前田建設ファンタジー営業部

PROJECT 08 前田建設ファンタジー営業部 「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編 PROJECT 08  前田建設ファンタジー営業部  「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編

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第1回:始動! 山田さんって誰ですか!?

東京都千代田区富士見にある前田建設工業の本社の片隅で、四人の男たちが遠くに見える夕暮れの新宿高層ビル群を眺めながら、感慨深げに話をしている。

・・・「映画」ですよ。しかも全国公開。ちゃんと俳優さんも出てるという・・・。
読者の方のほとんどが、我々の自主製作映画や思うやろね。俺自身、そうやったもん。
活動を開始して16年・・・取材から原稿書きまで、これまでホントに自主製作、手作りでしたからね。
これまでご協力いただいた、各作品の原作者、アニメ会社、同業種や異業種の企業、大学、NPO・・・数えきれない皆様のおかげだな。
そして・・・映画の公開に合わせ、久しぶりの新作発表というわけです。
しかし、今回も今まで通りの長文サイトで行くんやて?
16年前ならいざ知らず、今どきこんなテキストだらけのサイト、会話体とはいえ誰も作らんわなぁ。読んでもらえるやろか?
今、俺らがファンタジー営業部(以下、F営業部)を始めるとしたら、動画なんだろね。いわゆるYou tuberだ・・・ちょっと良いねぇ、副業解禁のご時世だし。
ところで映画やけど、我々の役は誰がやりますの?俺を演じる俳優さんに過剰な美しさは求めへんけど、アフロは似合いそうな方にしてほしいね。
僕は子供っぽくみられるので、案外子役出身の方になるのではないかと。
皆、興奮しているところすまんが、我々の役はない。映画の中のF営業部はちょっと設定が違うんだ。しかし恐縮なことに「前田建設」の名前はそのまま使っていただく・・・実話が原作であることを印象付ける狙いとかで。
どう設定が違うんですか?
それは・・・ぜひ映画を見てほしいね。
よっ!早速、宣伝部長も兼務やな。
それについては専門の宣伝チームが凄腕でやってくださってるよ。
しかし・・・社名そのままはちょっとくすぐったいね。
同業他社の皆さん、見て下さいますかね?
でも読者の方に、これまでのF営業部で面白い箇所を聞くと、往々にして他社さんの検討部分だったりするからね、前田の名前は気にせず他社さんの活躍の部分だけでも見ていただけると良いね・・・いっそこのコンテンツだけでもタイトルを「みんなのF営業部」に改名しようか。
・・・なんかのゲームソフトみたいです。
ところで役の話だったね・・・気落ちするにはまだ早いぞ。役名にね、なんでも我々に対するリスペクトというか、隠しコマンド的配慮があるそうだ。
それも「詳しくは映画で!」とか言うんでっしゃろ?
(精一杯の「兜甲児」声で)「劇場で待ってるからな!」
(華麗に無視しながら)・・・しかし夢のような話だね。映画は、監督さん、脚本家さん、キャストさん、そしてスタッフさんのものだと分かっていても、力を入れて応援してしまう。
スタッフの皆さんの熱意と努力、現場では凄かったらしいからな。
業種は違えど、我々「現場」っちゅう言葉には強いシンパシーを感じますからな・・・で、彼らの情熱に負けへんようにやらないかん我々の新作は、マジンガーの何の構造物を検討するん?
それがですね・・・構造物じゃないんです。映画の中のエピソードを検証するんです!
なんだか難しそうだね?ピンとこないけど。
今回の映画なんですが・・・ちょっとネタバレかな? ・・・登場人物の中に「山田さん」が出てくるんです。土の専門家、「土質屋」という設定ですね。その「山田さん」が、とある設計変更の提案をするんですよ。
設計変更といえば「マジンガーZ編」原作本113頁にあるあれかい?

