

Construction REPORT 65
Construction REPORT 65
東京・白金台で長年、街の景観として親しまれてきた邸宅がありました。
1934年に建築された「旧渡辺甚吉邸」は、15~17世紀のイギリスで流行したチューダー様式を取り入れ、白い壁に木骨などが露出した「ハーフティンバー」と呼ばれる外観が特徴です。
昭和初期の洋式住宅として貴重なこの文化的遺産を後世に伝えるべく、動態保存するための移築プロジェクトが進行中です。
1970年代、東京・白金台のある住宅が小さな注目を集めました。建築雑誌の一角で紹介されたのは、上質なチューダー様式の邸宅。その後の調べで、それが昭和初期の日本住宅建築における傑作であり、後世に残すべき文化的価値の高い建築物であることがわかってきました。
この洋館は、岐阜の名家・渡辺家の第14代当主、甚吉氏の私邸として建設されたものでした。全体計画は洋風住宅の設計会社・あめりか屋の技師長だった山本拙郎、設計はエンド建築工務所の遠藤健三、細部装飾は「幻のデザイナー」と称される今和次郎。この3名が手がけた旧渡辺甚吉邸は、その傑出した造りから「奇跡の住宅」と呼ばれることになります。
しかし2016年、時代の流れから取り壊しの危機を迎えます。研究者や有識者が結集して甚吉邸の緊急解体と部材保管を求める要望書がまとめられ、当社が受領。所有者であった住友不動産の全面協力を受け、ICI総合センター内への移築を盛り込んだ「旧渡辺甚吉邸移築活用プロジェクト」が開始されました。
甚吉邸の一般公開についてはICI総合センターのHPにてご確認ください。
ICI総合センター:https://www.ici-center.jp/