗

桂町トンネル作業所
機電課長
古田 哲朗

設備準備や機電を担当しています。トンネル工事はここが5現場目ですが、都市部での工事は初めてです。仮設備を効率のいい場所に設置しづらいなど、限られたヤードの運用が難しいですね。重機ひとつ持ってくるのにも、どこに置くのか悩むことになります。地元の協力があっての工事、しっかりしたトンネルを提供したいです。

桂町トンネル作業所 工事課長 松本 保明

桂町トンネル作業所
工事課長
松本 保明

ここの現場には最初から関わっています。ただし、トンネル工事に関しては初めてなので、学ぶことは多いです。住宅が近いなど難点もありますが、自分が考えた中央支柱などが工程どおり進んでいることに充実感を感じています。気を付けているのは、課題に対して先手を打つこと。問題になる前に対処しています。

桂町トンネル作業所 副所長 古澤 剛

桂町トンネル作業所
副所長
古澤 剛

長年トンネル工事に関わってきました。都市部での工事経験も多く、周辺住民の方の窓口になったり、見学会の説明もよく担当します。現地で工事について知ってもらうことはうれしいです。ICT導入を推進しており、現場での経験を社内セミナーなどでフィードバックしています。この現場でも、実践的な運用ができていると実感しています。

桂町トンネル作業所 所長 上村 正人

桂町トンネル作業所
所長
上村 正人

ICTの導入は今後の活用方法も重要視したい

 都市部の現場ということで細心の注意を払いながら工事を進めています。重要なのはやはり、情報開示だと考えています。地元の方を招いての見学会も積極的に開催しました。
 ICTの活用も成果を挙げています。これからの土木工事には必須の技術となるはずです。ただし、ICTで得られる情報はあくまでもデータ。今後は、そのデータをどう活用するか、どう予測に役立てるかが重要になると考えています。