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・・・あったね。思い出したよ・・・発注者である光子力研究所のことを真剣に心配した、あるウチの技術者が、敵の攻撃に対する防御力向上のために格納庫の上を「水」でなく「土」にしたってやつだ。
あぁ、ありましたなぁ。「土」にする設計だからプールの底板は開けられへんようになり、マジンガーが上がりきってから横に引き出さなならんちゅう・・・つまり出撃シーンがドえらく不細工になるっちゅうやつや。
はい。このエピソードは今回の映画にも活かされていて、映画での設計変更の提案者が「山田さん」というわけです。
で、その設計変更の何を検討するの?
「水」を「土」に変えたら、本当に防御力が向上するか、です。
なぁるほど。当時の我々、施工や見積の検討で忙しく、この提案の検証まで手が回らんかったからな・・・確かに今ならできる・・・って、どないしてそれ確かめんの?まさかホンマに創る?マジンガーの格納庫?前田建設の100周年記念事業として。
そういえば・・・ウチの100周年事業で設立したICI総合センターにある大きな水盤(池)、来所された方から結構、ICIの職員が言われるみたいですよ「ああ、ここから例のマジンガーが出てくるんですね?」って。

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ICI総合センター
©前田建設工業株式会社

・・・シャレの利く奴やないかい。
さて、今回の検証については私から補足しよう。今回のF営業部は映画化を記念して、その「水」から「土」への変更による防御力向上の効果をシミュレーションで確かめたいと思う。
それって、コンピュータの中で格納庫とか、機械獣とその武器とかの3Dモデルを作り、重さや速度なんかも数値で入力し、最終的な防御効果を計算して、効果をはっきりさせるってことですか?
うーん・・・機械獣の攻撃にはミサイルやらビームやら、さまざまなバリエーションがあるんですよ。
ミサイルどころか、炎や嵐まであるで。

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魔法的な武器すらあるような気がします
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

もちろん、その辺りはF営業部の伝家の宝刀・・・「大人の事情」を踏まえて設定してあるんだよ!
(D職員に目配せしながら小声で)・・・見てみい・・・16年も続けると、言い訳もこないに自信たっぷり言えるようになるんやね。
連載開始の時に生まれた子供も高校生ですから、怖いものもなくなりますよ・・・僕は16年経っても、「永遠の新入社員」と呼ばれてますがね(微笑)。
いやお前、笑ろうてる場合やないで。成長がないってこっちゃ。
(微笑を華麗にスルーし)それで部長、「大人の事情」で設定した今回の機械獣と武器いうのは?
(弓教授風に)諸君。今回の敵、それは「ガラダK7」だ。
お、最初にマジンガーZに倒される超有名機械獣や!

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ガラダK7
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

この「ガラダK7」の特徴的な武器、頭の角にあたる巨大ブーメランが飛んで来る設定にした。

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角を取り外して刀的に使用している様子
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

なるほど、ミサイルやビームよりはシミュレーションしやすそうですね。
とは言え、巨大ブーメランが飛んできた衝撃解析となると、さすがにウチもお手上げじゃないか?
地震や津波の影響ならまだしもなぁ。
皆、忘れたのか。そういう衝撃解析を得意とする超プロフェッショナル集団にかつて助けていただいたろう?
・・・そうでした。建築担当の私が、彼らを真っ先に思い出さなければいけなかったですね。
そうか! 彼らならできますね。モビルスーツの腕に押しつぶされるトーチカを見事にシミュレーションできた彼らなら。
だれ? いじわるせんで教えてぇな。
アッガイドーム」ですよ。
おおっ! 「アッガイドーム」。こりゃ「マジンガー軍団」並に頼もしい助っ人やで!

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マジンガー軍団
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

・・・お言葉ですが、軍団の皆さんは、マジンガーのどの作品でも早々にフェードアウトされることが多いので、あるいは適切な例えではないかもしれません。

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フェードアウトの図
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

ということで今回、株式会社JSOLさんに全面協力いただくこととなったんだ。(ここで映画の特報のマネをしながら)「ここに、株式会社JSOL、ファンタジー営業部の設立を宣言する!」
勝手に他社さんの組織変更、宣言してまっせ!
やっぱりA部長も嬉しいんですね、映画化。こんなにはしゃいだ部長は初めてだ。
それではこれより、『劇中の土質屋山田さんはどのくらい正しかったのか』編をお届けします!

