飯田橋駅西口地区
第一種市街地再開発事業
業務・商業棟および住宅棟新築工事#2

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「粋」を表現した外濠側立面完成予想図

「エスプリ」を表現した皇居側立面完成予想図

設計鼎談
飯田橋の個性を表現した
新しいランドマークの創出

 

■グランドデザイン・コンセプトは「粋とエスプリ」


鈴木 旧警察病院の移転が発表された2001年に、前田建設は日建設計さんとともにワーキンググループを立ち上げ、再開発に必要な都市計画等の課題を逐次解決していきました。
 本再開発事業では、全体の容積率930%のうち、600%は業務施設、260%は住居施設、残った部分はその他関連施設ならびに商業施設という上位計画のもとで、日建設計さんと前田建設がJVを組ませていただきました。

 

山崎 本再開発は敷地が非常に細長いことと、千代田区側の周辺には皇居をはじめ靖国神社や外濠公園などの広大な緑があることが1つのポイントです。一方、外濠を挟んだ反対側の新宿区には江戸情緒漂う神楽坂の町並みがあります。これが全体デザイン計画に着手するきっかけになりました。
 再開発組合のご要望により、海外の著名建築家を含めたデザインコンペが行われましたが、私たちは当初からプロジェクトに関わってきたので海外チームにデザインの主導権を渡すことは絶対に避けたいと考え、「粋とエスプリ」というこの地域の特徴を明快に表したコンセプトでコンペを勝ち抜きました。「粋」は神楽坂の昔ながらの風情を表現し、「エスプリ」はこの地に多く住むフランス人の洒脱さを表現したものです。

 

■2面の異なる基調色とガラス面の重なりで個性を表現

 

山崎 まず細長い台形の敷地形状を活かし、幅の狭い方に住宅棟、広い方に業務・商業棟を配置しました。超高層の建物の重量感を軽減するために外観をいくつかの面に分割し、ガラスを多用して統一感を図り、軽快でシャープなデザインにしています。
外濠側と皇居側の2面に異なる色調を象徴的に使用。外濠側は、神楽坂の黒塀のブラック、クールなグレーやシルバーと、縦のルーバーで日本的な繊細さを貴重にして「粋」を表現。皇居側は、フランスから連想されるシャンパンゴールドと同系色を採用し「エスプリ」をデザインしました。西日を防ぐ役割も果たす外濠側の縦ルーバーと、皇居側の水平ルーバーが、デザインの2面性を引き立てます。


日建設計プロジェクト開発部門 再開発計画部長

大村 高広氏

日建設計プロジェクト開発部門 再開発計画部長

大村 高広氏

 

日建設計執行役員
設計部門代表

山崎 隆盛氏

日建設計執行役員
設計部門代表

山崎 隆盛氏

 

建築事業本部 企画・開発設計部長

鈴木 章夫

建築事業本部 企画・開発設計部長

鈴木 章夫

 

鈴木 建物外を回す低層部のデザインも、本再開発の特徴ですね。


山崎 3層までの商業エリアは、店舗スペースを細かく分節して集積させ、道行く人々が立ち寄りやすい賑わいを演出しています。
 また、2棟のタワーの2階部分をパッサージュ状の広場でつなぎ、皇居側と外濠側とをつなぐ貫通道路として敷地内のエリアを分断しないよう配慮しました。
 さらに、足元にはふんだんに石を使って江戸の歴史や文化を彷彿とさせる見附の雰囲気を演出し、敷地には数種類の桜を植えて周辺に現存する桜並木を補強する計画です。


■道路を整備し、環境にも配慮。災害時には一時避難所として活用


鈴木 外濠公園通り側を敷地境界から無条件に10mセットバックすることは、都市防災の観点でも大変有効です。


大村 敷地北側の外濠公園側の道路幅員は従前の約5.0m~7.5mから12mに拡幅し、6mの歩道状空地を整備して、あわせて10m近い歩行者空間を創出します。同時に、南側・西側・東側の道路も整備して、安全で安心な歩行空間をつくります。
 また、敷地内に300㎡~1000㎡の広場を3カ所設け、通常は賑わいの場とし、震災発生時には人々が安全に一時避難する場として整備する計画です。こうした都市計画上の公共貢献に対し、容積率の特典をいただきました。
 環境負荷低減の効果については、緑豊かなこの地の良質な環境を大切にしたいと考えました。また、CO2削減についても極めて高い効果を目指し、CASBEEの最高クラスであるSクラスを取得する予定です。外濠を通り道にして流れる風を有効活用できるよう、さまざまな検討をしました。
 この再開発では日本で初めて、設計が本格的になる前の都市計画の段階で、区域内のCO2排出原単位を業務の平均原単位に対して60%減を目標とし、そのための工夫を盛り込みました。これにより、開発自体が省資源・省エネルギー・環境負荷低減につながったと感じます。


鈴木 2014年秋には完成し、既存のまちの400年の歴史と融合して新しい魅力的なまちが誕生します。どこから見ても文化が薫るツインタワーは飯田橋のランドマークとなり、未来永劫に存続するでしょう。

 

構造計画

周辺基礎整備計画

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