前田建設は、松江南京駅、中山駅、北門駅の3駅を施工している。
台湾の地下鉄駅の土留めには、連続壁が採用されていることが特徴だ。設計では駅の躯体に自己充填コンクリートの使用が指定されていたが、台湾では供給実績が少なく品質に問題があったので、前田建設は技術研究所の研究成果とこれまでの実績を活かし、現地のプラント会社と協力して安定した品質の自己充填コンクリートの製造を実現した。
また、台湾は地下水位が高く、台風による大雨も多いので、過去の地下鉄工事では水との闘いで苦しんだ。そこで、トンネルや駅内への浸水を防ぐために、既設駅に松山線の駅を増設する松江南京駅と中山駅では、既設駅との接続部に新たな防洪壁を作ってから連続壁を壊す方法で施工をしている。
■金融街の松江南京駅
銀行や証券会社などが建ち並ぶ金融街に位置する松江南京駅は、南北に走る台北地下鉄新荘線(間もなく開業予定)の既設駅に、東西に走る松山線の駅を増設する。すでに掘削を完了し、現在、鉄筋コンクリートで躯体を施工している。
■繁華街の中山駅
中山駅は、東京で言えば銀座のような繁華街に位置する。南北に走る淡水線の既設駅に、松山線の駅を増築する躯体工事が進んでいる。駅の東側には2本のシールドトンネルが到達。駅の西側の立坑からシールドマシンが発進し、トンネルを施工している。
■遺跡を保存して建設する北門駅
3駅の中で一番大きい北門駅は深さ35m。その掘削は2010年に完了した。
台北は2mほど掘削すると水が出るほど地下水位が高く、掘削には危険を伴う。そこで、湧水や土留支保工構造の安定確保を目的として、ディープウェル工法を採用。地下90mの井戸を24本設置し、地下水位を下げている。
北門駅の場所には、清時代の台北城の遺跡や明治時代に日本が建てた機関車整備工場(指定遺跡)があった。工事に先駆けて、機関車整備工場は移動され、台北城の遺跡は1年ほど学者による発掘調査が行われ、将来復元できるよう出土品に番号を付けて機関車整備工場内に保存された。前田建設は、駅の出入り口の位置を変更し、施工中は機関車整備工場を出土品の保管倉庫として管理し、工事完了後に機関車整備工場を元の位置に復元移動する予定である。
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松山線中山駅と淡水線中山駅の間に設置された施工中の洪水に備えた防水扉

土留工連続壁のコンクリート打設

ディープウェル排水の中継用排水水槽
(24本のディープウェルを稼働

移動後の機関車整備工場内で大切に保管されている出土品
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