台北地下鉄松山線CG590A工区
建設工事#2

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シールド月進327リングの新記録を樹立 難工事の計画・設計・施工に立ち向かう

 2006年12月18日着工。地下駅3カ所とシールドトンネル6本を掘削する。トンネルのすべてのルートで障害物を撤去しながら掘進するという非常に難しい工事である。現在、地下駅とトンネルの施工を同時進行している。

■松江南京駅から中山駅へ橋脚を撤去
 松江南京駅の西側に開削トンネル163mを掘削。その西側からシールドマシンをスタートさせた。
 トンネルの進路にある新生高架橋の基礎部分を前田建設が独自に調査し、水路を跨ぐ恵通橋の杭を地盤改良で補強し、シールド機で直接切削して掘進した。この障害物を克服し、2009年9月に月進327リングという台北地下鉄施工での新記録を樹立。2010年7月20日にこの区間の掘削を完了した。
 これから、接近する2本のトンネルの間に連絡通路2本を施工する。

■中山駅から北門駅へ初のダクタイルセグメント採用と
  駐車場基礎杭の撤去

 このルートでは、シールドトンネルが横並びから縦並びになり、繁華街からカーブして、古い民家の密集地の下を進む。2本のトンネルが接近する部分には、台北地下鉄で初めて鋳鉄製のダクタイルセグメントを採用し、安全性を高めている。
 ここでの難所は、塔城公園の地下駐車場下を掘削する部分である。地下駐車場の下を地盤改良で固めて、シールドの通過部分(地表面下26~32m)にある5本の基礎杭を撤去しながら掘進する。
 この区間のトンネルが完成するのは、2011年6月中旬の予定。その後、2本のトンネルの間に連絡通路1本を掘削する。

■北門駅から板南線西門駅へ台湾鉄道と台湾高速鉄道の
  連続壁とSMW壁を撤去

 ここでは、台湾鉄道と台湾高速鉄道(新幹線)が並行して走るトンネルのわずか5m下を掘進するという、リスクの高い工事が待ち受けている。
 台湾鉄道と台湾高速鉄道のトンネルには、土留めの連続壁とSMWがあるので、これらを撤去しなければならない。連続壁は、立坑を掘削し、そこから薬液を水平方向に注入して地盤強化した上で撤去する。一方、SMWの撤去については、その存在位置、数量が不明なため、調査を含めた撤去方法について前田建設が提案し、現在発注者やコンサルタントであるDDC()と協議中である。営業中の新幹線に影響を与えずに、杭を撤去しながら掘進するこの工事は、前田建設のシールドトンネル工事の中で最も難しい工事になるだろう。
 難関を突破してトンネルが完成するのは、2012年下旬の予定である。

※設計監理を担当している設計コンサルタントの泰興工程顧問股?有限公司

シールドトンネルの施工が終った恵通橋

塔城公園地下の駐車場の地盤改良

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台北地下鉄松山線作業所 隧道部資深工程師(シールドトンネル) 古賀誠司

シールドトンネルの施工全般を担当し、トンネル内にライブカメラを設置して全体を管理しています。現在、住宅密集地の下を掘進中であり、計測データを基に日々の掘進計画を立案すると共に、作業員一人ひとりに緊張感を啓発して、安全・着実な施工を心掛けています。また、今後は施工と並行して、ローカル職員が主体となって掘進管理ができるよう指導(人材育成)することが、私の一番重要な仕事となります。塔城公園の基礎杭撤去完了を機に結婚するローカル職員のためにも、無事に施工して、二人の門出を祝福したいと思っています。

台北地下鉄松山線作業所 隧道規劃組長 井上佳己

シールドトンネルの施工計画や、それに必要な検討書の作成をしています。台湾の基準を理解し、日本の基準を踏襲して検討書を作成し、発注者に説明することが私の仕事です。現在は、シールドトンネルのダクタイルセグメントに内部支保工を使うかどうかを検討中です。それには、ローカルスタッフから発注者や設計コンサルタントに説明することが必要です。そのために、現在は日本の事例及び検討結果をまずローカルスタッフに説明し、内部支保工は不要であることを理解してもらえるよう努めています。

台北地下鉄松山線作業所 CG290、CG291施工漂隧道組長 村越克己

CG291標の上下線2本のシールドトンネルは、塔城公園の地下駐車場の下を通過します。現在、上行線掘進の支障となる駐車場の基礎杭(φ1500mm)4本の撤去が完了し、シールド掘進を再開するところです。シールドトンネルの施工では発注者から評価をいただいているので、しっかり施工して、さらに強い信頼関係を築きたいと思います。CG290は、現在地盤改良と平行して、発注者に設計変更の交渉をしています。井上課長が立案した計画に基づき、高雄地下鉄を経験した正岡副所長や和田課長の意見を活かして、安全に施工するよう頑張ります。

台北地下鉄松山線作業所工事課長 (シールド機電組長)飯島規雄

3台のシールドマシンは日本のメーカーに発注。1号機は、障害物をシールド機で直接切削ができるようメーカーとともに検討し、機械の性能と作業員の意欲で月進新記録を樹立しました。2号機は、基本設計でメーカーと搭城公園地下駐車場の基礎杭を人力撤去するためのマンホール配置や切羽までのアクセスを配慮し、苦渋作業の低減を図りました。また2号機と3号機を同型機とすることで製作コストを低減しました。今後も高い意識でトンネル施工を続けていきます。

台北地下鉄松山線作業所 シールド副経理 ? 聲烈

シールドトンネルの工種の計画および設計変更の関係業務を担当。発注者への施工作業の段取りの説明および関連設計変更等の折衝も業務の一部です。初めて採用されたダクタイルセグメントは、台湾で製造して十分な品質を確保し、施工も順調に進んでいるので、自信を持っています。今後の難工事は、日本人エンジニアの工事アイデアや設計コンセプトを基軸として、台日スタッフ全員の協力で無事に乗り越えることができると信じています。また、日本の先進的なシールド技術を台湾の関係者にも学んでいただきたいと願っております。

台北地下鉄松山線作業所 副所長(シールド経理) 正岡 顕宏

この現場は規模が大きい都市土木工事であるほか、障害物の撤去、連絡トンネルの掘削など、技術的に難易度の高い内容を含んでいます。これらの要素を含む6本のシールドトンネルを3台のシールドマシンを使い、安全に計画通り施工を進められるように心がけています。また、高雄地下鉄での経験を生かし、トラブルを察知して対応することにより、これまでシールドマシンの大きな故障もなく順調に施工しています。海外にはこの現場のように一工区で何本ものトンネルを掘削する工事があります。これほど大規模な仕事を経験できることは貴重だと思います。

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