飯田橋駅西口地区
第一種市街地再開発事業
業務・商業棟および住宅棟新築工事#3

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[技術と精神の伝承]・・・業務・商業棟 新築工事
ロの字型の乗り入れ構台と掘削土の直積みを可能とするダンプスロープを設置し、複数の車両導線を確保して約80,000?の大規模掘削工事を効率化(2012/1月撮影)

■業務・商業棟
主要用途/事務所、店舗、駐車場等
建築面積/6,851.68m2
延床面積/123,357.46m2
最高高さ/149.88m
構  造/鉄骨造(CFT)、一部、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
階  数/地上30階、地下2階、塔屋2階
地下2~1階/駐車場、機械室など
地上1~3階/飲食店や小売店などが並ぶ約1,500坪の商業施設。住宅棟の間に2階レベルで商業施設の中を通り抜ける貫通通路(パッサージュ)を設けて回遊性と利便性を高めています。
地上4~30階/1フロア約800坪、天井高さ2,800mmを確保した無柱の大空間オフィス。

(2013/7月撮影)
コア部分の鉄骨建て方を先行して行い、上部に700tタワークレーン2基を設置(2012/9月撮影)

前田建設史上、最大規模の超高層オフィスに挑戦

 業務・商業棟は再開発を主導する前田建設と、多くの超高層オフィス施工実績を持つ鹿島建設が、2社の総力を結集して施工しています。
 地上30階建て最高高さ約150mのこの建物は、4階以上の専有面積約800坪(約2600㎡)を確保した大規模オフィスと、3階までの商業ゾーンで構成されており、最先端のオフィス仕様に加え、耐震性能、省エネ、環境配慮、防災対策等の様々な時代のニーズを満たしたハイグレードな建物です。
 構造体はCFT構造と呼ばれる鋼管の内部に高強度コンクリートを打ち込んだ柱に、低層部は鋼板耐震壁、高層部は制振ブレースを組み合わせたものです。
 CFTの施工では、鉄骨柱に密実なコンクリートを打ち込むことが品質管理上の重点課題です。施工はポンプ車の圧力でコンクリートを下から上に打ち上げる圧入工法を採用しましたが、最高高さ72mの圧入という難易度の高い計画を実現するため、社内外から多くの専門スタッフを招集し、実大施工実験やコンクリートの性能確認等の様々な技術検証を加え、綿密な計画を練り上げて施工を行いました。

「粋とエスプリ」を支える技術者魂

 超高層建物の外壁はボルトで固定されたカーテンウォールという吊り下げ部材で、今回我々に課せられた命題は、地上150mの自然環境に耐えられる性能と品質を確保しながら、「粋とエスプリ」のデザインを具体化することです。そのため、着工当初から約1年以上かけて膨大な技術検討や実験を行い、様々な課題をクリアしてきました。
実大モックアップによるデザイン検討から始まり、風切音試験や積雪試験、実大試験体による総合性能試験(耐風圧・水密性・層間変形試験等)を経て、初めて詳細な製作図面が確定します。そしてカーテンウォールユニットの製作は協力会社のタイ工場で行いました。海外製作はコミュニケーションの難しさから、品質管理や工程管理が計画通り進まないことがあります。そのため、現場の職員は交替で何度も現地に足を運び、検査と確認を繰り返し行いました。現場に到着した部材が、現場で1枚1枚取付けられるのを見た瞬間、それまでの苦労が一瞬で吹き飛びます。どんな困難にも立ち向かってやり遂げる。これが技術者魂であり、建設工事の醍醐味です。

従来の方法にとらわれず合理的でわかりやすい現場を追求

 業務・商業棟では毎日約900人の作業員が働いています。900人を1か所に集めての朝礼は難しく、長時間の朝礼は作業時間のロスにつながります。これら大規模現場ならではの問題を解決するため、当現場では朝礼システムを導入し、作業種別・エリア別に3ヵ所で朝礼を行うことにしました。朝礼システムは、当日の朝礼で伝達すべき情報を毎日1本の映像にして、休憩所に配置したモニタで繰り返し放映するものです。毎朝、映像を見てからの朝礼参加を現場のルールとし、合理的に朝礼時間を短縮しています。
 また図面検討や施工計画には、BIMを積極的に活用しました。発注者、設計者とは、デジタルモックアップや3次元検討図をモニタで見ながら打ち合わせを行い、施工ステップ図や仮設計画に展開することで、わかりやすい施工検討会が実現しました。
 これ以外にもICT技術を用いた検査システムの導入等、次世代の施工管理を模索すべく様々な取り組みを行っています。

BMIモデルによる仮設足場計画

業務・商業棟のテーマは
「超高層オフィスの施工技術とチャレンジ精神の伝承」

  前田建設で150mクラスの超高層オフィス施工経験者はごくわずかであり、我々は未知の領域に挑戦しています。おかげさまで工事は計画通り進んでおりますが、現場はこれまで様々な課題や困難な場面を一つ一つ乗り越えてきました。超高層オフィスの施工経験が豊富な鹿島建設との共同企業体施工も、前田建設の職員に良い刺激をもたらしています。
 将来、この現場の職員が会社の屋台骨となり、ここで経験した「超高層オフィスの施工技術とチャレンジ精神」を次世代の職員に伝承してくれることを期待しています。

オフィスロビー完成イメージ

アルミカーテンウォール施工状況

アルミカーテンウォール施工状況

アルミカーテンウォールは、ユニット部材を工事用エレベーターで揚重し、床に置いたミニクレーン(前田製作所製/通称カニクレーン)で取り付けを行いました。

鋼板耐震壁設置状況

鋼板耐震壁設置状況

低層階には大きな振動エネルギーに効果を発揮する、鋼板耐震壁を採用しています。

制振ブレース設置状況

制振ブレース設置状況

地震時に建物に伝わる振動エネルギーを効率よく吸収するため、低降伏点鋼材を用いた制振ブレースを採用しています。

CFT充填コンクリート施工状況

CFT充填コンクリート施工状況

コンクリート充填鋼管構造であるCFT(ConcreteFilledSteelTube)は、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造、鉄骨(S)造に次ぐ第4の構造です。耐震・耐火性に優れ、柱の断面が小さくなるので有効空間を広く確保できます。

 

飯田橋再開発作業所 業務・商業棟工事 所長 脇屋 仁

飯田橋再開発作業所
業務・商業棟工事
所長

脇屋 仁

 

センターコア部分に設置した700tタワークレーンで鉄骨を揚重し、スピーディーに施行(2013/4月撮影)

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