INTERVIEWマスコンクリートの
プロとして現場と
一緒になって大規模な
案件に挑戦する。

建築技術 / 2013年入社

樋口 優香

大学では建築を専攻し、ゼミで主にコンクリートを対象にした建築材料を研究。その後コンクリートの専門知識を更に高めるため大学院まで進んだ。前田建設に入社後は技術研究所に3年間勤務したのち、自ら希望して施工現場を経験。現在は本社の建築事業本部建築部に所属し、コンクリートを中心とした材料面から大規模物件、特殊物件等の施工現場をサポートしている。

まず技術研究所の所員として入社し、
自ら希望して現場も体験した。

入社の経緯とその後のキャリアを教えてください。

コンクリートは水和反応という化学反応で固まるのですが、その後、乾燥による収縮によってひび割れが生じてしまいます。どうすれば乾燥収縮が軽減できるか。大学でも大学院でもそんなコンクリートの性質について研究をしていたため、就職活動は自ずとゼネコン中心となりました。私も多くのゼネコンの会社説明会に参加しましたが、指導教授のすすめもあり前田建設に技術研究所所属として入社しました。3年間は研究所で勤務をしたものの、やがて「実際にものをつくる現場を経験してみたい」という気持ちが強くなってきたのです。それに一級建築士の受験資格を得るためには当時は2年間の現場経験が必要でしたので、ひとまず「受験資格を満たすために現場へ行かせてください」と自ら希望して現場への配属が実現しました。それから3つの施工現場を経験し、図面の見方や工程表の作成、現場運営に関するさまざまな手配や予定が変わったときの調整業務など、現場でしか学べない知識や技術をある程度吸収しました。その後、建築事業本部建築部に異動し、建築現場の施工支援を担当しています。

大規模な建物を支えるためにマスコン
クリートで必要な強度を実現する。

今の仕事内容について教えてください。

近年、前田建設は再開発案件の受注が増加しています。また、コンセッション事業にも力を入れていることもあり、日本各地で大規模な建築物を手がけることが増えてきました。大規模な建物は建物重量が大きいので、とくに地下の躯体にはそれを支えるコンクリートの高い強度が必要になります。そのため地下に使用するコンクリートは、基礎の断面寸法が大きくなり、マスコンクリート(マスコン)という扱いになります。マスコンは水和熱によってコンクリート内部の温度が上昇、温度膨張することにより通常のコンクリート以上に温度によるひび割れが発生しやすくなるなど品質管理が難しくなります。私が今メインで担当しているのはマスコン解析による現場の支援です。マスコンの温度応力解析自体は専門のコンサルティング会社に依頼しているのですが、物件ごとに解析条件が異なるため、ひび割れ発生を抑えつつ、経済的な材料の選定や施工手順等を現場やコンサルティング会社と協議しながら決めていくわけです。マスコン経験者がまだそれほど多くはないため、その知見を深めて社内で展開していくのもこれからの課題です。

「マスコンのことは樋口に聞け」そう
信頼される存在でありたい。

この仕事の難しさややりがいは何ですか?

マスコン対策については、いくつかの手法があります。たとえば水和熱が発生しにくいセメントを使用したコンクリートもありますが、それはやはり高価です。またマスコンの場合は断面が大きいため、いくつかの工区に分けて打設(コンクリートの流し込み)を行います。工区を細かく分けるほど断面は小さくなってひび割れ発生のリスクは下がるのですが、コンクリートの打設回数が増えてしまい、打設にかかる日数と協力業者の手配回数が増えてしまいます。そこでまず複数の条件を設定して、どの手法・条件ならひび割れ発生のリスクを低減することが可能かをシミュレーションします。「工区をどう細分化すれば工期にどう影響するか」「工期内に収めるために高価なコンクリートをどれだけ使えるか」というふうに、さまざまな要素をトータルで満たす答えを見つけるのが、マスコン検討の難しいところでもあり、面白いところでもあります。この仕事を担当してまだ一年ですが「マスコンのことは私に聞いてください」と胸を張れるほどには成長してきたと思っています。

現場での喜びや苦労が印象深い。今の自分を支えてくれる
財産の一つ。

これまでで特に印象に残っている仕事は?

印象深いのは、やはり現場での施工管理の仕事です。3つの現場を経験しましたが、最後の事務所ビルでは、後輩を指導しながら、初めて自分で工程表を作成して工事を進めていく経験ができ、とても成長できたと感じています。工事が着工した頃は、私の上職は所長と副所長だけで、途中から上司(課長)が増えましたが、まだ施工管理の経験が乏しい中、研修を終えたばかりの後輩と現場を進めていかなければなりませんでした。工程表を作成しても、たとえば雨が降ると作業が止まってしまって予定が遅れます。その都度、職人さんの手配や資材の発注などを調整するのが大変でした。資材の発注も、図面をしっかり読み込んで、過不足のない数を手配しないといけない。資材が足りなかったり遅れたりすると作業が進まないし、逆に多過ぎても早く届き過ぎても置き場所がなくて困ったことになるからです。いくつか失敗もして、協力会社の職人さんに叱られたこともありましたが、段取り通り仕事がスムーズに終わったときは達成感がありました。職人さんから「今日の仕事はやりやすかったよ」と声をかけられたときは、やはり嬉しくなりました。現場での体験は、今の私を支える財産になっていると思います。

ある1日のスケジュールOneday Schedule

8:00

出社、メールチェック

9:00

打ち合わせ

11:00

デスクワーク

12:00

昼休み

13:00

現場へ移動

14:00

現場で検討会

16:30

現場事務所でデスクワーク

17:30

帰宅

今後のキャリアについてCareer

自分はこれから何がしたいのか、
今はそれを探しているところ

今行っている業務を極めていくことをベースには考えていますが、時代が進むにつれ必要がなくなる業務かもしれない。正直言って、これから何をしたいのか、今後どんな立場で働きたいか、会社にどう貢献できるのか、入社して10年経った今、考えているところです。前田建設にはいろんな部署があり、会社も新しいことに挑戦しているので、いろんな選択肢がありそうだなと思っています。その分、自分も進化しなければならないと考えています。ただ、やはり現場に近いところで仕事がしたい、ものづくりの充実感を一緒に味わいたいという思いは強くあります。

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。

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