MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
芝浦工業大学大学教授
原田 真宏氏
ICI キャンプをお披露目することができてうれしく思います。前田社長から「何を建てるべきか」を上流から提案できる会社へ変えたいと伺いました。廃校活用が大切なテーマでしたが活用を待つ廃校は全国に1400程あるそうです。建築とは、その地域の記憶をレコードしていく媒体でもあるので、ポンと壊して新しいものを建てればいいわけではない。空間的、時間的にも社会に対しても開いている、そんな建築を一緒に考えてほしいという依頼だと私は受け止めました。
コンセプトは「NO OUTLINE」です。校舎、体育館、運動場、ICIラボ、地域のすべてが繋がり、みんながスイスイと入ってくる「木のえんがわ」を提案しました。施設を繋ぐハブとして人が集まり、何事かが起こる現場になり、オープンエンドなイノベーションに繋がると考えました。
「ヨコイト通り」と呼ぶ水平の動線は各施設を繋ぐヘッダーとなって、全てのファンクションにアクセスができます。直交する「タテイト通り」は、旧校舎から「木のえんがわ」、生徒が残した壁画や運動場さらに隣接のICIラボまで、造られた年代が違う景色をレイヤー状に眺め経験できる、そんな関係になっています。
「木のえんがわ」はスライディングウォールでさまざまな活動がフレキシブルにできる空間です。訪れた人の目を引く屋根は「1%の架構体」で実現しています。
旧教室を改修した宿泊室にはカプセルベッドを入れ、その脇の空間には材木置き場のようなシアターや卓球台のようなテーブルなど個性のある「しつらえ」が入ります。「VOID」という何も無い部屋もありますが、「15パズル」の1つ抜けたマスみたいにそこを起点に更新し造り続けていく施設になっています。時間の蓄積が続いていく、終わらない現場性をみんなでつくり出したのです。
常にプロセスの中に僕たちはいます。完成する社会なんて本当はない。つくりながら考えて、それをみんなで共有して次の未来へ繋げていく。「終わらない建築」というものが始まったのだと思っています。
ICI CAMPとして蘇る前の取手市立白山西小学校