No.64

ICI Brain CAMP STARTS ICI キャンプ スターツ#2

ワークショップで築いた関係を
さらに発展させていける場所に

AAスクール ユニットマスター 江頭 慎氏

AAスクール
ユニットマスター

江頭 慎氏

 AAスクールは、1947年に設立されたヨーロッパで一番古い建築の学校です。本校舎はロンドン市内ですが、近年、フックパークという150ヘクタールの森にサテライトキャンパスを設け、都市でのデザイン研究とは対照的に環境をテーマにした研究を支援しています。技術的にも興味深い活動が見られます。例えば、森のすべての樹木を3Dスキャンでデータ化して不均一な形状の樹木を効率よく正確に選抜し、ロボットアームによる加工と組み合わせ、ユニークで、かつ構造計算にかなう建築物を造るというテクノロジーと自然環境を結ぶプロジェクトが進行中です。またここでは、前田建設さんと長年にわたり材用研究のワークショップを共催してきました。そこには異なる科の学生、アーティスト、研究者たちが集まります。
 一方、AAのグローバルスクールの枠では現在、学内の研究者や学生が世界に点在する都市、社会、文化、環境の繋ぎ合わせ、知識を共有することを教育プログラムの中に組み込もうとしています。地球上の局所では実際にはどういうことが起きているのかを学ぶ現場です。例えば、新潟の山間部の集落のひとつ小白倉でのワークショップは、このICIキャンプと同様に廃校になった小学校を利用した地域活性プログラムの一部として当地にも根付いてきました。世界中から集まる建築学生と、東京から設計者や学生、前田設計部の若手グループも合流し、毎夏、楽しい活動を続けてきました。
 自然環境のサステナビリティ、そして社会的サステナビリティという概念によってのみ、今後の建築技術がより洗練されたデザイン知識に置き換えられていくことは明らかです。そしてこのテーマは学校と企業が自然と共有できるものだと自認しています。現代の課題に向き合い、将来の建築の役割を想像しながらの活動を前田建設さんと続けていけることを楽しみにしながら、これまで以上に距離を超えた共同活動を展開できることを確信し、ICIキャンプには大きな期待をしています。

共創企業において重要となる
CSVへの取り組みを

 早稲田大学大学院経営管理研究科、通称「早稲田大学ビジネススクール(WBS)」では、『実務に役立つ知の創造・普及』、『洞察力、責任感、グローバルな視点を有したリーダーの育成』、『学生、教員、修了生、産業界が学びあう場の構築』という3つをミッションとして活動しています。
 安倍内閣が未来投資戦略「 Society 5.0 」を提唱して以降、イノベーション創出とそのための人材開発は日本社会の喫緊の課題であり、その課題に取り組むICIキャンプの重要性は大変高まっています。
 このICIキャンプが目指していることは、まさにWBSのミッションそのものです。ICIキャンプ自体が学習の場(ダイナミック・ラーニング・コミュニティ)であり、役立つ知識(アクショナブル・ナレッジ)と人材(インサイトフル&リスポンシブル・リーダーズ)をどんどん生み出していただきたいと思っています。
 現在、ビジネスの世界では、ESG 投資やSDGsなど、環境や社会への取り組みが注目されていますが、少し前はCSR、つまり企業の社会的責任が議論されていました。
 そして、社会的責任論が進化し、企業が社会課題の解決を行うためには、経済的な価値と、社会課題の解決による価値の両方を満たすCSV( Creating Shared Value )という概念が重要であるという考えが提示されました。
 CSVを重視される前田建設が作られたICIにおいても、この考え方をもっと押し出して、経済的な価値を高めると同時に、社会的な課題解決にも取り組んでいただければありがたいと思っています。

早稲田大学大学院 経営管理研究科長 淺羽 茂

早稲田大学大学院 経営管理研究科長
(早稲田大学ビジネススクール)

淺羽 茂