東京都中央区晴海にあるツインタワー、晴海トリトンスクエアにある株式会社JSOLの一角には楽し気な男たちが集まっていた。

ここからJSOLの皆さんにもご登場いただきます。
いっつも、すいませんねぇ。C主任やD職員が遠慮をしらんもんですから。
今回もかなりの無茶振りをさせていただきましたが、だいたいの状況は伝わりましたか?
JSOL山口さん
ええ。シンプルに言えば、「巨大なブーメラン状の金属兵器が直撃したときの格納庫の安全性評価」ですよね? 確かに現状の汚水処理場では水槽部分に水があるだけだから、敵の攻撃の直撃を受ければ、底部のハッチが壊れてしまう可能性がありそうですね。
・・・我々ですら「プール」って言ってたのに、ちゃんと基本の設定どおりに「汚水処理場」と仰るJSOLさんの誠実さ・・・素晴らしいですね。

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当時検証したマジンガーZの汚水処理場
©ダイナミック企画・東映アニメーション

当時の我々も、そこがちょっと引っかかっていた部分でした。
JSOL山口さん
なので、「水」の代わりに「土」に置き換えることでクッションの役割を期待し、防御力を向上させる、という山田さんの仮説を検証すればいいんですよね?
さすがです! もはやこの連載「JSOLファンタジー営業部」とタイトルを変えましょう。
・・・自分の宣言、事実化しようとしてるで。
で、具体的にはどのような検証をされているんでしょうか?
JSOL山口さん
そもそも「水」を「土」に置き換えると、土がクッションの役割をしてくれそうだなというのは、直感的に理解できますよね?
はい。ものすごく水深があるなら水でも大丈夫かもしれませんが、土の方が巨大なブーメランを「プール」の底板までに止めてくれそうですね。
JSOL山口さん
それでは、土の種類はどうでしょう。砂漠のような細かい砂だと角ブーメランがグサっと刺さって衝撃を吸収するのか、ゴツゴツした堅い岩のほうが衝撃をうまく逃してくれるのか。はたまたむしろ、ガッチリ固まっている、粘土みたいな土が一番攻撃に耐えられるのか。
確かに。土の種類によって防御力に違いが出そうですよね。ダムの建設でも、いろいろな種類の土や岩を、適材適所で使い分けて作っていますから。
ま、ダムにおける使い分けは衝撃というより、水をしっかり逃さず溜めるための、水密性のことが大きいけどな。
JSOL山口さん
当然、土の種類によって衝撃吸収力は違うでしょうから、土の粒子の大きさや形を変えて数パターン解析します。
山口さん達も本業お忙しいですし、パターンに限りはありますよね。
JSOL山口さん
それとウチの業務での土の解析事例はほとんどないので、そこは前田さんの専門家に色々お教えいただきたいところです。
わかりました。協力を要請しましょう。
で、数パターン解析した後には?
JSOL山口さん
その各パターンに応じた、格納庫への衝撃力を導き出して、格納庫が実際にどれだけ耐えうるのかを算出してみたんです。
さっすが芸が細かい ・・・粒子だけにな。
「算出してみたんです」・・・って、まさか、もう終わってる?
JSOL山口さん
先行してやってみました。
ほんま、もはや「JSOLファンタジー営業部」やな。
聞くだけでもシミュレーション、大変そうですけど、どのように計算するんでしょうか?
JSOL山口さん
マジンガーZが収納されている格納庫の上部は、山田さん考案の設計どおりに、土が埋まった部分と、開閉可能な天井の2層構造となったモデルを採用しています。

