No.64

ICI Brain CAMP STARTS ICI キャンプ スターツ#3

自分たちが勝負できる新しい競争軸を見出して
40人のイベントが1万人規模に

 私たちは「よなよなエール」というクラフトビールを作っています。ビール業界では、コクとキレといった「味」、「価格」、プリン体0や糖質オフといった「機能」の3つの軸で、大手4社が激しく争っています。大手に比べると、クラフトビールメーカーはアリンコみたいなもので、直接争うと勝てません(笑)。
 そこで、新しい競争軸を考える必要がありました。目指すのは「楽しく、幸せになれるビール」です。われわれは、よなよなエールファンに向けたイベントを開催しています。第1回目は2010年に開かれ、40人くらいのファンが集まってくれました。遠方から来てくれた熱心なファンの方もいて手応えを感じ、その後100人、500人、1000人と徐々に規模を大きくし2018年には5000人、2019年には残念ながら台風で中止になりましたが、1万人規模のイベントを開催する予定でした。イベントを通して、味や価格ではなく、このビールを飲んでいる空間や、仲間とのつながりが楽しい!とファンの方々に言っていただけるようになりました。そうした大手が実施していない高い満足度のイベントを続けてきた結果、40人が1万人規模にまで大きくなったわけです。
 われわれの会社には「知的な変わり者」になろうという文化があります。周囲から「変わり者」と呼ばれるくらい個性を伸ばすこと、そしてただの「変わり者」ではなくきちんと勉強をして「知的」になる。この2つの両立が大事であるという考えです。決して横並びではなく、突き抜けた人材を増やしていくことで常識にとらわれないアイデアが生まれイノベーションの発生確率を上げる。そういう組織づくりをわれわれは日頃から心がけています。

株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手 直行氏

株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

井手 直行氏

よなよなエール

個性を発信するアートが多様性のある社会を築く
「芸術×福祉」という領域

東京藝術大学 美術学部長 日比野 克彦氏

東京藝術大学
美術学部長

日比野 克彦氏

 取手市にもキャンパスがある東京藝術大学ですが、「Diversity on the Arts Project」、通称「DOOR」という取り組みを始めて3年になります。これは「芸術×福祉」を謳い、福祉の領域と芸術の領域を繋いでいこうというものです。
 芸大が福祉に取り組むきっかけとなったのは「TURN」というプロジェクトです。パラリンピックの開催が決まったことで障害者やマイノリティの人たちのさまざまなコミュニティが注目され、その領域とアートのコラボレーションとして2014年にアール・ブリュット・ミュージアム4館が連携して展覧会を行うときに監修を担当しました。そのタイトルが「TURN」でした。その際、まず障害者の方々が利用している施設に滞在しました。それらの施設には制作現場があり、制作する時間や農作業などの時間割があるのですが、私もそこに入って一緒に生活をしました。そこでの気づきは、社会活動などでの自立が難しいため、障害者に手を差し伸べるという視点が福祉の中にはありますが、アートの視点で見つめると、人との違いをひとりひとりの個性と捉えていくことは出来ないだろうか、という考えでした。
 ひとりひとりの個性を認めるアートの特性、それこそが多様性のある社会を築くための重要な考え方に繋がると思います。そしてアートというものを、さまざまな領域で、そしてあらゆる企業の中に取り込んでいくことが、これからの社会にはとても重要になってくるのではないかと考えています。

ICIキャンプ設計コンセプトイメージ
ICIキャンプ設計コンセプトイメージ
ICIキャンプ設計コンセプトイメージ

TURNフェスの様子

TURN図解

異なる業種を繋ぐ映画がイノベーションを誘発する
『前田建設ファンタジー営業部』

 バンダイナムコアーツは現在、映像、音楽、そしてライブ事業などを行っており、その中で『前田建設ファンタジー営業部』の映画企画を頂戴しました。「マジンガーZ」の格納庫を造るという、建設業界の新たな市場を切り開いた熱きサラリーマンたちの感動の実話の映画化企画です。
 ひとりひとりがいろいろな知識を自分たちで試しながら夢を実現していこうとするお話なのですが、その物語を映画として紡いで伝えていくのが、私たちの役目です。この企画のように異なる業種の方々と出会うことによって、映画業界にもイノベーションが起きるのではないかと思っています。
 日本映画は日本だけで観られていることがほとんどで、小説や漫画が原作という作品が多く、映画でしか観られない作品が生まれにくい状況です。
 現在の映画会社は、自分たちだけで開発しており、ビジネスパートナーも固定化しがちで、純粋に企画を精査する場が少ないのが実情です。それらを解消するには、海外の映画祭で行われているような、一極集中型の合宿のような企画開発・人員育成の場が必要ではないかと思います。
 ICIキャンプが実現する、境界線を越えたディスカッションの場は、今後の映画界にとっても必要だと思います。また映画を、業種を越えて繋がるためのツールとして考えていただき、皆さんと一緒にイノベーションに取り組むことができればいいなと感じています。

株式会社バンダイナムコアーツ 映像プロデュース本部 プロデューサー 西川 朝子氏

株式会社バンダイナムコアーツ
映像プロデュース本部
プロデューサー

西川 朝子氏

西川図解
西川図解
前田建設ファンタジー営業部