M K ーT プロジェクト
( 研究施設更新プロジェクト)#2
ソリューション推進設計部 BIMマネージメントセンター (意匠担当)主任 瀧田 亮輔
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ネスト棟は当社単独では初めての純木造での設計施工案件です。設計のポイントも、木の風情を損なわない空間づくりに留意しつつも、木造の自由度を活かした印象的な大屋根など、チャレンジングな試みを随所に反映させています。 白熱した議論を行うエクスチェンジ棟を「サウナ」に例える一方、頭を冷やして個の時間と向き合う「水風呂」をコンセプトにしているのがネスト棟です。 これを元に棟内は、カフェスタイルのカフェエリア、研究者が思索に没頭できるソロワークエリア、ランニングマシンやボルダリングウォールでリフレッシュするエクササイズエリア、さらには、恐竜のレプリカを置いて異次元空間を再現したゲストエリアと、それぞれに全く趣の異なる4エリアに分かれています。 ネスト棟には木造建築ならではの耐力壁工法を採用しているため、構造上の問題から壁ができ上がると安易に穴を開けることができません。そこで、設計段階で構造、設備、意匠のデータをBIMの三次元モデルに取り込み統合して、耐力壁の強度に影響しないダクトや配線孔の位置を検証しながら設計を行いました。 |
取手MKT作業所 副所長 橋爪 秀典
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ネスト棟は、和やかな空間で働き方を改革する実験的エリアです。最大の特徴は唯一の木造建築であることです。 木造建築は自由度が高い反面、設計段階からコンセントやスイッチ類の位置など細部が正確に決め込まれていることが肝心で、一度構造的な壁に囲われてしまうと後で変更するのが非常に困難です。 初期段階から設計者を交えて細部にわたって検討を重ね施工計画を練りましたが、曲線が多い建物であることから、形状認識などではB I Mが効果を発揮しイメージしやすくなりました。 施工の段取りは、まず、1階の床までをつくり上げて、そこから木軸を建てる手順になります。 木造なので基礎躯体は簡素化されていますが、アンカーボルトの設置に手間がかかります。今回は特にデザインの特徴でもある曲面が多く、本数も総数で600本以上あり効率よく精度の高い施工に苦心しました。 決して大きな建物ではありませんが、床を仕上げるまでは、地道さと慎重さが求められる作業が続きました。上屋については、3パーツに分けた木軸の建方がポイントとなりました。まず、入口を入った大空間に四角形の木軸建方を行って、次いで、その先に三角形の柱や梁を組み上げる。最後に南側のR部分に半円形の木軸を組む建方で、安定した3つの土台をつくり、それをジョイントして建物自体の強さを担保します。 さらに梁・柱の加工は、BIMデータと連携したアーム型ロボットの「木造新生産システム」を試験使用しているのもネスト棟の特徴です。 外観で最も印象的な下がり壁の先端部分は、現場で原寸モデルを起こして実際に部材を当ててみるなどして最終的な施工方針を決定しました。 このネスト棟は、設計、施工、職人さんのチームワークがあってこそ、今がある。そんなふうに思っています。 |
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