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この土が埋まってる部分の深さは、劇中の水verと同値にして下さったわけですな。
JSOL山口さん
はい、土と水との比較が目的ですので。次に角ブーメランの攻撃に対する計算を2つ行ったんです。「土の衝撃吸収性」と「格納庫の耐衝撃性」を定性的に評価して最終的には格納庫の「抗堪性」をも導き出そうとするものです。
コ、コウタンセイ?・・・来たな理解の範疇外。あとはお前らに任せたで。
私も「抗堪性」なんて言葉、初めて聞きましたよ・・・。
JSOL山口さん
まず1つめの「土の衝撃吸収性」ですが、これは「特性を変えた土を格納庫に堆積させ、それに飛来物・・・角ブーメランですね・・・を衝突」させて計算します。
「特性を変えた土」というのが、先ほどの砂や岩、粘土のような数パターンというわけですね。
JSOL山口さん
はい。次に2つめの「格納庫の耐衝撃性」ですが、いくら水を土に変えたからといって、衝撃が全て土に吸収されるわけではありませんから、何らかの衝撃力が格納庫に加わります。今回の場合は土を入れた土槽の底板に加わる反力を、先ほどの「土の衝撃吸収性」の計算から取得するんです。つまり「角ブーメランが土に直撃したときの格納庫床面の反力から耐衝撃性」を計算して評価するのが次のステップです。
(D職員を見ながら)うーん、難しいですなぁ・・・けどそのうち、こんなん難しいことでもスマホに向かって「Hey! 土質屋、抗堪性を評価して!」とか言えば済むようになるんやろ?
その前に「土質屋」ってネーミングのAIが出ますかね?って問題じゃ・・・。
もしかして、JSOLさん、ほんとにAIを一部使ってるとか?
JSOL山口さん
さすがにAIではありません(笑)。それから、先ほどから話を難しくしている「抗堪性」という言葉ですが、これは、基地や施設が敵の攻撃を受けた場合に、機能を維持する性能、という意味なんです。
なるほど。用例としては「B主任のA部長に対する『抗堪性』はかなり低そうだ」ですかね。
JSOL山口さん
まとめますと、数パターン行う「土の衝撃吸収性」と、それら各々に対して行う「格納庫の耐衝撃性」という、二つのシミュレーション・・・計算ですね・・・からなる手順を経て、目的である「巨大なブーメラン状の金属兵器が直撃したときの「水」Verや、いくつかの「土」Verそれぞれの格納庫の安全性評価」を行う訳です。
とにかく「土の衝撃吸収性」を土の種類を変えて数パターン計算して、その結果から「格納庫の耐衝撃性」をそれぞれ出すわけですな。で、どの土が一番偉いか、と。
JSOL山口さん
そうですね。角ブーメランの攻撃による格納庫床面が受ける反力はどの程度になるかを、数種類の土に分けて計算するのは、その二つの計算、ということです。そして今回、この結果をもって、実際に攻撃に耐えられる格納庫になっているのか、「格納庫の構造設計」の検証までできればと考えています。
そこまでやってくれるんでっか!やっぱ今回は「JSOLファンタジー営業部」で決まりですな、部長!
(ノーリアクションで)では実際に「土の衝撃吸収性」と「格納庫の耐衝撃性」は、それぞれどのように計算するものなのか、お教えいただけますでしょうか?
JSOL山口さん
「土の衝撃吸収性」、すなわち格納庫上部の盛り土の衝撃吸収性については、砂やゴツゴツした岩といった粒子を扱うのに適した「DEM」という方法で算出します。
「DEM」・・・。
JSOL山口さん
そして、床面がコンクリートである「格納庫」の耐衝撃性については、固形状の物体を扱うのに適した「FEM」で算出し、その2つを「片側連成解析(陰解法)」で繋げて、評価するんです。
これ、完全に読者ファーストな内容じゃないですよ。「DEM」「FEM」「片側連成解析」って一体何ですか?
・・・D、だからお前は16年も「永遠の新入社員」って言われ続けるんやな・・・。
D君、「FEM」や「DEM」はウチ(前田建設)でも使ってるんだよ。こんな感じでね。
「DEM」は落石の解析なんかで使うらしいわ・・・中身は聞くなよ!
JSOL山口さん
まず「FEM」ですが、解析する対象である連続体(繋がっているモノ)を六面体とか三角錐のメッシュに分割したモデルとして表現し、そのメッシュの節点に掛かる力や動きを計算することにより解析する方法です。
こんなやつでっしゃろ? ダムなどでも使う方法や。メッシュで分ける作業が大変でな。で調子乗って細かくしすぎると計算が大変になるっちゅうやっちゃ。

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有限要素法によるロックフィルダムの解析モデル
©THREE DIMENSIONAL ELASTO –PLASTIC FEM ANALYSIS OF LARGE FACING TYPE ROCK FILL DAM AND ITS SAFETY EVALUATION

でこのモデル・・・正確にはモデルのうちのいくつかのメッシュに・・・例えば力をかけるわけだ。で、メッシュの変化を次々と連続して解いていくと・・・
・・・モデル全体、この図で言うとダム全体がどのような挙動を示すかがわかると!
そういうことだ。
これ・・・読者のみなさん、特に今回、映画に興味をお持ちになり、それで初めて本家F営業部のコンテンツをお読みいただいているみなさんが付いてきてくださるのか、甚だ疑問ですけど。
そういう時はこう言えばええんや。「みなさーん。高杉真宙は「FEM」が、町田啓太は「DEM」が、それぞれ分かる女性がタイプだって各々言うてましたよ! 気張りや!」
また、そういう根も葉もないことを・・・あとで事務所の方に叱られても知らないですよ。
JSOL山口さん
つまり今回で言うと、「DEM」では、土を文字通り粒子として表現=モデル化して、敵の角ブーメランが土粒子群に与える挙動を算出し、それが格納庫床面にどのような力を伝えるのかを反力として導き出します。「FEM」では、構造物のどの部分が具体的にどれだけ衝撃を受けたのか詳細に分析するのに適した方法なので、格納庫の本体の計算に使います。ちなみに飛来物、「ガラダK7」の角ブーメランにも使っているんです。
自動車ボディのクラッシュテスト用シミュレーションなどを本業にしているJSOLさんの、まさに本領発揮ですね。
・・・ほんなら、土の解析もこの「FEM」で検討すれば簡単やないです?
それを今、僕もお聞きしようと思っていたんです。
JSOL山口さん
「FEM」にも苦手な物があるんです。「FEM」は一つの構造物(連続体)として扱うため、ばらばらに飛散するような挙動をとらえるには向かないんですよ。
今回は大きな角ブーメランが飛んできますもんね。それを受けたら、土の挙動は微細であるはずがない。
JSOL山口さん
はい。そこで「DEM」が登場します。「DEM」は解析対象を微小な粒子群と捉えて、それらの接触や反発により挙動解析を行う方法です。例えば、ピンポン玉がたくさん入った箱に手を突っ込んだ時、ボール一つひとつの動きに着目し、それらが互いにどう反発し、受けた力をどのように吸収・反発していくかを詳細に解析するのが「DEM」といえます。今回でいえば、土の粒子が角ブーメランの働きを受けてどうなるのか、一粒一粒を計算していくことになりますね。
一粒一粒の動きを計算するって・・・気が遠くなります。
「ロケットパンチ百連発」なんて目じゃない数や・・・。

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これも数としては結構多いと思いますがね
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

コンクリートの塊のような大きな構造物を微細な要素に分けて分析するのが「FEM」、そして、微細な粒子の関係性から構成物全体を分析するのが「DEM」ということだね。
僕は「DEM」の方が何となく好きだな。「小さいことからコツコツと」って感じで!
お前・・・西川きよし師匠とは渋いやんか。
昭和40年代の話題に付いていけないとF営業部員にはなれないですから。
この会話・・・今回の映画に興味をもって、せっかくこのサイトへ来てくれた若いみなさんを、これでは確実に置いてってしまうな・・。
JSOL山口さん
「ガラダK7」の攻撃を受けた時、土は角ブーメランの衝撃で細かく飛び散るので、土を粒子として解析できる「DEM」。格納庫の壁や床面は、攻撃を受けて変形するかもしれませんが、大きくはないので、構造物の解析に向いた「FEM」。それぞれに最適な分析方法を用いてみました。
なるほど。ようやく2つの使い分けが分かってきました。
JSOL山口さん
あと、元々の格納庫の設計は「水」の積載荷重を想定したものでしたが、山田さんの「土」の場合の荷重を基に、格納庫の柱の強度はどうか、の検討もします。

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その辺は、我々でもできますけれどもよろしいんですか?
JSOL山口さん
我々でやってしまいましたのでお気遣いなく。ただ、前田さんから意見をいただくのは勉強になりますのでお願いします・・・で、まとめますと「格納庫の構造設計」では、「土の重さ」の影響と、先ほど算出した「FEM」による「短期荷重(衝撃力)の影響」の二つで、柱断面がこのままの設計で持つか、評価してみました。
ありがたいねぇ・・・それでは次回の検討結果、楽しみにさせてもらいます!
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